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流転の國 vol.8 〜桜色の都の救世主〜  作者: 川口冬至夜


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第112話 ルルー

次の日から『流転の國の休日』が始まった。

今朝になって、マヤリィが五日間の自由時間を言い渡したのだ。


「タンザナイト。私はこれから三体目のホムンクルスを造ろうと思うの。貴女も協力してくれるかしら?」

流転の國の休日一日目。

マヤリィは真っ先にタンザナイトの部屋を訪ねた。

「はっ。畏まりました、女王様。僕に出来ることであれば、何でもやらせて頂きます」

「ありがとう。貴女と私の力をもってすれば、きっと理想通りのホムンクルスが出来上がるわ」

斯くして『宙色の魔力』と『書物解析魔術』を駆使したホムンクルスの製造が始まった。

「まずは見た目から入りましょう。私の頭の中では既に出来上がっているから、メモして頂戴」

「はっ。畏まりました、女王様」

☆ホムンクルスの外見について(書記:タンザナイト)

・性別は女性

・整った顔立ち(女王様曰く『欧米系』の美女)

・白い肌、碧い眼、ブロンド

・ミディアムレングスのウェーブヘア

・長身(174cm)

・年齢は20代後半(29歳という設定)

・服装は華やかなドレスとハイヒール


「畏れながら、女王様。このホムンクルスにはモデルとなる人物がいますよね?」

メモを取り終えたタンザナイトが訊ねる。

「ええ、その通りよ。よく分かったわね」

(誰だって分かりますよ)

と思いつつ、ナイトはペンを置いた。

「次は何を決めるのですか?」

「そうね…。一番重要な魔術適性を定めましょうか」

「はっ。畏まりました、女王様」

タンザナイトは再びペンを取る。


☆ホムンクルスの魔術適性(書記:タンザナイト)

・雷系統魔術

・宝物庫にある『流転』の魔術具を持たせる予定

・魔力とは別に強い膂力を持つ


「畏れながら、女王様。このホムンクルスは誰かに似ているような気がします」

メモを取り終えたタンザナイトが訊ねる。

「あら、気付いたの?さすがはナイトね」

(女王様、それ本気で言ってます?)

と思いつつ、ナイトはペンを置いた。

「次は何を決めるのですか?」

「そうね…。ここから先は企業秘密よ」

「はっ。畏まりました、女王様」

「だから、メモは取らないで頂戴。他言無用よ」

こうしてマヤリィの理想のホムンクルスが出来上がった。…と思う。


「さぁ、目覚めなさい。そして、私に絶対の忠誠を誓い、流転の國の為に働くのよ」

その直後、ホムンクルスは目を開けた。

「マヤリィ様にございますか…?」

「ええ、そうよ。全て、分かっているようね」

「はっ。貴女様こそが流転の國の女王マヤリィ様。そして、私のご主人様にございます」

『彼女』は跪いてマヤリィを見上げると、期待に満ちた表情で問う。

「畏れながら、ご主人様。私の名前を教えて頂けませんか?」

その声は艶めくハスキーボイスだ。

「貴女の名前はルルー。雷系統魔術を専門とする魔術師よ」

「ありがとうございます、ご主人様。私ルルーは貴女様の御為、命を賭して働かせて頂く所存です」

「ええ、期待しているわよ」

「はっ」

最初のやりとりを終えると、マヤリィは彼女の容姿を確かめはじめた。

金髪碧眼。色白の肌に整った顔立ち。身長はかなり高い。

桜色のロングドレスを身に纏い、同じ色のハイヒールを履いている。

(どう見てもルーリ様だ…)

覚悟はしていたが、いざルーリに瓜二つのホムンクルスが誕生すると、さすがのタンザナイトも戸惑ってしまう。

しかし、マヤリィに挨拶を促され、いつもの口上を述べる。

「僕は流転の國の女王マヤリィ様の配下にして『流転の羅針盤』を賜りし魔術師タンザナイト。適性は書物解析魔術にございます。魔術訓練の際はご一緒させて下さい。よろしくお願いします」

タンザナイトがそう言ってお辞儀すると、ルルーも頭を下げた。

「はっ。よろしくお願い致します、タンザナイト様。私はご主人様より雷系統魔術の適性を与えられしホムンクルス、ルルーと申します。どうぞよろしくお願い申し上げます」

(なんだか…姉上にも似てるような…)

ルーリとラピスラズリを足して二で割ったようなルルーを前にして、タンザナイトが抱いた戸惑いの感情は続く。

マヤリィはそんなナイトの様子に構うことなく、ルルーに言う。

「貴女にはこのマジックアイテムを授けましょう」

そう言って指を鳴らすと、斧の形をした魔術具がマヤリィのアイテムボックスから出現した。

「これは『流転の斧』。かつて防御特化の魔術師が使っていたアイテムなのだけれど、雷系統の魔術具に改良したの。持ってご覧なさい」

「はっ」

とても重そうな斧だが、ルルーは軽々と持ち上げた。

「大丈夫そうね」

「はい。ありがとうございます、ご主人様。貴女様のお役に立つ為にも、魔術訓練に励んで参ります」

ルルーは『流転の斧』を持ったまま、深く頭を下げた。

その時、タンザナイトがマヤリィに『念話』で訊ねる。

《畏れながら、女王様。素朴な疑問なのですが、なぜ直接手渡さなかったのですか?》

《だって、重いんだもの。私の力では流転の斧を持ち上げられないのよ》

《そうなのですか…》

しかし、目の前のルルーは斧を持ったまま興味深そうに見ている。

(これが『強い膂力』ってことか…)

タンザナイトはルルーに慣れるまで時間がかかりそうだと思いながら、マヤリィの理想のホムンクルスが完成したことに安堵するのだった。


「ジェイ、喜んで頂戴。新しいホムンクルスが完成したの」

マヤリィはジェイの部屋に入るなり、嬉しそうに報告した。

「それは良かったです、姫。名前はなんて言うんですか?」

「ルルーよ。雷系統魔術の適性を与えて、改良した『流転の斧』を持たせたわ」

それを聞いたジェイは色々と察した。

「姫、もしかして彼女は…欧米系の美女ですか?」

「ええ、その通りよ。よく分かったわね」

(それくらい予想出来ますよ…)

と思いつつ、ジェイはさらなる予測を立てた。

「服装はロングドレスにハイヒールでしょうか?髪型は…ブロンドのミディアムヘアとか?」

「どうしてそこまで分かるの?さすがは私の旦那様♪」

(姫、自覚してないのかな?)

と思いつつ、ジェイはマヤリィが嬉しそうな顔をしているのを見て、自分も嬉しくなる。

一方で、懸念事項もある。

「…ところで、ルルーの魔術適性は雷系統だけなんですか?」

「ええ、そうよ。強力な雷系統魔術師に育ってくれると良いのだけれど」

どうやら『魅惑』という項目は完全に外されたらしい。ジェイは少し安心する。

「それと、年齢設定は29歳。ナイトが自分と同じホムンクルスだってことには気付いてなさそうよ。まぁ、敢えて伝える必要はないかもしれないわね」

「はい。タンザナイトは中身も普通の人間と変わりないですから」

二人が皆の前で誓いを立てた後、タンザナイトは時々ジェイのことを父上様と呼ぶようになった。

「彼女は…僕の娘でもあるんですよね」

「ええ。貴方と私の可愛い一人娘よ」

マヤリィはそう言って微笑むと、

「後で第3会議室に行きましょうか。これからナイトに念話を送るわ」

甘えた声でジェイを誘った。


第3会議室。

そこは『宙色の魔力』を使わなければ入れない特別な部屋だ。

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