第109話 断髪の後で
「ルーリ…綺麗だったな…」
一方、自分の部屋に帰ってきたリッカは先ほどのルーリとの情事を思い出していた。
第7会議室でリッカの髪を切った後『夢魔変化』したルーリは、普段とは違う蠱惑的な美しさでリッカを魅了した。
「ルーリ……今、私の身体は貴女だけのものだ。だが…」
リッカは赤面しながら言った。
「初めてだから…優しくして欲しい…」
桜色の都の王室で純粋培養されたリッカは未経験だった。
一応、降嫁することは決まっていたが、挨拶をした程度だ。
この歳で未経験なんて…とリッカは恥ずかしくなるが、
「分かった。目一杯優しくするから心配するな」
ルーリは真面目な顔で答えた。
「可愛いリッカ。お前がこれから感じるのは快感だけだよ」
目の前の美女は魅惑的なハスキーボイスでリッカを虜にする。
「ありがとう、ルーリ。…私はこういうことを経験しないで一生を終えると思っていたが、貴女のように美しい女性に抱かれるなんて…本当に幸せだ」
ルーリに身体をあずけ、リッカは続きを待つ。
「では…お前の全てを見せてもらおう」
「あ、明かりは消してくれないのか?」
「なぜか第2会議室は明かりが消えないようになっているんだ。…本当だぞ?」
一応リッカは部屋を見回すが、明かりを調節するスイッチはどこにもない。
「なかなか気が利いてるよな。だって、消したら見えないし。ココとかアソコとかさ」
「~~~!!!」
何も言えず真っ赤になるリッカ。
彼女の下着を脱がし始めるルーリ。
「大丈夫。力を抜いて」
ルーリは優しい声でささやきかける。
「本当に可愛いな…リッカ…」
ルーリはそう言いながら彼女の大切なトコロを愛撫する。
(気持ちいい…。まさか私がこんな経験をするなんて…)
リッカはまだ信じられなかった。
まるで夢を見ているようだった。
レイン離宮で過ごしていた頃は毎日変わり映えのない日々を送っていたのに、流転の國に来てからは次々と衝撃的な出来事に出会っている。
(やはり…貴女はサキュバスなのか…)
これまでリッカが見てきたルーリは強大な雷系統魔術師だが、今のルーリは『夢魔変化』しているのでサキュバスに相応しい姿をしている。胸元と背中が大きく開いた真っ赤なドレスを着て、真っ赤な唇を押し当ててくる。
(なんて美しいんだ…)
リッカはルーリから目が離せない。
豊満な胸の谷間と引き締まった綺麗な背中、輝く金色の髪に碧い瞳、きめ細やかな白い肌を持つ絶世の美女。
甘やかな魅惑の風に包まれ、リッカは夢魔に抱かれた。
「今日の出来事は…現実か?」
回想を終えたリッカは、とりあえず自室の鏡の前に立った。
(本当に…短くなったのだな…)
一体何十センチ切っただろうか。
腰より長かった髪は跡形もなく、桜色の都の王女の面影も消え去った。
代わりに、ふわふわとした可愛らしいショートヘアの女性が映っている。
(頭が軽い…)
短くなった髪を触っていると、自然と笑みがこぼれた。
(勇気を出して切って良かった…)
『お前に似合うように切る』と言ったルーリの言葉は本当だった。
(もしかしたら、私は長い髪よりも…こっちの方が似合うかもしれん)
リッカは今の自分の姿に満足する。
(今度は…もっと短いのに挑戦してみようかな)
完全治癒魔術を施され、髪を短く切り、初めての情事を経験し、リッカの世界は大きく変わった。
(…さて、喜んでばかりもいられぬ。私を過去の呪縛から解き放って下さったマヤリィ様に恩返しする為にも、流転の國の戦力にならなければ)
そこで、リッカは以前ジェイが書庫で見つけてきてくれた氷系統魔術の本を読み始めた。
…時折、短い髪を指先で弄びながら。
氷系統魔術師リッカは『シャドーレに勝るとも劣らぬ魔力の持ち主』とジェイに評されています。
そんな彼女が本気で魔術書を開いたら…。
流転の國の戦力増強になることは間違いありません。
でも、タンザナイトとは比べないでね。




