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流転の國 vol.8 〜桜色の都の救世主〜  作者: 川口冬至夜


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第113話 形代

「次はこれを着てみて頂戴」

「はっ。畏まりました、ご主人様」

ルルーは頭を下げると、マヤリィが差し出した水色のロングドレスに着替えた。

「いかがでございましょうか?」

「ふふ、とても綺麗よ。靴はどれが良いかしら…」

「畏れながら、ご主人様。こちらのハイヒールを履かせて頂けますでしょうか?」

ルルーは沢山の靴の中から一足を取り出した。

「ええ。履いてご覧なさい」

「ありがとうございます」

衣装部屋では、その時その人に必要な物や探している物、欲しい物などが必ず見つかると言われている。

ルルーが手に取ったハイヒールは彼女の足にぴったりだった。

「素敵ね。ドレスにもよく合っているわ」

「勿体ないお言葉にございます、ご主人様」

そう言って跪こうとするのを制して、マヤリィはルルーを抱きしめる。

「ご主人様…?いかがなさいましたか?」

「少しだけこうしていて頂戴。貴女がいなくて寂しいのよ、ルーリ」

「…?畏まりました、ご主人様」

ルルーは不思議そうな顔で返事をした。

(『ルーリ』って誰かしら?私の名前は『ルルー』よね…?)

しかし、マヤリィが本当に寂しそうなので訊ねるのも憚られる。

「ルーリ、お願いがあるの」

「はっ。何でございましょうか?ご主人様」

もしかしたら自分の愛称なのかもしれないと思いつつ、ルルーは答える。

「私のこと、名前で呼んでくれるかしら?」

「はっ。勿論にございます。…マヤリィ様」

「ふふ、それでいいのよ」

マヤリィはルーリの声に名前を呼ばれて安心する。

「ルーリ、これから訓練所に行きましょうか。誰かいるかもしれないわ」

「はっ。畏まりました、マヤリィ様。それでは『空間転移』を発動致します」

ルルーはそう言うと、マヤリィを連れて一瞬で訓練所に転移した。


「シロマ、リッカ、来ていたのね」

「ご主人様…!」

訓練所には二人の姿があった。

「お会い出来て嬉しいです。ルルー様もご一緒だったのですね」

シロマはそう言ってルルーを見上げる。

「はい。只今、衣装部屋より空間転移して参りました。お二人は魔術訓練をなさっているのですか?」

(見た目はルーリなのに、声もルーリなのに、この喋り方…。いまだに慣れない…)

リッカはそう思いながら頷く。

「ああ。今日は高難度の魔術を発動している。シロマがいる時であれば安心だからな」

「はい。リッカさんが自爆なさっても私がいれば何とかなりますので」

「そ、そうなのですか…?リッカ様はとても恐ろしい魔術をお使いになられるのですね…」

ルルーは怖くなったらしく、マヤリィの傍を離れない。

「大丈夫ですよ、ルルー様。それに、貴女様だって強大な魔力を持っていらっしゃるでしょう?」

「はい…。マヤリィ様から魔術具も賜りましたが、まだ自信がなくて…」

(こんな感じの頼りない人造人間が前にもいた気がする…)

シロマは一瞬ラピスを思い出したが、すぐに忘れてルルーに微笑みかける。

「では、今日は見学なさってはいかがですか?リッカさんの氷系統魔術はとても美しいですよ」

「はい。ありがとうございます、シロマ様」

そう言ってルルーも微笑みを見せる。

どこからどう見てもルーリである。

《シロマ…教えて欲しい。何ゆえマヤリィ様はルーリに瓜二つの人造人間を造られたのだ?》

リッカは困惑しきった様子でシロマに『念話』を送る。

《リッカさん…。私も詳しくは存じ上げませんが、ご主人様は心細いのではないかと…》

いつも傍にいた側近がいないとなれば、ご主人様の心が不安定になるのも無理はないとシロマは考える。

《…。確かにそうかもしれんな。ルーリはまだ目覚めないのか?》

《はい、恐らくは。…私達はお部屋に行くことも出来ないようですね》

《ああ。よほど容態が悪いのであろうな。…だからと言ってルーリの模倣体を造るなんて…。マヤリィ様は色々な意味で恐ろしい御方だな》

二人が念話で会話している間に、マヤリィはルルーを連れて移動していた。

「私達は離れた所から見ていましょうね、ルルー」

「はっ。畏まりました、マヤリィ様」

「怖くなったら『シールド』を張るから心配しなくて大丈夫よ」

「はっ。お優しいお取り計らいに感謝致します、マヤリィ様」

皆がいる所では『ルルー』と呼び、ホムンクルスとして扱うマヤリィ。

しかし、皆が部屋に戻って二人きりになると『ルーリ』呼びになってしまい、距離感も変わる。

「ルーリ、私達もそろそろ戻りましょうか」

「はっ。畏まりました、マヤリィ様」

ルルーはホムンクルスなので睡眠を必要としないが、人間種(マヤリィ)の生活リズムに合わせて行動している。

「畏れながら、マヤリィ様」

マヤリィの空間転移によって部屋に戻ってきたルルーは改まって聞く。

「私の名前は…『ルルー』で合っているでしょうか…?」

「ええ、貴女の名前はルルーよ。『ルーリ』というのは、愛称…みたいなものかしら」

マヤリィはそう言ってルルーを抱きしめる。

「けれど、その愛称で呼んでいいのは私だけなの。分かったわね?」

「はっ。畏まりました、マヤリィ様。とても嬉しく思います」

ルルーは謎の呼び名が愛称だと分かって納得し、嬉しそうに微笑んだ。

女神のようなその微笑みは、やはりルーリにしか見えない。

「ルーリ、明日はまた違うドレスを探しに行きましょうね」

マヤリィはルルーのウェーブヘアを撫でると、部屋を後にした。


「姫…!おかえりなさい。今、念話を送ろうかと思っていたんですよ」

「ただいま、ジェイ。遅くなって悪かったわ」

マヤリィはそう言ってジェイにキスをする。

ここは、ジェイの部屋。

たとえジェイであっても女王マヤリィの部屋に直接転移することは許されないので、最近は専らマヤリィがジェイの部屋に帰ってくる。

「それで…何か参考になりそうな魔術書は見つかったかしら?」

「いえ、僕の方はまだ…。今の所、タンザナイトからも連絡はありません」

「…そうよね。簡単に見つかるわけないわ。でも……」

マヤリィは自分に言い聞かせるように呟く。

「ノーリスクで禁術から目覚めさせる方法が必ずどこかにあるはずよ…」

最近の流転の國


ジェイとタンザナイト(ルーリに何が起きたか知っている)

→禁術の副作用に関する魔術書を探している。

他の配下達(ルーリに何が起きたか知らない)

→ルーリに瓜二つの新しいホムンクルスに戸惑いつつ、仲間として受け入れている。


ルーリ(忘却魔術の副作用で昏睡状態)

→面会謝絶。皆から意識不明の重体だと思われている。

ルルー(新しいホムンクルス)

→ルーリの形代。


マヤリィ様(ルーリに忘却魔術をかけて眠らせた人)

→ルルーを『ルーリ』と呼んで毎日衣装部屋に連れて行く。ジェイとの関係は変わりなく、夜は彼の部屋に行く。

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