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流転の國 vol.8 〜桜色の都の救世主〜  作者: 川口冬至夜


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第92話 二人だけの秘密

「まだ先ほどの光景が信じられません。なぜ、ご主人様はジェイ様に対してあのような魔術をお使いになられたのでしょう?…タンザナイト様、何かご存知ですか?」

ジェイに『全回復』魔術をかけた後、三人で話したいと言ったマヤリィに従い、シロマとタンザナイトは玉座の間を後にした。

「実は、僕も途中から女王様とルーリ様が何を話されているのか分からなくなりました。しかし、ルーリ様とジェイ様の間にトラブルがあったことは確かだと思います」

タンザナイトは言う。

「女王様は『人化魔術はいつでも使えるのだから、その前に貴女の特殊能力を取り戻すとしましょう』とおっしゃって、ジェイ様を玉座の間に呼び出されました。『風刃』が何かは分かりませんが、そのアイテムの中にジェイ様が魅惑魔法を封じてしまったのかもしれません」

「ルーリ様の『魅惑』を…?一体どんなトラブルがあったというのでしょう?」

突然呼び出されて来てみれば、雷系統魔術を食らったジェイが倒れていた。シロマはマヤリィに言われるがままに白魔術を発動したが、最後まで何が起きているのか分からなかった。

「それに関しては僕も分かりかねます。ただ、最終的にルーリ様の身体は元通りになったようですので、これ以上追及する必要はないかと」

「確かに、そうですね…」

ジェイが風刃の場所を告げた後のマヤリィの行動は目にも留まらぬ速さだった。気付いた時には風刃は消失しており、代わりにルーリの魔力が漲っていた。特殊能力を失って一時的に下がっていた魔力値が元に戻ったのだ。

「今頃はジェイ様も目を覚まされて、ご主人様やルーリ様とお話されているかもしれませんね」

「はい。今は何方の魔力も感じられませんし、一件落着と見て良いのではないでしょうか」

「では、貴女の言う通り、私達からは今日の一件について訊ねることはしないでおきましょう」

これ以上追及する必要はないというタンザナイトの言葉に同意するシロマ。

「はい。女王様から特別お言葉がない限りはそれが良いと思います」

いつものように真顔で頷くナイト。

今、二人はシロマの部屋で話している。

玉座の間を退出した後、自室に戻ろうとしたタンザナイトを引き止め、少し話をしませんかと誘ったのはシロマの方だ。

「…それにしても、シロマ様のお部屋は綺麗ですね。内装はご自身で変えられたのですか?」

マヤリィは各々に部屋を与える時、家具を動かすのは自由で、内装も好きに変えて良いと伝えている。

「はい。…と言っても、私の場合は使わない家具を別の部屋に移動させて頂いたくらいで、中身は最初の頃とほぼ変わっていません」

「必要最低限の物しか置かないということですね。確かに、この空間ならば魔術の習得に専念出来そうです」

自分の部屋よりも広く感じるのは、余計な物がないからだとタンザナイトは思う。

「でも、殺風景でしょう?今日は思わず誘ってしまいましたが、つまらない部屋に呼んでしまってごめんなさい」

「いえ、そんなことはありませんよ。素晴らしいお部屋です」

タンザナイトの言葉に偽りはない。

「無駄な物は何一つなく、この広々とした空間からは『結界』の残滓が感じられます。シロマ様は玉座の間に呼ばれる前、こちらで魔術訓練をなさっていたのですね」

ナイトはその場に残された僅かな魔力を捉えていた。

「それに、僕は書庫に行くことが多いですが、こんなにも魔術書が綺麗に並べられているのは初めて見ました。修復された形跡はシロマ様の鍛錬の証ですね。…そうだ。今度、本の修復方法を僕に教えて下さいませんか?」

「は、はい…!私で良ければ…!」

殺風景だと思っていた部屋を他の誰でもないタンザナイトに褒められ、嬉しさに頬を染めるシロマ。

「ナイト様に教えて差し上げられることは多くはありませんが、出来る限りのことをさせて頂けたら嬉しいです」

シロマはそう言って微笑む。

「ありがとうございます、シロマ様。これからも僕の先生でいて下さいね」

その時、先日の魔術訓練で『貴女様は僕のお手本なんです』と言われたことを思い出し、シロマは喜びを噛みしめながら答えた。

「はい…!こちらこそ、これからもよろしくお願いします!!」


その後も二人は会話を続けていたが、ふいにタンザナイトがシロマの頭に視線を移す。

「シロマ様、よろしければウィンプルを外して頂けませんか?」

「えっ…」

「いえ、深い意味はないんです。ただ、前に見た貴女様の頭が凄く美しかったから…」

タンザナイトが人の容姿を美しいと思うのは珍しいことである。

「…分かりました」

断る理由もないので、シロマはウィンプルを外し、坊主頭をあらわにする。

「…あまり見つめないで下さい」

「なぜです?こんなに綺麗なのに」

ナイトはシロマの頭に見とれる。

「僕にも丸坊主は似合うでしょうか?」

「似合うと思いますが、冗談ですよね?」

一度『丸刈りにしようかな』発言に驚かされたシロマは笑顔で聞き流そうとする。

が。

「本気だと言ったら、僕の髪を丸刈りにして下さいますか?」

「えっ…。冗談、ですよね…?」

「実は、一度やってみたいんです。僕が坊主になったら男性にしか見えなくなりますよね」

「ナイト様は…男性になりたいのですか…?」

「自分でもよく分からないのですが、二度とドレスを着たくないことだけは確かですね」

…ルーリさん、タンザナイトが根に持ってるぞ。

「ナイト様……」

「勿論、今すぐにとは言いません。女王様に伺ってからにします」

今度こそ本気だと思ったシロマは頷く。

「畏まりました、ナイト様。その時が来たら、私が貴女の髪を丸刈りにしましょう」

今、二人だけの秘密がまた一つ…。

相変わらず淡々とした口調で話すタンザナイトですが、シロマに対してはだいぶ心を許しています。

たぶんルーリの部屋だったら絶対行かなかったと思う…。


ルーリはタンザナイトのことが可愛くて仕方ないのですが、押しが強すぎて逃げられてばかり。

いつかナイトのポーカーフェイスを崩してみたいと思いつつ、最近泣いてばかりいるのはルーリの方です。

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