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流転の國 vol.8 〜桜色の都の救世主〜  作者: 川口冬至夜


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第73話 案内役は19歳

「お帰りなさいませ、女王様、ルーリ様」

流転の國に帰還した二人を出迎えたのはタンザナイトだった。

「ただいま、タンザナイト。玉座の間での待機、ご苦労だったわね」

「お前に出迎えられるというのも不思議な感じだな…」

タンザナイトは二人の帰還を喜んでいたが、すぐにもう一人いるのに気付いた。

「畏れながら、女王様。そちらの方は…?もしかしてリッカ様にございますか?」

「なぜ、私の名前を…?」

リッカは不思議に思うが、タンザナイトは畏まって挨拶する。

「初めまして、桜色の都のリッカ様。僕の名前はタンザナイト。書物解析魔術を専門とする魔術師です。どうぞよろしくお願いします」

白い背広に白い革靴。ライトブラウンの短い髪。

(少年…?いや、女の子か…?)

タンザナイトの存在を知らなかったリッカは戸惑いつつも丁寧に挨拶する。

「タンザナイト様、初めまして。おっしゃる通り、私がリッカにございます。本日はマヤリィ様の優しさに甘えまして流転の國にお邪魔させて頂くこととなりました。よろしくお願い致します」

「僕のことはタンザナイトで構いませんよ。流転の國最年少ですし、他の皆様より格下の存在ですので」

初対面の相手にも真顔で話すナイト。実はちょっと人見知りなリッカ様。

「ところで、先日の貴女様の使い魔殿は圧巻でございました。今日はご一緒ではないのですか?」

またオジロワシを見たいと思っていたら、先に飼い主がやってきた。

「私が呼べばすぐに参りますが…場所を取りますので…」

リッカは困ってしまう。

(この子はヒカルと同じくらい?いや、もっと年下か…?なぜ初対面の大人を前にしてこんなに落ち着いていられるのだ?)

その時、

「タンザナイト、リッカ殿はお疲れのようだからお部屋に案内して差し上げなさい」

「はっ。畏まりました、女王様」

「リッカ殿、今日のところはゆっくり過ごして頂戴。明日、改めて私の配下達を紹介するわね」

「はっ。畏まりました、マヤリィ様」

いつの間にか、リッカもマヤリィの配下みたいになっている。

「では、失礼致します。参りましょう、リッカ様」

次の瞬間、二人は客室の前に立っていた。

…客室なんていつ用意したんだろう?

「っ…今のは『空間転移』か…!?」

独り言のつもりが口に出てるリッカ様。

「はい、空間転移にございます」

隣にはタンザナイトがいる。

「貴女が空間転移を発動したというのか…?」

思わずいつもの口調になってるリッカ様。

「はい、僕が発動致しました」

タンザナイトは淡々とした様子で答えると、客室のドアを開けた。

「こちらです、リッカ様。どうぞお入りになって下さい」

「ああ…。すまないな…」

(最年少って言わなかったか?格下って言わなかったか?それなのに『空間転移』を発動出来ると言うのか??)

リッカは混乱する。桜色の都で『空間転移』を自在に扱える魔術師は存在しない。

『長距離転移』にも驚かされたが、あれはマヤリィ様だからこそ使えるのだと無理やり納得したのに…。

「…タンザナイト。質問してもいいか?」

「はい。何でしょうか?」

「歳は幾つになる?」

「19にございます」

「魔術具は持っているのか?」

「『流転の羅針盤』という魔術具を賜りました。こちらです」

「書物解析魔術…とやらの適性を持っていると言ったな?」

「はい。僕は『書物の魔術師』と呼ばれております」

「後で詳しく聞かせてくれぬか?」

「明日でよろしいでしょうか?」

「ああ。…ところで、失礼なことを聞くが」

「何でございましょうか?」

「そのような姿をしているが、性別は…」

「女にございます。そうでなければ、リッカ様を客室までご案内することは出来ません」

「それはそうだな…。すまなかった」

「いえ、お気になさらず。桜色の都の御方から見れば僕が女だとは信じがたいでしょう」

桜色の都の女性の常識についてはタンザナイトも知っているので、リッカが疑問を持つのも無理はないと思っている。

さすがに自分がホムンクルスだと告げることは出来ないが、シャドーレに話したのと同じような『設定』をリッカに話す。

「この服はマヤリィ様と一緒に選んだのですが、気に入って着てみたら男物だったんです。この髪は流転の國に顕現した時からこんな感じでした。そろそろ切ってみたいと思っているんですが…リッカ様はずっと御髪を伸ばされているのですか?」

今日は珍しく饒舌なタンザナイト。目の前の相手が桜色の都で戦ってみたかった氷系統魔術師だと分かっているので、興味津々である。

「ああ。貴女も知っている通り、桜色の都の女は皆長い髪をしている。我が国の常識というか…偏った美の基準の一つだな。私はそんな国で育った王女ゆえ、物心つく前から今までずっとロングヘアなのだ」

リッカはそう言いながら、目の前にいる美少年のようなタンザナイトを見て(マヤリィ様も美しいが…短い髪の女の子というのも可愛いな)と思うのだった。

(されど、掴みどころのない娘だな)と感じつつ。

「…では、また改めて色々な話を聞かせてくれ」

「はい。僕もリッカ様に伺いたいことがあるので、楽しみにしています」

タンザナイトはそう言うと、一つの『宝玉』をリッカに手渡した。

「これは…?」

「『念話』の魔術が込められた宝玉にございます。一度使うと消えてしまいますが、何かありましたらこれでお呼び下さい」

「『念話』…?」

「まぁ、テレパシーのような物です。自分の名を言うところから始めて、僕もしくはルーリ様に話しかけて下さい。僕は睡眠を必要としない種族ですので、真夜中でも構いません」

「わ、分かった…」

(『空間転移』といい『念話』といい、都では誰も使えない魔術をいとも容易く発動するとは…流転の國の魔術師は素晴らしくも恐ろしいな)

「では、ごゆっくりお過ごし下さい。僕はこれで失礼致します」

タンザナイトは一礼すると、再びどこかへ転移していった。

「睡眠を必要としない種族と言ったか…?」

いつになく台詞の多いタンザナイトのお陰で情報過多なリッカ様。

混乱しながら部屋の中を見渡すと、王宮でも見たことのない最上級の家具が揃った綺麗な空間が広がっていた。

今回、タンザナイトは新しい白スーツを着ています。

実戦訓練の時に破れて着られなくなってしまったので、ルーリが留守の間に衣装部屋に行って同じ物を探しました。


ナイトの身体の構造については謎だらけですが、髪は少しずつ伸びていくようです。

母上様は『髪型も服装も、好きなようにさせてあげたい』と願っているので、髪を切りたいと言ったら即座に第7会議室に連れて行ってくれると思います。

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