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流転の國 vol.8 〜桜色の都の救世主〜  作者: 川口冬至夜


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㉝新しい情報

「…そうでしたか。マヤリィ様に報告することが出来たとのことで安心しましたよ。此度の役目、ご苦労様でした」

「はっ。有り難きお言葉にございますわ、陛下」

帰国したシャドーレはすぐにヒカル王の元へ参上し、流転の國での出来事を報告した。

「それにしても、実戦訓練とは…。我が国とは比較にならないほどレベルの高い戦いだったのでしょうね」

「はい。一人は西の国境線まで来て下さったラピスラズリ様、もう一人は新しい配下だとマヤリィ様はおっしゃっていましたわ」

「新しい配下、ですか…。それは少々気になりますね。どんな方だったのでしょう?」

一国を統べる主でありながら、ヒカル王は今もシャドーレに対しては丁寧な言葉で接する。

「ラピスラズリ様とさほど体格は変わりませんでしたが、あの方は少年…いえ、少女だったかもしれません。『流転の羅針盤』というマジックアイテムを持ち、魔術書を自在に操っていらっしゃいましたの」

『流転の羅針盤』は元々ミノリが持っていたマジックアイテムである。それに気付いたシャドーレはとても驚いた。

「…確か『流転』と名の付くマジックアイテムは貴重な物でしたね?それをマヤリィ様は新しい配下に使わせていたということですか?」

「はい。魔力値は相当なものでしたわ。…恐らく、ラピスラズリ様よりも実力は上かと」

遠くから見学していたので顔はよく見えなかったが、魔術の威力は凄まじかった。

「貴女がそこまで言うなら、その魔術師はマヤリィ様に認められて『流転の羅針盤』を賜ったのでしょうね。…にしても、少女ですか」

「はい。ブラウンの短髪に白いスーツ姿でした。一見すると少年のようですが、立ち居振る舞いなどを見ていると少女だったのではないかと…。マヤリィ様は『タンザナイト』というお名前だと教えて下さいました」

『タンザナイト』。名前を聞いても男か女か分からない。しかし、ヒカルはその魔術師に興味を持つ。

「そうですか…。ぜひ一度会ってみたいものですね。こちらが少し落ち着いたら、マヤリィ様に書状をお送りしましょう」

ヒカルはすぐにでも流転の國に連絡したいと思ったが、西の国境線に関する政策はまだ終わっていない。

「『流転』の魔術具を持つタンザナイト殿…。しっかり覚えておきますよ、シャドーレ」

「はっ。ぜひとも我が国にお招きしたいものですわね」

シャドーレはそう言って微笑む。


実戦訓練という決して長くはない時間、審判席という少し離れた場所から、シャドーレは『タンザナイト』という一人の魔術師を見ていた。

マヤリィから聞いたのは名前だけで、その他の情報は全てシャドーレが見て感じて記憶したものである。

少年と見紛う容姿、使っているマジックアイテム、そして高い魔力値…。

帰国後、シャドーレから報告を受けたヒカル王はその魔術師に興味を持ち、情報を受け取った。シャドーレを派遣したのは、流転の國内部の視察も兼ねてのことだったのだ。


この日シャドーレが新しく見つけて持ち帰った情報は『タンザナイト』のことだったが、これがもし流転の國の最高戦力である『ルーリ』に関することだったら…。

たとえ友好国である桜色の都とはいえ、『流転の國のNo.2』の存在を知られたくないというマヤリィの思惑も分からなくはない。


流転の國の詳細なデータ。

桜色の都としては気になるところだが、その全容が解明出来る日は来ないだろう。

実戦訓練を少し見ていただけですが、シャドーレは気になる魔術師の容姿、使用している魔術具、さらには魔力値まで測っていました。

そして、それらの情報はヒカル王に報告され、現在流転の國に存在する『魔術師(せんりょく)』として記憶されることになりました。

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