1 さっそく、馬車に轢かれてしまったようです。
「人間界からおもしろそうなタイプをひろってみましたわ!
ものすごく悪運タイプですの~」
「ほらぁ、普通の転生って、みててつまらないっていぅかぁ。
あきちゃった☆てへぺろ。」的、神様につかまって、
転生させられた少女のものがたり。
―――合掌。
運がない。
今まで生きてきた中で、これほど痛感するフレーズはない。
兄弟とくじ引きをしてもはずれ、当選系のはがきなんかも、もちろん当たる―――なんてことは…ない。
というわけで、うっかり転生した先でもむろん、ついてなかった。
悪霊以外は―――。
転生した大通りのど真ん中、肩の上には、ほおずりしてくる黒猫型貧乏神の激重不細工祟り神さまがいた。
さらに、この黒にゃんこには大悪党の悪霊がついてきた。おまけで?なのか、役得というべきか、悪いものは重なるものである。
黒にゃんこ様は肩へお乗りになって、さも優雅そうに前脚をなめていらっしゃる。十七歳の少女の肩には重すぎるが、黒猫様は、ご機嫌である。
わたくしは肩こりと片頭痛に死にそうな顔色でとぼとぼと異世界の馬車が行き交う道を歩いていた。あまりの重さに顔は地面を見るのみだ…。
大通りには女性向けの華々しいブランドショップが軒を連ね、いかにも、お嬢様方と購入したとおぼしき荷物を大量に抱えたメイドや侍従がひしめいている。
若い人たちがあふれるレンガ敷の道には、流行りのファッションに身を固めた若いカップルが幸せそうに手をつないで歩いていた。
わたくしはというと、転生してきたとき着ていた部屋着のワンピースとサンダル《つっかけ》という、なんとも心もとないファッションである。
ここへ転生した直後は、何がなにやらわからず、あたりにいる人に言葉をかけ、ものすごく不審な顔をされた。
しかも、転生したときに腕の中にいた黒猫様は、しゃべれたから、より一層混乱のるつぼと化した。
「おうおう、オレ様は、黒猫の貧乏神のビーナス様だ!有り金、全部おいていけ!」
なななな!なんてことを、善良そうな一般人にいうのですか!というか、しゃべったのは、わたくしだと思われています!や、やめてくださいっ。
わたくしは、あたりかまわず、ふっかける黒猫様を抱きかかえて、集まってきた人々から逃れるため、とんずらした。
「めっ!です。わたくしは普通に、おしゃべりしたいのですから、ちょっと黙っていてくださいませ」
ビーナス様に一言申し上げて、やっと周りの方に、ここはコーネル王国であることをお伺いすることができました。
やれやれ。
転生する前は、オフィスで熱血上司に指導という名のパワハラがまかりとおる職場に勤めていた。
あしたは、日曜日!やっと、寝られる…と部屋着を着て、歩いているとき、鏡の前で、ゆがみにとりこまれて、気が付くと、コーネル王国の大通りのど真ん中に、ビーナス様と立っていた次第だ。
持っていた歯ブラシをどうしてくれようか…。
道のど真ん中に転生した時に、憑いていたビーナス様をまじまじと見つめる。
ひげをそよがせ三角の耳をぴくつかせつつ、通りの向こうをながめている。
でも、いつの間に、ビーナス様はわたくしの腕のなかにおさまったのかしら…?
考えごとをしながら、道の端を歩いていると、
ごががっががー
ノアは馬車にひかれていた。
お読みいただきどうもありがとうございます。
初回は、しばらく連続アップしますm(__)m
(ムーンライト版にも、ちょっと改稿してアップしていきますm(__)m)
みなさまも、うっかり転生者に選ばれませんように♡




