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流転の國 vol.8 〜桜色の都の救世主〜  作者: 川口冬至夜


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⑳『悪魔変化』

忘れているかもしれないが、私は悪魔種。

…当然、覚悟は出来ているだろうな?

「私からの説明は以上だ。…クラヴィス、お前は自傷を始めた時のマヤリィ様を見ていたと言ったな?」

「はっ!さ、されど…私にはどうしたら良いか分からず…結果としてマヤリィ様を止めることが出来ませんでした…!申し訳ございません!!」

クラヴィスは深く頭を下げる。

さぞかし厳しく追及されるかと思ったら、

「…まぁ、その時の状況を聞く限り、お前が動けなかったのも無理はない。クラヴィスは皆よりも遅れて顕現したことだしな」

ルーリは特に怒った様子もなく言う。

「それに、ジェイから聞いた話では、マヤリィ様に対するご無礼を承知でナイフを取り上げたそうじゃないか。…第4会議室に転移した時、お前がマヤリィ様を押し倒していたと聞いたぞ」

「た、確かに…畏れ多くもマヤリィ様を押し倒す形になってしまいましたが、あの時は何としてでも自傷行為を止めなければと思いまして…!」

クラヴィスはそう言いながら頬を染める。

(不謹慎なことだが、マヤリィ様は本当にお美しかったな…)

マヤリィを押し倒した言い訳は出来るが、至近距離で見た彼女の美しさに見とれてしまったとはとても言えない。

「…クラヴィス。あの時お前が動いてくれなければマヤリィ様を止められなかったことはよく分かっている。…大変な状況で頑張ったな、クラヴィス。マヤリィ様の側近として礼を言わせてくれ」

ルーリはそう言ってクラヴィス相手に頭を下げる。

「勿体ないお言葉にございます、ルーリ様…!」

完全に予想外のことだったのでクラヴィスは思わず涙目になるが、次の言葉を聞いて硬直した。

「…それはそれとして、マヤリィ様を至近距離で拝見した感想を聞かせてもらおうか」

「えっ…」

口調は至って真面目だが、ルーリは笑っている。

思いがけない問いに戸惑いながら、それでもクラヴィスは真剣に答える。

「私は…マヤリィ様のお顔をあんなにもお近くで拝見したのは初めてにございます。非常事態にもかかわらず申し訳ないことですが…この上なくお美しい女性だと思いました…」

無意識に頬を紅潮させる彼を見て、ルーリは満足そうに頷く。

「完璧な回答だな。マヤリィ様のお美しさに魅了されない者など世界中のどこを探してもいないだろう。私もお前の感想に激しく同意するよ」

ルーリさん、何のテストしてるの…?

「ありがとうございます、ルーリ様。マヤリィ様に対してあのような行為を働いたばかりか、そのお美しさに見とれてしまったことに後ろめたさを感じておりましたが、貴女様のお言葉に救われましてございます」

結局、マヤリィを見た時の本音を全て話してしまったクラヴィス。質問の意味は謎だったものの、ルーリに褒められて安心する。

その間、シロマは黙って話を聞いていたが、彼女の視線が自分に向けられたのを見て姿勢を正した。

「っ……」

今の今まで微笑んでいたルーリは、別人かと思うほど恐ろしい形相に変わっている。

「…シロマ。さっきも言った通り、お前に言いたいことは山ほどある。当然、覚悟は出来ているだろうな?」

人間と変わらないいつもの姿が本来のルーリなのでつい忘れそうになるが、彼女は悪魔種。

既に震え上がっているシロマに構うことなく『悪魔変化』したルーリは、その恐ろしい姿でマヤリィの病について今一度説明を繰り返し、自傷行為のトリガーとなることの残酷さを彼女の心に刻み込むのだった。


「…あら、ルーリが『悪魔変化』したみたいね」

玉座の間にいるルーリの魔力を感じ取ったマヤリィは他人事のように言う。

「『夢魔変化』ならともかく…悪魔変化するなんてよほどのことね」

夢魔変化はサキュバス固有の特殊能力である『魅惑』を発動する際に行うものだが、悪魔変化を発動することは滅多にない。それこそ、相手を恐怖に陥れるなど、戦闘の際にしか使わない。…問題は、悪魔変化したルーリは本来の優しい心を忘れ、まさしく『悪魔種』と言うべき行動を取ってしまう可能性があることだ。

「姫、シロマは大丈夫でしょうか?」

ジェイが聞く。結果としてマヤリィの自傷の引き金となったシロマに対し、ルーリは物凄く怒っていたが、まさか悪魔変化をするとは思わなかった。

「いいえ。ルーリが本気で怒るなんて滅多にないことだけれど、悪魔変化した状態の彼女は危険よ。うっかり魔術を使ったりしたらシロマは助からないでしょうね」

「そんな冷静な顔で言わないで下さい、姫!」

「冷静なのは顔だけよ。これでも本気で心配しているわ」

しかし、精神的にも体力的にも疲れきったマヤリィにはルーリの元へ行く力など残っていない。

かと言って、ジェイを行かせたくない。

「…仕方ないわね」

マヤリィは呟くようにそう言うと『彼女』に向かって念話を送るのだった。

以前ルーリは実戦訓練を行った際に『悪魔変化』しています。

その際、対戦相手をピンヒールに仕込んだナイフで一突きするなど、普段からは考えられない残酷な一面を見せました。


ルーリさんの異名の数々。

・魅惑魔法を自在に操る『魅惑の死神』

・悪魔変化した時の残忍さを表す『天性の殺戮者』

・雷系統魔術の天才なので『閃光の大魔術師』

・名実ともに『流転の國のNo.2』

・『マヤリィの切り札』と呼ばれる流転の國の国家機密


シリーズを追うごとに多くなっていく…。

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