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流転の國 vol.8 〜桜色の都の救世主〜  作者: 川口冬至夜


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㉗ルーリVSナイト

僕の名前はタンザナイト。

本日は全力でルーリ様に挑ませて頂きます。

「おはようございます、ルーリ様。本日はよろしくお願い致します」

ルーリが訓練所に現れると、既にその場にはタンザナイトの姿があった。

服装は昨日と同じ白い背広に白い革靴。愛想がないわけではないが『流転の國のNo.2』相手にもポーカーフェイスである。

「おはよう、タンザナイト。待たせたな」

「いえ、僕が早く来ただけです。…ルーリ様は戦闘の際にも煌びやかなお洋服を着ていらっしゃるのですね」

ルーリは昨日とはまた違う艶やかなドレスを着て、ハイヒールを履いている。

「ああ。私の特殊能力は『魅惑』だからな」

「…成程、と言いたいところですが、貴女様は僕に魅惑魔法をかけたりなどされませんよね?そのお美しいお姿は、今からこちらにいらっしゃる女王様の為なのではございませんか?」

その指摘にはさすがのルーリも驚く。

「確かに、私が魅惑をおかけしたいのはマヤリィ様だけだが。なぜお前がそれを知っている?」

「そうですね…。女の勘、とでも言うべきでございましょうか」

「お前、女の自覚はあるんだな」

「はい。僕はマヤリィ様の娘にございます」

「でも、ラピスとは全然似てないな」

「はい。姉上とは製造過程がかなり異なるようです」

「製造過程…?」

「そこまでよ、ナイト。勝手に企業秘密を明かさないで頂戴。…たとえ相手がルーリであってもね」

「はっ。申し訳ございません、女王様」

その時、『透明化』していたマヤリィが姿を見せる。

「マヤリィ様…!」

「ごめんなさいね、二人とも。盗み聞きするつもりはなかったのだけれど、透明化を解くタイミングを逃してしまったの」

しかし、タンザナイトの方はマヤリィの存在に気付いていたらしい。

「おはようございます、女王様」

特に驚いた様子も見せず、真顔で挨拶する。

「おはよう、ナイト。準備は良さそうね?」

「はっ」

ルーリの方は突然現れたマヤリィを見て頬を染めながら、

「おはようございます、マヤリィ様。お身体のお具合はいかがでしょうか…?」

「大丈夫よ。昨日は心配かけて悪かったわね、ルーリ」

「とんでもございません、マヤリィ様…!」

(やはりルーリ様は女王様のことを愛していらっしゃるのですね)

マヤリィに接するルーリを見ながら、タンザナイトは冷静に分析をした。

「それにしても、マヤリィ様はいつからこちらへおいでだったのですか?」

ルーリが不思議そうに訊ねる。

「女王様が透明化を発動されたのは『空間転移』の前みたいですね」

「お前、気付いていたのか?」

「はい。畏れ多くも女王様の気配を感じ取ってしまいました」

タンザナイトは言う。ルーリと会話しつつ、しっかりと辺りの様子を窺っていたらしい。

「ふふ、さすがは私の娘ね」

「お褒めにあずかり光栄にございます、母上様」

マヤリィは微笑んでいるが、ナイトは相変わらず真顔でお辞儀する。

(こいつと一緒にいると調子が狂うな…)

ルーリは思った。流転の國にはそれぞれ個性的な者達が集まっているが、タンザナイトは今までに出逢ったことのないタイプである。飄々とした彼女はラピスと違って何を考えているのか全く分からないし、ルーリを前にしても臆することはない。常に冷静沈着で、透明化したマヤリィにもいち早く気付いていたことから、恐らく『魔力探知』も得意なのだろう。

(ラピスは私がモデルとのことだが…タンザナイトのモデルはもしやマヤリィ様ご自身…!?)

そう思ったルーリは改めて彼女の姿をよく見る。

柔らかそうなライトブラウンのショートヘア。色白の肌に小さな鼻、血色のない唇。くっきりとした二重瞼に長い睫毛、そして垂れ目…。

(そうか、目元がマヤリィ様に似ているんだ。背格好も同じくらいだし…)

ルーリがそんなことを考えていると、いつの間にかすぐ前にタンザナイトが立っていた。

「ルーリ様、何か考え事ですか?僕の方は準備が出来ておりますので、貴女様のタイミングでよろしくお願い致します」

「あ、ああ…。了解した」

『流転の國のNo.2』と敬われるルーリだが、怖いもの知らずの『マヤリィの娘』を前に、珍しく気圧されそうになっている。

「ルーリ。先に言っておくけれど、ナイトはラピスより強いわよ?以前の訓練を思い出して手加減するようなら貴女が負けるかもしれないわ」

以前の訓練。それはマヤリィが初めて造ったホムンクルスの魔力値と耐久性を測る為に行われ、最終的にルーリの雷魔術を直に食らったラピスは壊れてしまった。あの時のラピスは本当に可哀想だったのだが、今回は本気の実戦訓練らしい。

相手は書物の魔術師ミノリから引き継いだ『流転の羅針盤』を手にする魔術師タンザナイト。既に何冊もの魔術書を宙に浮かせ、往時のミノリを彷彿とさせる。

「畏まりました、マヤリィ様。私も全力を出させて頂きます」

ルーリはそう言うと、以前と同じようにまずは離れた所で『シールド』を張る。

「いつでもいいぞ、タンザナイト」

「はい。では、参ります」

次の瞬間、タンザナイトは魔法陣を展開。

「炎。水。風。そして雷。…複合魔術、発動せよ」

宙に浮く全ての魔術書を読み解き、魔力を解放した。

『流転の羅針盤』を引き継いだタンザナイト。

ラピスを上回るという彼女の魔力値はミノリに匹敵します。


「目元がマヤリィ様に似ているんだ…」

考え事している場合じゃありませんよ、ルーリ様。

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