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流転の國 vol.8 〜桜色の都の救世主〜  作者: 川口冬至夜


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第123話 お待たせ致しました

その日、玉座は空席だった。

マヤリィが床に正座していたからだ。

「皆、昨日は本当にごめんなさい。流転の國の主でありながら、貴方達を守るべき時に國を離れていたことを申し訳なく思っています。…それに、彼女が暴走した原因を作ったのは私。…ルーリの面影を求めて人造人間を生み出し、あろうことかルーリに匹敵する魔力を与えてしまい、結果として大切な配下達を傷付け苦しませてしまった。こんな愚かな女王が許されていいはずはありません。…どうか、貴方達の命を危険に晒した私を…許さないで……」

そう言って深く頭を下げるマヤリィ。

皆が困って黙り込んでいると、同じ姿勢のまま話を続ける。

「誰か、私の跡を継いで流転の國の主になってもらえませんか?私には……もう貴方達を導いていく資格はありません」

「畏れながら、女王様。発言をお許し下さいませ」

そこで初めてタンザナイトが立ち上がった。

「皆様もお聞き下さい。あの人造人間を造ったのは女王様お一人ではございません。彼女の製造には僕も深くかかわっています。ですから、彼女の暴走に関しては僕にも責任があります」

「お前が…人造人間の製造に協力したと申しておるのか?」

「はい。彼女の設計図は僕も見ています。彼女がルーリ様に似せて造られることも最初から知っていました」

リッカの問いにタンザナイトは答える。

「今更ながら、それに気付いた時点で女王様を止めるべきでした。皆様、本当に申し訳ございません」

ナイトはそう言って頭を下げる。

「…ご主人様とナイト様のお話は分かりました。…しかし、あの人造人間が暴走するかどうかなんて、誰にも予測出来なかったのではありませんか?」

次に発言したのはシロマだった。

「最初に彼女が行方不明になったと気付いたのはナイト様。そしてすぐに探し出すよう指示されたのはジェイ様です。私ならば見過ごしてしまうような違和感をお二人は感じ取り、適切な対応を取られました。予測不可能な事態を前にして私達が危機意識を持つことが出来たのは、お二人の行動があってこそにございます。それに、私達を救って下さったのは他ならぬご主人様です。私は白魔術師でありながら、重体に陥ったナイト様とリッカ様を助けることが出来なかった。…今の私は最上位白魔術師と名乗るべきではないと思っております」

シロマは今もナイトが自分を庇って生死の境をさまよったことを気に病んでいる。

「…されど、シロマは私達を助ける為に全力を尽くしてくれたのであろう?それも、自分の魔力を使い果たすほどにな」

リッカは言う。

「真っ先に攻撃を受けて倒れた私が言うべきではないかもしれんが、敢えて言わせてくれ。…結果オーライにしないか?」

「えっ……」

リッカの口からそんな言葉が飛び出すとは思わず、クラヴィスは唖然とする。

が、すぐに頷いた。

「畏れながら、私はリッカ様の意見に賛成です。魔力を持たず、足手纏いにしかならなかった私が言うのも烏滸がましいですが…最終的に皆が助かったのですから、それだけで十分なのではないでしょうか?」

「クラヴィス…」

「クラヴィス様…」

シロマは皆を救えなかったことを悔やみ、ナイトは人造人間の製造にかかわったことを申し訳なく思い、すぐに賛成とは言えなかった。

「…………」

「…………」

玉座の間が静まり返ったその時、マヤリィは突然『宙色の耳飾り』を外して床に置いた。

「マヤリィ様…!?」

「お願いします。誰か、私の跡を継いで流転の國の主になって下さい」

マヤリィは無表情のまま頭を下げた。

「ご主人様!そんなことは誰にも出来ません!!」

すかさずシロマが異を唱える。

「マヤリィ様…!貴女様以外の誰がそれを手に出来るとおっしゃるのですか??」

クラヴィスも言う。

「畏れながら、マヤリィ様。流転の國の主様に相応しいのは貴女様ただお一人にございます!」

リッカも言う。

「女王様。どうか、今一度その耳飾りをお手に取って下さいませ」

タンザナイトは頭を下げる。

「…………」

マヤリィは何も言えず、俯くばかり。

「ご主人様、お願いします!これからも私達を導いて下さいませ!」

「マヤリィ様!どうかお願い致します!!」

皆の叫び声にも似た言葉が重なり、部屋中に響き渡っている。

「…皆、私は……」

やっとマヤリィが何か言いかけた時、突然玉座の間の扉が開いた。

「私が眠っている間に、何やら大変なことが起きたみたいだな。皆の声が部屋の外まで聞こえたぞ?」

ハイヒールの音を響かせながら、一人の女性が入ってくる。

「教えてくれ。今、お前達は何の話をしているんだ?」

一番近くにいたタンザナイトを立たせ、碧い瞳が説明を求める。

「貴女様は……!」

タンザナイトはその顔をはっきりと見た。

しかし、ナイトが次の言葉を発する直前、

「ルーリ!!」

そう言って素早く立ち上がり駆け寄ったのはマヤリィだった。

「ルーリ!!貴女なのね…!」

「はっ!お待たせして申し訳ございません、マヤリィ様。ルーリ、只今参上致しました」

ルーリはそう言うと、

「ところで、なぜ玉座が空席なのでしょうか?」

不思議そうな顔で聞く。

「こちらに入った時、玉座に貴女様のお姿が見えないものですから不思議に思っておりました。なぜ、床などにお座りになっていらしたのですか?」

「ルーリ…。貴女にも話しておかなければならないことがあるのだけれど、その前に聞かせて頂戴。…どこまで覚えているの?」

「畏れながら、マヤリィ様。流転の國に顕現してから貴女様がジェイと結婚なさるまでの全ての出来事を記憶しております」

「えっ……」

「私はジェイの『無効化』魔術によって目覚めました。つまり、貴女様の『忘却』魔術が全て無効化されたということになります」

ルーリはそこまで話すと、手を広げる。

「約束にございます、マヤリィ様。私が目覚めたら、また抱きしめて下さるとおっしゃいましたよね?」

その時、マヤリィの瞳から大粒の涙がこぼれた。

「ええ、覚えているわ。ルーリ、よく帰ってきてくれたわね…!」

マヤリィはルーリを抱きしめる。皆は何が何だか分からずにいるが、意識不明の重体と聞いていたルーリが元気な姿で現れたこと、そして先ほどまで憔悴しきった顔をしていたマヤリィが微笑んでいるのを見て、とにもかくにも安心する。

《これが…結果オーライということですか》

《ああ。よく分からんが、全て解決したようだな》

《はい。ルーリ様がご無事で何よりです》

マヤリィとルーリが抱き合い、皆が『念話』を交わして安心していると、ジェイが現れた。

「…姫。これから貴女に話したいことがあります。会議は一時中断して、皆には後ほどまた集まってもらうことにしましょう」

ジェイがそう言って目配せすると、配下達は次々に退出していった。

「…タンザナイト。君も席を外してくれ」

「はっ。畏まりました、ジェイ様」

一緒に話を聞くべきか迷っていたナイトはジェイの言葉を聞いて玉座の間を出た。

「ジェイ、今までどこにいたの?」

マヤリィは涙に濡れた顔を上げる。

今朝、時間になっても玉座の間に現れないので不思議に思ってはいたが、皆を待たせてまで呼び出そうという気にはなれなかった。

「すみません、姫。昨夜からずっとルーリを目覚めさせる方法を考えていました」

見れば、ジェイは随分と疲れた顔をしている。

「僕は今回の一件で思い知りました。ルーリなくして流転の國は成り立ちません。ルーリは貴女の心の拠り所になってくれる存在であり、僕にとっても皆にとっても大切な仲間です。『夢魔』の特性はとりあえず置いておきますが…」

ジェイはそう言うと、忘却魔術を無効化した経緯について説明を始めた。

当人達とタンザナイトしか知らないことですが、マヤリィの恋人が二人いたことは『流転の國シリーズ』公式の事実です。


しかし、マヤリィはジェイの一途な想いに応え、彼と結婚することを宣言しました。

一方、マヤリィを愛しながらも浮気を繰り返していたルーリは自らの行いを悔やむことになりました。


苦しむルーリを見かねたマヤリィがやむを得ず忘却魔術を発動したことはジェイも知っていますが、それを無効化してでもルーリを目覚めさせる必要があると思いました。


こうして全ての記憶を保ったまま目覚めたルーリが今何を思っているのか…。

次回、ジェイの説明の後で語られます。

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