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流転の國 vol.8 〜桜色の都の救世主〜  作者: 川口冬至夜


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33/62

㉜女王の嘘。そして任務完了

ルーリ、ごめんね。

これから貴女を騙すわ。

「マヤリィ様…?私は一体…何をしていたのでしょうか…?」

『意識喪失』魔術が解けたルーリはマヤリィの部屋にいた。

「目が覚めたみたいね、ルーリ」

「はい。こちらは…マヤリィ様のお部屋にございますね…?」

柔らかいベッドの上にルーリは寝かされている。

「ええ、そうよ」

マヤリィは頷くと、悲しげな表情でルーリに言う。

「先に謝っておくわ、ルーリ。貴女が気を失っていたのは私のせいよ」

「畏れながら、マヤリィ様。何のことでございましょうか…?」

ルーリは首を傾げる。

「私の自傷行為に貴女を巻き込んでしまったの。その後すぐに処置したから今はもう大丈夫でしょうけれど、本当に悪いことをしたわ」

マヤリィはそう言うが、ルーリは何も覚えていない。

「マヤリィ様、どうか私などに謝らないで下さいませ。貴女様は…ご無事なのですか?」

「ええ、私は大丈夫よ。ありがとう、ルーリ」

「はっ。勿体ないお言葉にございます、マヤリィ様。貴女様がご無事で何よりです」

そう言いながらもルーリの頭の中は忙しかった。

(なぜ私は何も覚えていないのだろう?マヤリィ様の自傷行為?いつどこでそんなことがあったんだ?そもそも、私は今日別の任務を命じられていたのではなかったか?)

『意識喪失』魔術の副作用で記憶が飛んでいるルーリ。次から次へと疑問は出てくるが、何一つ解けはしない。

「ルーリ、そんな顔をしないで頂戴。貴女は今日私を救ってくれたの。それだけで十分でしょう?」

マヤリィはそう言ってルーリにキスをする。

「今日はもう自由時間よ。…ねぇ、ルーリ?久しぶりに『夢魔変化』してくれないかしら?」

「マヤリィ様、それは…」

「私、今夜は美しいサキュバスに抱かれたい気分なの。今から第2会議室に行きましょう?」

甘く優しい声で誘われ、ルーリは今まで意識を失っていたことも忘れて頬を染める。

「第2会議室ですか…。久しぶりにございますね…!」

そこは会議室と名付けられているだけで中身は『夢魔の訓練所』とも言える一室である。

「ふふ、決まりね」

マヤリィはそう言ってルーリを抱き寄せた。

(ルーリ、ごめんなさい)

心の中でそっと謝りつつ。


その頃、訓練所ではジェイとシロマが任務を終えていた。

「シロマ、ご苦労だったね。ラピスとタンザナイトを部屋に帰したことだし、僕達も戻るとしようか」

「ご主人様への報告はよろしいのですか?」

「うん。報告は明日にするよう命じられているからね」

心配そうな顔をするシロマにジェイは優しく言う。

「大丈夫だよ、シロマ。君は立派に任務をこなした。それに、シャドーレも喜んでくれたみたいだし」

マヤリィの代理としてシャドーレに挨拶し、彼女を桜色の都に『長距離転移』で帰国させたジェイ。それを見たシロマは(やはりジェイ様はご主人様の側近に相応しい御方なのね…)と感服していた。

「…でも、ラピスとタンザナイトはシャドーレが見ていたことを知らないし、シャドーレの方も二人に近付こうとはしなかった。つまり、今回の一件について知っているのはシロマと僕、そしてマヤリィ様だけ。…僕が何を言いたいか分かるよね?」

さすがはマヤリィの側近というべきか、僅かに語調を強めただけでシロマの身体は硬直する。

「はっ。此度の一件に関しては決して口外致しません。たとえルーリ様に何かを訊ねられたとしても、うまく誤魔化してみせます」

「うん。よろしく頼むよ。…でも、もしうまく誤魔化せなかったらその時は…」

「その時は…?」

シロマは怯えた顔をするが、

「マヤリィ様がルーリの記憶を『消去』するから、過度な心配は要らないよ」

「は、はい…」

記憶の『消去』は禁術。それを簡単に口にするジェイに、別の意味で恐れ慄くシロマ。

(最高権力者代理はルーリ様だけど…本当に恐ろしいのはジェイ様かもしれない…)

ジェイはシロマを怖がらせるつもりはなかったのだが、彼女の方はすっかり小さくなっている。

「…あ、戻ろうと言っておきながら話が長くなっちゃったね。シロマ、改めてご苦労様。突然の任務にもかかわらず完璧に遂行してくれたことはきちんとマヤリィ様に報告しておくよ」

「はっ!有り難きお言葉にございます、ジェイ様。ご主人様のお役に立てましたならこれ以上の喜びはございません」

シロマはそう言って深く頭を下げる。

斯くして、流転の國の『国家機密』という情報を守る任務は完了した。


それにしても、マヤリィ様。

なぜここまでして『ルーリ』の存在を隠そうとしているんですか?

…その理由は誰も知らない。

マヤリィは第一作にて『クロス』が直接流転の國にやって来た時も、ルーリを玉座の間に待機させ、決して外へ出すことはしませんでした。

前作でも大規模な記憶消去魔術を発動していました。


この様子だと『流転の國の最高戦力』である彼女を外に出す日は永遠に来ないかもしれません。

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