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流転の國 vol.8 〜桜色の都の救世主〜  作者: 川口冬至夜


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第77話 マヤリィの部屋

大好きよ。

今も昔も、そしてこれからもずっと…。

「姫、今の念話は誰からだったんですか?」

『念話』を終えた後、マヤリィの部屋にいたジェイが内容を聞く。

マヤリィが少しの間黙っていたし、珍しく感情が表に出ていたから、誰かと念話していることに気付いたのだ。

「タンザナイトよ。今、ルーリとリッカ殿と一緒にカフェテラスにいるみたい」

マヤリィは言う。

「貴方も聞いているでしょう?私がリッカ殿を配下に迎えたいと思っていることを」

「はい。さっきルーリから聞かされました。…まさか、その件で何かあったんですか?」

ジェイは何事かと思うが、マヤリィは微笑んでいる。

「ナイトのお陰で、リッカ殿がしばらく流転の國に滞在すると約束してくれたのよ」

「えっ?ルーリではなく、タンザナイトが?」

「ええ。どうやら自分のドレス姿を見せるのと引き換えに魔術の指導をお願いしたらしいの」

「タンザナイトが…ドレスを…?」

ジェイには想像が付かなかった。

「ルーリが着てくれと騒いでいた記憶はありますが、タンザナイトの方は凄く嫌がっていましたよね?」

「ええ。絶対に着ないとまで言っていたわね」

「…姫。もしかして、タンザナイトは……」

ジェイはタンザナイトの策に気付いた。

そして、マヤリィに確かめる。

「リッカ様の魔術の指導、何日お願いしたんですか?」

「ナイトは特に提示しなかったらしいけれど、許可を求められたから私が一ヶ月と決めたわ」

「い、一ヶ月…!?」

ジェイは驚く。

「因みに、その間は流転の城内にある施設を自由に使っていいと伝えてある。…この意味、分かるでしょう?」

マヤリィは不敵な笑みを浮かべる。

「我が國には、桜色の都の王宮と比べてもなお素晴らしい環境が整っている。個人の部屋は勿論のこと、書庫や訓練所や衣装部屋といった施設も充実しているわ。…リッカ殿がどうしても静かなレイン離宮に戻りたいと言うのなら仕方ないけれど、魔術好きの彼女がそう簡単にここを離れられるかしら?」

「無理でしょうね…」

ジェイは素直に頷く。

同時に、マヤリィの計画がうまく進みすぎていることに恐怖さえ感じるが、一つの疑問に行き着く。

(姫はそこまで見越してタンザナイトを?…いや、リッカ殿を流転の國に留める役目はルーリに命じたはずだ)

「恐らくはルーリが調子に乗ってタンザナイトにドレスを着せようと衣装部屋の話でもしたのでしょうね。リッカ殿はルーリの言葉を聞いて興味を持ち、ナイトのドレス姿が見たいと思ってしまった。それをいいことに、ナイトは魔術を教えて欲しいという交換条件を出したのよ」

まぁ、だいたい合っている。

「当然、魔術を教えてもらうには私の許可が必要になる。そこで、すかさず『念話』を発動し、女王である私から直接リッカ殿を引き留める為の言葉を引き出そうとした。…ナイトって頭いいわね」

タンザナイトがカフェテラスに現れるのはマヤリィも予想外だったが、自由時間である以上、その可能性は十分にある。だから、ナイトがリッカの件で念話を送ってきた時はさほど驚かなかった。ナイトが身体を張って作ってくれたチャンスを掴み取ることだけを考えていた。

「うっかり私も『記憶の記録』を使うようルーリに命じてしまったけれど、見る前にナイトに許可を取ることにするわ。…あの子、本当に着たくなさそうだったから」

女王(マヤリィ)様は配下(ナイト)が作ったチャンスを十分に生かした。一方で、母上(マヤリィ)様は(ナイト)の心配をしてドレス姿を見るのに許可まで取ろうと考えている。

「後でご褒美をあげることにしましょう。ナイトは何が欲しいのかしら?…今の私なら何だって叶えてあげられる気がするわ」

途中から独り言になっているマヤリィ様。

(もう、タンザナイトのこととなると本当に母上様になっちゃうんだから…)

ジェイは少々呆れつつも慣れてきた。

(19歳の設定はラピスラズリを造った時に適当に考えたものだと思うけど、今となっては絶妙な年齢設定と言うか…。その頃の姫を思い出すとつらくなるな…)

「ジェイ、何を考えているの?」

気付けばマヤリィがジェイの顔を覗き込んでいた。

「いえ…タンザナイトは大丈夫かな、と思って…」

「それだけ?」

姫が19歳の時のことを考えてました、とは言えないので誤魔化そうとしてみるが、ジェイはそういうのが苦手である。嘘をつくこともお世辞を言うことも出来ない。

マヤリィは追及するつもりなどなかったのだが、

「えっと、その…姫のことも考えてました…」

ジェイは素直に白状する。

「あら、難しい顔してどうしたのかと思ったら、私のことを考えてくれてたの?」

「はい…」

それを聞いたマヤリィは微笑みながらジェイを抱きしめる。

「…ねぇ、ジェイ?」

そのまま、甘えるような声でささやく。

「これだけは忘れないで頂戴。タンザナイトは確かに可愛い娘だけれど、私にとって貴方以上に大切な人なんていないの」

「姫…!」

「大好きよ、ジェイ」

そう言ってジェイにキスをするマヤリィ。

今のマヤリィは女王でもなく母親でもなく、ジェイの恋人である。

「姫…!僕も貴女のことが大好きです…!」

そして、満面の笑みで愛する姫に宣言する。

「今の貴女の言葉、絶対に忘れませんよ!!」

訓練所で自由時間を言い渡されてから、ジェイはマヤリィの所に来ていました。


衣装部屋でタンザナイトが夢魔と王女を魅了している頃、二人は恋人の時間を過ごしています。

ナイトが甘く優しい声でリッカに念押ししている頃、マヤリィは甘えるような声でジェイに愛の言葉を告げています。

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