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流転の國 vol.8 〜桜色の都の救世主〜  作者: 川口冬至夜


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第79話 言わなければならないこと

シロマと話し、休養室に行き、そして夜…。

その夜遅く、マヤリィはルーリの部屋を訪ねた。

《こちらマヤリィ。今、貴女の部屋の前にいるの》

という『念話』を受けた時は驚いたが、慌ててドアを開けた。

そして、もう一つの驚きに出会う。

「マ、マヤリィ様…!なんて可愛らしいのですか…!」

ルーリはタンザナイトのドレス姿を見た以上の衝撃を受けた。

それは、マヤリィが『休養室』でジェイに着せられたネグリジェ姿のままで現れたから。無論、ルーリがこの服を見るのは初めてである。

昼間、タンザナイトを抱きしめたかったが、理性を総動員して思い留まったルーリ。でも、マヤリィが相手なら我慢することは不可能だ。

「マヤリィ様ぁっ!!」

ルーリは堪らずにマヤリィを抱きしめ、その唇にキスをし、挙げ句の果てにはお姫様抱っこで部屋の中に連れ込んだ。

「マヤリィ様マヤリィ様マヤリィ様!!!」

既に『魅惑』が発動している。語彙も失っている。

「ああ、マヤリィ様…!」

出来たら脱がせたいが、あまりに可愛いのでもう少し見ていたい。でもやっぱり脱がせたい。

(後でまた着せればいっか…♪)

ルーリさん、この人一応女王様なんですよ?

「マヤリィ様、今宵は貴女様を頂きます」

『夢魔変化』したルーリは、返事も聞かずにマヤリィの服を脱がした。

久しぶりに見るマヤリィの肌。元から華奢な身体がさらに細くなったように思える。そして…腕の傷痕。

「愛しています、マヤリィ様…!」

マヤリィはルーリの部屋に入ってから、というか入れられてから一言も喋らず、彼女に身を任せている。

その間マヤリィが何を思っているかも考えず、貪欲なサキュバスと化したルーリは愛する女性を抱いた。…とても激しく。

そして気付けば真夜中になっていた。

今、2時を回ったところだ。

「マヤリィ様…私……」

ようやく我に返ったルーリはベッドの上でマヤリィを見つめる。

「申し訳ありません……」

とりあえず謝る。服を着せる。

「あの…マヤリィ様?お声を聞かせて下さいませんか…?」

何も言わないマヤリィを不思議に思い、ルーリは言う。今更だけど。

「怒っていらっしゃいますか…?」

タンザナイト並みに表情のないマヤリィ。

彼女がこんな顔をしているなんて珍しい。

「本当に申し訳ございませんでした。マヤリィ様、私はもう一度『魅惑』を封印するべきかもしれません…」

伸びた前髪を触ってルーリは言う。

しかし反応はない。

「あの…マヤリィ様?」

さすがのルーリも困ってしまう。

「そういえば、まだお伺いしていなかったのですが…貴女様はなぜこちらに?いえ、来て下さったことは非常に嬉しいです!されど、貴女様がいらした時は既に0時を過ぎておりました。何かあったのですか…?」

やっと用件を聞く。

その時、マヤリィは哀しそうな目でルーリを見た。

「貴女に言わなければならないことがあるの…」


ベッドの上で難しそうな話を聞くのもなんだと思ったルーリは、マヤリィを抱っこしてソファまで連れて行った。

「申し訳ありません、マヤリィ様。少しでも長く貴女様を抱いていたいのです」

ルーリさん、全然反省してないな。

「この服は休養室でジェイが選んだ物なの。私の身体に合うサイズの服を色々と用意してあるらしいのよ」

「ジェイが…?」

「ええ。彼は衣装部屋に入れないのに、どこで手に入れてきたのかしらね」

衣装部屋は女性専用なので、ジェイは入ることが出来ない。

なので、どこでマヤリィ(に着せるつもり)の服を調達してくるのか分からない。

「とても可愛らしいです、マヤリィ様。さすがジェイは貴女様のことをよく分かっておりますね」

自分が選んだ服でないのは少し悔しいが、可愛すぎるマヤリィを見ながら(ジェイ、よくやった!)と思うルーリだった。


「畏れながら、マヤリィ様。そろそろお話を聞かせて下さいませんか?私に言わなければならないこととは、何でございましょうか…?」

マヤリィがなかなか話してくれないので、ルーリは気になって訊ねた。

すると、マヤリィはぽつりぽつりと言葉を並べ始める。

「『流転の國のNo.2』『女王(わたし)の切り札』『国家機密』」

「マヤリィ様、それは……」

どれもルーリを表す言葉だ。

「長い間、貴女の存在を外部の者に知らせなかった理由よ」

マヤリィは言う。

「けれど、リッカ殿の書状が届く前から、私は貴女を桜色の都に連れて行くつもりでいた。…この意味、分かるわね?」

「はっ。あの時にはもう…私は国家機密ではなくなっていたのですね」

ルーリは答える。

「流転の國のNo.2でもなく、マヤリィ様の切り札でもない。そういうことにございますね…」

「ええ、そうよ。…なぜ私がそう決めたか、分かっているでしょう?」

「はっ。私の力不足ゆえのことにございます」

文字通り、今現在の『No.2』はタンザナイトだ。流転の國で最強の実力を持つのは言わずもがな女王マヤリィなので、配下の中で最強の実力を持つ者を『No.2』と呼ぶ。

そのポジションを特別気に入っていたわけではないが、いざ実感すると少しつらい。

しかし、こんなことを言わなければならないマヤリィの方が遥かにつらいだろう。

「貴女は今も雷系統魔術の天才だし、流転の國最高クラスの魔術師であることに変わりはない。…けれど、一度『国家機密』から外した以上、貴女の実力がナイトを上回って再び『No.2』となっても、元には戻せないの」

マヤリィは哀しそうに言う。

「それが貴女にとって良いことかどうか、私には分からないわ。でも、貴女に何も言わずに決めてしまったことを謝らせて頂戴。本当にごめんなさい、ルーリ」

「マヤリィ様、私などに謝らないで下さいませ…!私がもっと努力を重ねていればタンザナイトに追い抜かれることもなかったのですから…」

雷系統魔術の天才と言われ、マヤリィの切り札と呼ばれ、その地位に甘えて訓練を怠っていたことにルーリは気付く。…訓練を怠っていそうな配下は他にもいるけど。

「畏れながら、マヤリィ様」

少しの沈黙の後、ルーリは気になることを訊ねた。

「タンザナイトは既にヒカル様やシャドーレに会ったことがございます。それでも彼女は『国家機密』となりうるのでしょうか?」

その問いに対し、マヤリィは首を横に振る。

「いいえ。この先、私達が秘匿すべきはナイト自身ではなく『ナイトの実力』よ。ヒカル殿が知っているのは、造り出されてまもない頃の彼女だけだもの」

とはいえ、その時ナイトは既に『複合魔術 Lv.3』を披露していたのだが。

マヤリィの答えを聞いたルーリは真剣な顔で頷く。

「…分かりました、マヤリィ様。私が至らぬばかりに貴女様を悩ませてしまい、本当に申し訳ございません。されど、こののちも私を貴女様の配下として使って下さいますよう、お願い致します。どうか今一度、我が偉大なる女王陛下に絶対の忠誠を誓うことをお許し下さいませ」

「ええ、許すわ。当たり前でしょう?」

ルーリは物凄く重々しい雰囲気を纏って言うが、マヤリィの方は軽く返事をする。

「それに、貴女はただの配下ではなく私の側近よ?あと、これから先も最高権力者代理を任せる可能性はあるから、そのつもりでいて頂戴。他にもルーリの仕事は沢山あるわ」

「はっ!有り難きお言葉にございます、マヤリィ様」

国家機密という枠から外れただけで職務は今までとほとんど変わらない。

再び桜色の都に行かなければならない時が来るかもしれないし、もうNo.2には戻れないかもしれないが、マヤリィ様の御為ならば何でもする。ルーリは決意を新たにすると同時に、このことを玉座の間ではなく自分の部屋で話してくれたことに深く感謝した。内容が内容だけに、皆の前で話されるのはさすがのルーリもちょっとつらい。どう考えても格好悪いし。

「…ねぇ、ルーリ?」

ルーリが決意を新たにしていると、マヤリィが甘えた声を出す。

「今から貴女に命令を下すわ。…さっきのをもう一度やって頂戴」

「さっきの…?」

「ほら、早く『夢魔変化』しなさい。やっと難しい話を終えたのだから、今夜はここからが本番よ?」

「か、畏まりました、マヤリィ様…!」

(っていうか、マヤリィ様は寝なくて大丈夫なのか?)と思うルーリだが、欲望のままに『魅惑』を発動する。

一方、マヤリィは夢魔の腕の中で思う。

(昼間ずっと休養室で寝ていたから夜寝られなくなった…とは言えないわね)

流転の國の方針としてずっと守り続けてきたことを変えたマヤリィ。

それはタンザナイトがルーリを超えたからというだけでなく、有事の際にも玉座の間で待機しなければならない役目からルーリを解放する為、だったかもしれません。


『自由に過ごせと言っておきながら、私はルーリを縛り付けていた』と感じた時から、実はずっと気にしていたマヤリィ様です(第42話)。


…それでもシャドーレの『記憶』は戻さないらしい。

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