流転の國 番外編 忘れられた夢の物語
かつてルーリは哀しい夢を見た。
自分の失言によって自死したマヤリィが甦り、流転の國の配下達や桜色の都の異種族を苦しめる話だ。
目覚めたルーリはすぐにその内容を忘れてしまったが、彼女が夢の中で『人化』させられた『記録』は今も残されている。
これは、あなた達にしか見えない『記録』だ。
当時49歳のルーリは、マヤリィが無断で発動した『人化』魔術によって人間種となった。
(『流転の國 vol.2 〜闇堕ち編〜』より)
マヤリィがどこかへ『転移』してしまい、その場に残されたルーリは皆の身を案じる。
(そうだ…皆はどうしているだろう…)
とりあえず、跪いた姿勢から立ち上がる。身体が痛い。
(長時間同じ体勢でいるのはつらいな。…いや、今までにそんなことあったか?)
ルーリは不思議に思いつつ、いつものようにハイヒールを履いた。…つもりが、足首を捻って転んでしまった。
(痛っ……)
そして立ち上がろうとした時、自分の着ているロングドレスの裾を踏んでしまい、再び転ぶ。
(危なっ…。なんで今日はこんなに危なっかしいんだ?)
ひとまずハイヒールを諦め、服も替えようとする。
しかし、一瞬で着替える魔術が発動しない。
(そうか…あれはサキュバスだから出来たのか…)
面倒だが、今着ているドレスを脱いで、衣装部屋でマヤリィが見つけた漆黒のミニドレスを着る。
(これでいいか。…いや、しかし…)
なんとなく鏡の前に立ってみる。
ミニ丈が似合わない。というより痛々しい。
(っていうか…これ私か……?)
美しさは変わらないが、ルーリの見た目は普通の人間の49歳になっていた。
(髪に白いのが混じってる……?)
元が金髪なので目立たないが、ルーリは目ざとく白髪を見つけてしまった。
(肌がくすんでいるな…。この目尻のシワはなんだ…?なんだか近くが見えづらい気がする…。普通の人間ってこういうものなのか?…いや、今はそれを気にしている場合ではない。何か他に着るものを考えないと…)
アイテムボックスをかき回して、ようやく見つけたのはスーツだった。
(正装、か…。まぁ、今の私は夢魔ではないし、これでいいか…。ローヒールの靴はあったかな……)
ルーリは四苦八苦して49歳のコーディネートを完成させた。…いや、パンツスーツにヒールのないパンプスを合わせただけです。
(やれやれ、たったこれだけで疲れてしまった…)
身体の痛み、肌のお悩み、白髪、老眼…。
アラフィフの女性は色々と大変なんですよ、ルーリさん。
えっ…。
これを本編でやるんですか??




