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④桜色の都

その頃、桜色の都の西の国境線では『クロス』が待機していた。

「ウィリアム隊長、報告です。今のところモンスターが攻めてくる様子はございません」

偵察に行っていた隊員がウィリアムに報告する。

「存在は確認出来るのですが、こちらに近付いてくる個体は見当たりませんでした」

「…そうか。では、引き続きこの場所で待機だ。相手はかつて我々を壊滅寸前にまで追い込んだドラゴン。いつ何があっても対応出来るようにしておくよう、皆に伝えてくれ」

「はっ!畏まりました!」

(メアリー、君が出動する事態にならなければ良いんだが…)

ウィリアムは妻のメアリーことシャドーレの顔を思い浮かべた。彼女は桜色の都で一番の実力を持つ黒魔術師で『クロス』の特別顧問を務めている。今は別の仕事で王都にいるが、前回のような非常事態になれば彼女にも出動命令が下されるだろう。

(今は国会が開かれているし、陛下も出来ればメアリーを王都に留めておきたいんだろうな…)

国王からの信頼厚く聡明な彼女は、国政にもかかわっている。ヒカル王が目指す国づくりに賛同し、それを後押しする者として、シャドーレはとても心強い存在なのだ。

若き国王は閉鎖的で不平等な桜色の都を変えていきたいと思っている。古い慣習に縛られ、男尊女卑が当たり前の社会。それを打破する為、彼は国の改革を進めている。

「しかし…長年続いてきたことですからな…。もう少し慎重に意見を交わすべきでは…?」

今も政治の中枢には古い考え方の貴族達も残っている。

「お言葉ですが、この法律について話し合うのは今回で3度目。まだ言い足りないことがあるならばこの場で伺いますわ。されど、長年続いてきたというだけで改正に反対するのは国王陛下のご意志に背くことになりますわよ?」

「そ、それは…」

シャドーレの言葉にたじろぐ老害。

「さぁ、聞かせて下さいませ。貴方の慎重な意見を皆で共有することに致しましょう」

「っ……」

こうなると、他の貴族達は彼を見捨ててシャドーレ側につく。

「私は公爵夫人に同意致します。この法律に関しては、もう話し合う余地はないかと」

「はい。私もそう思います」

「急ぎ改正案を纏め、成立させましょう」

古い貴族達がそう言うのをヒカル王は内心面白がって聞いていた。

(やはり、シャドーレは政治の世界にも必要な人間だな)

レイヴンズクロフト公爵夫人ことシャドーレは今や国会になくてはならない存在となっていた。高い身分と実力を兼ね備え、国民からも慕われている。貴族達はこの女性の国政への参加を快く受け入れているわけではないが、敵に回すことだけはしたくないと思っている。

(そういえば、そろそろ使い魔が戻ってくる頃だが、国境線は今どんな状況なのだろう)

ヒカル王は砂漠のドラゴンの出現とその動向を気にしつつ、出来ればシャドーレを現地に行かせたくないと思っていた。

しかし、相手はまだまだ謎に満ちたモンスター。なぜ今になって復活を遂げたのか、なぜ前回のようにすぐに攻め込んでこないのか、分からないことばかりである。

(『クロス』の報告次第では、流転の國に二通目の書状を送る必要があるし、シャドーレにも…)

ヒカル王は大事に至らないことを願っているが、シャドーレを派遣するだけでなく、流転の國の力を借りなくてはならない時が刻一刻と迫っていた。

桜色の都の東の国境を越えると流転の國。

西の国境を越えると砂漠が広がっています。

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