表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流転の國 vol.8 〜桜色の都の救世主〜  作者: 川口冬至夜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/115

第90話 迅雷に愛を込めて

味方同士が争ったらどうするかって?

それは勿論、心が折れている方を助けるのよ。

次の朝、ルーリはマヤリィに許可を求めた。

「ジェイと話しているうちに気付きました。私はもう『魅惑』を使うべきではないのだと」

ルーリは跪き、真剣な顔で話し続ける。

「その為に『人化』魔術を受け、夢魔の特殊能力を永遠に手放したいと思っております。…マヤリィ様、どうかお許し下さいませ」

しかし、マヤリィが簡単に許してくれるはずもなく。

「…ルーリ。貴女は『人化』がどんな禁術か本当に分かっているの?人間になれば二度と悪魔種には戻れないし、それに…」

「私が人化を受けた場合、普通の人間の51歳になるのでございますよね?」

「知っていたの?」

「いえ、タンザナイトが教えてくれました」

そう言ってルーリはタンザナイトの方を見る。

後方に控えていた彼女はルーリの言葉を聞くと、その場に跪いた。

「畏れながら、女王様。貴女様の許可を頂き次第、僕はルーリ様に対し人化魔術を発動するとお約束しております」

「…ということは『禁術全書』を読み解いたのね?」

「はい。貴女様の意図までは読み解けませんでしたが、魔術書の解析は終わっております」

「…そう。もうそこまで話が進んでいるのね」

マヤリィはどうしたものかと思う。

ジェイは頑なに『風刃』を隠したままだし、ルーリの決意は固そうだし、タンザナイトは容易く人化を施せるだろう。

(待って。本当にこれでいいの?)

自分の言葉一つで全てが決まってしまう。

このまま人化を許せば、すぐにタンザナイトは禁術を発動し、それに伴って風刃に封じられた『魅惑』は消滅し、ルーリは悪魔種ではなくなってしまう。…永遠に。

「マヤリィ様、どうかお許し下さいませ。考えに考えた末の結論にございます」

ルーリは懇願する。

しかし、マヤリィは悲しそうに首を横に振る。

「ごめんなさい、ルーリ。私にはどうしたら良いか分からないの。…けれど、これだけは言える。今、私が焦って結論を出せば、絶対に後悔するわ」

「ですが、マヤリィ様。私は魅惑魔術を制御することが出来ません。そのせいで、何度も貴女様を苦しめ悩ませることになってしまいました」

「それはそうだけれど…。貴女は流転の國に夢魔として顕現したのに…」

マヤリィは頭を抱える。

そんなマヤリィに、ルーリはジェイとのやり取りについて話す。

「思えば、ジェイにも随分と迷惑をかけてしまいました…。今も風刃の場所は分かりませんが、中身は破棄するようにとお願いしてあります。ジェイは…私の雷系統魔術によって殺されかけたら場所を教えるかもしれない、などとひどいことを言いました。よほど私のことを恨んでいるのでしょう」

その会話はマヤリィも『透明化』して聞いていたが、確かにあれはひどかったと思う。

「そうね…。いつまでジェイは怒っているのかしら…」

実はマヤリィもだんだんジェイの考えが分からなくなってきていた。ルーリがナイトの願いを聞いてくれなかったことに関してはともかく、何をそんなに怒っているのだろう。何が彼の怒りを持続させているのだろう。

「…ねぇ、タンザナイト?」

「はっ。何でございましょうか?」

マヤリィは突然ナイトに訊ねる。

「貴女、ルーリから何か悪いことをされた覚えはあるかしら?」

「いえ、ございません」

「本当ね?」

「はい。本当です。ルーリ様が僕に悪いことをするなんて、そんなことは有り得ません」

「ドレスを着た件に関してはどうなの?」

「あれはリッカ様を國に留める為の任務の一つと心得ております。決してルーリ様の圧力に屈したわけではございません」

「ふふ、そうよね」

マヤリィはナイトの言葉を聞いて微笑むと、

「…ねぇ、ルーリ?」

今度はルーリに訊ねる。

「『魅惑』を取り戻したら…貴女はまた浮気してしまうのかしら」

「えっ…」

「確かにこれまで貴女はラピスやシロマと浮気して、私を悩ませてくれたわね。…けれど、それは夢魔の本能に抗えなかっただけで、私を苦しめるために行ったことではない。そうでしょう?」

マヤリィはそう言いながらルーリの傍まで来る。

「それに、貴女の浮気は今に始まったことじゃないのだから思い詰めないでって、私貴女に言ったわよね?」

「はっ。確かに貴女様はそうおっしゃいました…」

ルーリが『魅惑』を封印すべきかと悩んでいた時にマヤリィ様がかけた辛辣なお言葉である。

「…なのに、どうして今の貴女は魅惑を手放そうとしているの?ジェイに強硬手段を求められたから?」

「はい…。あんなジェイはいまだかつて見たことがありませんでした。私はそれほどまでに罪深く、恨まれて然るべき悪魔なのでしょう…」

「そんな悲しそうな顔をしないで頂戴、ルーリ。私にはジェイの感情までは推し量れないけれど、貴女が今からでも魅惑を取り戻したいと思うなら考えがあるわ」

この間の会話を聞いてルーリが可哀想になったマヤリィは、今の悲しそうなルーリを見ていられなかった。

「ですが、マヤリィ様…!私は………」

そう言いかけて泣き崩れるルーリをマヤリィは優しく抱きしめる。

「『人化』魔術はいつでも使えるのだから、その前に貴女の特殊能力を取り戻すとしましょう。…いいわね?」

「はい…マヤリィ様……」

そして、ジェイが呼び出された。

まだ泣いているルーリをタンザナイトが支えている横で、マヤリィはジェイと対峙する。

「最後通告よ、ジェイ。風刃の場所を教えなさい」

「姫、いつの間にルーリの味方になったのですか?」

「私は最初からルーリの味方よ。そして、貴方の味方でもあるわ」

「味方同士が争ったらどうするんですか?」

「それは勿論、心が折れている方を助けるのよ」

そう言うと、マヤリィは『宙色の魔力』を解放した。

(これが女王様の魔力…!!)

タンザナイトは底知れない強さに恐怖を覚えると同時に果てしない興味を持つ。

「さぁ、始めましょうか。『迅雷一閃』発動せよ」

「本気なんですね、姫…!」

「ふふ、それはどうかしら?」

次の瞬間、文字通り雷が落ちた。

ジェイは気を失い、その場に倒れる。

「マヤリィ様…!」

「大丈夫よ、ルーリ。『無感覚』魔術はかけてあるし、それに…」

「ご主人様、お呼びでしょうか?」

タイミング良くシロマが現れた。

「最上位白魔術師も呼んであるしね」

(そういう問題なんだろうか?)

タンザナイトは容赦なく雷系統魔術をジェイに撃ち込んだマヤリィに驚きつつ、もっと驚いているルーリを支えていた。

「シロマ、意識だけ戻して頂戴」

「はっ。畏まりました、ご主人様」

シロマの魔術によって、殺人級魔術を食らったジェイの意識が戻る。

「姫……」

「風刃の場所を言いなさい。でなければ、私は貴方を罪に問わなければならなくなる」

身動き一つ取れないジェイだが、周囲に皆がいるのは分かっている。

このままでは、正当な理由なくルーリの特殊能力を返さないジェイの方が罪人になってしまう。

「貴女は…ルーリを許したのですね。まさか本気で僕に宙色の魔力を使うなんて、思ってもみませんでした」

「馬鹿ね、ジェイ。この私が本気を出したら今頃貴方は死んでいるわ。無感覚魔術までかけて手加減したのだから、そろそろ観念して頂戴。これ以上、愛する貴方に雷を落とすのは嫌よ?」

微笑みを浮かべてジェイに話しかけるマヤリィを見て、

(女王様、怖っ…)

(マヤリィ様、怖ぇ…)

(ご主人様、怖いです…)

皆は同じことを考えている。語彙力が行方不明になっている。

「…分かりました、姫。貴女にこんなことをさせてすみません。風刃の場所は……」

それを告げると、ジェイは再び意識を失った。

ルーリに対し『君の雷系統魔術をもってすれば、僕を死の直前まで追い込んで風刃の隠し場所を言わせることくらい簡単でしょ?』と言い放ったジェイ。

今回、マヤリィはルーリの代わりにそれを実行することにしました。


容赦ない雷系統魔術に恐れ慄く三人をよそに『これ以上、愛する貴方に雷を落とすのは嫌よ』とか言っちゃうマヤリィ様。

因みに、タンザナイトは『風刃』の記憶を『完全消去』されているので、途中からよく分からないまま話に付き合っています。


大切なルーリの特殊能力を取り戻す為、大切なジェイに対し宙色の魔力を使うマヤリィ。

…にしても、火力が強すぎませんか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ