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流転の國 vol.8 〜桜色の都の救世主〜  作者: 川口冬至夜


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第74話 思惑

「失礼致します、女王様。只今、案内を終えました」

玉座の間に戻ってきたタンザナイトをマヤリィは笑顔で迎えた。

「ご苦労だったわね、タンザナイト」

「はっ。有り難きお言葉にございます、女王様」

ナイトは真面目な顔でお辞儀する。

そこへ、

「ちゃんと留守番出来たか?」

ルーリが軽口を叩く。

「はい。『魔力探知』を発動しておりました」

タンザナイトはいつものように淡々と応じる。

「私がいなくて寂しくて泣いたりしなかったか?」

「いえ、残念ながら泣いていません。…ルーリ様じゃあるまいし」

「おい、一言余計だぞ」

「僕は真実を述べただけです」

「可愛い顔して可愛くないな…」

「それってどういう意味です?」

「マヤリィ様ぁ…!」

最近、タンザナイトを揶揄おうとすると大抵こういう結果に終わる。

「ふふ、ルーリが翻弄されてて面白いわね」

二人の掛け合いを黙って聞いていたマヤリィも助けてくれない。

「誰かにも面白いと言われた気が致しますが…」

ルーリは複雑な顔をするが、それでもいつかはタンザナイトのポーカーフェイスを崩してみたいと思っている。

マヤリィは微笑みながら、

「貴女達が仲良しなのは分かったから、そろそろ下がっていいわよ、タンザナイト」

「はっ。畏まりました、女王様。…では、失礼致します」

ナイトは深くお辞儀すると、玉座の間を退出した。

そして、二人だけになったところでマヤリィはルーリを労う。

「…ルーリ、今日はご苦労だったわね。リッカ殿の相手をしてくれて助かったわ」

「はっ。此度は桜色の都に同行させて下さり、ありがとうございました。…畏れながら、マヤリィ様」

「なぜリッカ殿をお持ち帰りしたか聞きたいのかしら?」

マヤリィはルーリの疑問を分かっていた。

「はい。最初からそのおつもりだったのですか?」

「違うわ。…貴女達が寂しそうな顔をしていたから」

「えっ?」

「だって、言ってたじゃない。一期一会は寂しいとか何とか…」

マヤリィは二人の会話をしっかり聞いていたらしい。

「理由はそれだけにございますか…?」

「いえ、それだけじゃないけど」

「マヤリィ様…。結論からお願い出来ますでしょうか?」

「ふふ、それもそうね」

(マヤリィ様にも弄ばれている気がする…)

頭を抱えたくなるルーリだが、姿勢を正して次の言葉を待つ。

「流転の國に連れてくるつもりがなかったのは本当よ?リッカ殿の話を聞いていたら、彼女のことをもっと知りたくなったの」

「リッカ様のことを…?」

「ええ。氷系統魔術だけでなく、彼女自身に興味を持ったのよ」

マヤリィは言う。

「けれど、貴女も分かっている通り、離宮に帰ってしまったら簡単には会えなくなるわ。だからその前に流転の國に連れてきたの」

それを聞いたルーリはマヤリィの思惑に勘付く。

「マヤリィ様、もしやとは思いますが…あわよくばリッカ様を配下に…とか考えていらっしゃいませんか?」

「あら、よく気付いたわね。さすがは私の側近」

マヤリィはあっさり認める。

「リッカ殿は国王が心配になってレイン離宮から出てきた。なのに、役に立てないからと言って離宮に戻ろうとしているわ。…最終的にリッカ殿が離宮に戻りたいというなら止めないけれど、私は彼女が欲しい。第一印象はともかくとして、彼女のことが気に入ったのよ」

出た。マヤリィ様の『気に入ったから配下にしたい』発言。

「それに、氷系統魔術の適性持ちなんてそうそう出会えるものじゃないわ。強大な魔力を持っていることは確かだし、貴女達が寂しがっていたのも本当よね?…何より、ルーリと真剣に話せる人ならそれだけで信頼に値するわ」

「マヤリィ様…!」

その時、初めてルーリは桜色の都に行って良かったと思った。

そして、

「なぜタンザナイトに案内を命じたのかと思っておりましたが、流転の國に興味を持たせる為だったのですね…!」

以前は自ら部屋に案内していたのに、今回はタンザナイトにその役目を任せたマヤリィ。

だが、ルーリの深読みは外れた。

「いえ、単に私が疲れたから頼んだだけよ。…けれど、ナイトには人を惹き付ける不思議な魅力があるし、結果的には良かったかもしれないわね」

飄々とした雰囲気を纏い、誰に対しても物怖じすることなく振る舞うタンザナイト。出会った者は皆、彼女に一抹の恐ろしさを感じながら、それでも興味を持ってしまうのだ。

「…さて、明日は皆を紹介すると言ったことだし、私疲れちゃったし、そろそろ部屋に戻るとしましょう。…ルーリ、後は任せたわよ」

明日の会議の前に、今日のことを配下達に説明しておかなければならない。

「はっ。畏まりました、マヤリィ様」

ルーリは恭しく頭を下げる。

「皆に『念話』で報告致します。後は全てお任せ下さいませ」

「ええ。頼りにしているわ、ルーリ」

マヤリィはそう言い残して『転移』した。

疲れきった顔を見るに、明日の会議は午後からにした方が良いだろう。

ルーリは今日の出来事を簡単に纏めると『念話』で皆に報告するのだった。


その頃、マヤリィは転移先から、

「今から『休養室』に来て頂戴。疲れたわ……」

ジェイに念話を送っていた。

天蓋付きのダブルベッドが設置されている休養室は『女王様専用の治療部屋』です。

この後、休養室に現れたジェイは例によってマヤリィを着替えさせ、ベッドに寝かせたのでした。

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