表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流転の國 vol.8 〜桜色の都の救世主〜  作者: 川口冬至夜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

98/117

第91話 幕引き

「ルーリ、本当にごめん。あの時、僕は姫の気持ちを重く考えすぎて、タンザナイトの願いを聞いてあげなかった君をどうしても許せなかった。…でも、それだけじゃない。特殊能力を返したら、今度こそ君はタンザナイトを襲うかもって、勝手に被害妄想してしまったんだ」

ジェイは目を覚ますと、真っ先にルーリに謝った。そして、既にルーリの身体に『魅惑』が戻ったことを聞くと、安堵の表情を浮かべた。

今ここにタンザナイトとシロマの姿はない。ジェイの意識が戻ったら三人で話したいとマヤリィが言ったのだ。

「…ジェイ。お前の被害妄想は正しいかもしれない」

ルーリはジェイの言葉を否定しなかった。

「私が『魅惑』をコントロール出来ずにマヤリィ様を苦しめてしまったのは紛れもない事実だし、ドレス姿のタンザナイトを見た時は抱きたい気持ちを抑えるのに精一杯だった」

タンザナイト本人は任務だと心得ていると言ったが、本当は着たくなかったのだろうと思うと、今更ながら申し訳ない気持ちになる。

「でも、僕は君にひどいことを言った。殺人級魔術を使え、だなんて仲間に言うことじゃないよね」

ジェイはルーリに『人化』魔術を受けると言わせてしまったことを気に病んでいた。

「ええ、あれはひどかったわね」

実際に殺人級魔術を使った人が言う。

「貴方と話した後、ルーリはタンザナイトに『人化』魔術をかけて欲しいと頼んだそうよ。…ナイトが冷静に物事を考えられる常識人でよかったわ」

ルーリの言葉に絆され、一時の感情に流され、女王の許可なく禁術を発動していたらと思うと、さすがのマヤリィも怖くなる。『人化』を施されてしまったら、たとえマヤリィでも元に戻すことは不可能だ。

「はい…。タンザナイトは冷静な判断を下してくれただけでなく、私の長々とした相談に乗ってくれました。私は彼女を傷付けたというのに、彼女は私を救ってくれたのでございます」

ルーリは真夜中の会話について詳しく話した。

「…そうだったのね。けれど、ナイトを傷付けたということに関してはもう心配しなくて大丈夫よ。ナイトは私と違って根に持つタイプじゃないし、何より負の感情を抱いてもすぐに気持ちを切り替えられるよう設計したホムンクルスだもの」

マヤリィは『ルーリ様が僕に悪いことをするなんて、そんなことは有り得ません』と言ったナイトの言葉を聞いて安心していた。

「…だからって『マヤリィ様に言ってはいけない言葉』をタンザナイトになら言える、なんて考えちゃ駄目だよ?」

「はい…。申し訳ありません…」

ジェイにそう言われ、身に覚えがありすぎるルーリは深く頭を下げる。

(私に言ってはいけない言葉って何かしら?)とマヤリィは思いつつ、

「ジェイ。貴方は二度と勝手な被害妄想をしないで頂戴。ナイトは『魅惑』を発動されたところでそう簡単に襲われる子じゃないから、心配しなくて大丈夫よ」

「はい…。申し訳ありません…」

タンザナイトの身を案じて被害妄想に陥り、頑なに『風刃』を隠し持っていたジェイは深く頭を下げる。

結局、ルーリのフォローをしたのはタンザナイトで、全てを解決したのはマヤリィだった。

ジェイもルーリも大いに反省する必要がありそうだ。

「…ところで、私初めて雷系統魔術を使ったのだけれど、どうだったかしら?」

「死ぬかと思いました」

「怖かったです」

「あら、それだけ?」

愛するジェイに向かって容赦なく殺人級魔術を発動したマヤリィは全く反省していない。

「でも、僕は姫に殺されるなら本望です。出来れば一瞬で終わる魔法ではなく、じわじわ効いてくる毒系統魔術とかでお願いします。そして、最後の最後まで貴女を見つめ続けるので看取って下さい」

「真面目な顔して馬鹿言わないで頂戴。貴方が死ぬ時は私も一緒に死ぬわ。絶対に私から離れないって約束したでしょう?」

ジェイの望みを一蹴した後で、マヤリィは甘えた声を出す。

「はい、勿論です!忘れてませんよ!!」

「ふふ。それならいいの」

マヤリィはそう言って微笑むと、突然二人を連れて『転移』した。

「反省会はこれくらいにして、コーヒーでもいかが?」

「はい!!」

ここは潮風の吹くカフェテラス。

ジェイとルーリが和解し、久々に穏やかな時間が戻ってきた。

「メイドのお姉さーん!流転の國ブレンドを三つ頼む!」

「ミルクとお砂糖もよろしく!!」

そう注文してから、ルーリはジェイを見る。

「…お前、いまだに砂糖入れてるのか?」

「だって、苦いじゃん」

「子供みたいだな」

「51歳のくせに20代後半なルーリには言われたくないね」

「お前だって35歳のくせに20代にしか見えないじゃないか」

前と変わらぬやり取りを繰り広げる側近二人を見守りながら、全てを解決した流転の國の女王は思う。

(やはり平和が一番ね……)

二週間以上に渡って続いたルーリの特殊能力没収事件は、こうして完全に幕を閉じました。

全てを解決したマヤリィは二人にタンザナイトの強さを伝え『心配しなくて大丈夫よ』と言い聞かせます。


そして、マヤリィを挟んで久々のカフェタイム。

ようやく流転の國に穏やかな日常が戻ってきました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ