第94話 改めまして
「畏れながら、マヤリィ様。こののち、私に敬称は不要にございます。どうかリッカとお呼び下さいませ」
正式に配下となったリッカは、マヤリィに絶対を忠誠を誓った後でそう言った。
「分かったわ、リッカ。これからはそう呼ぶわね」
「はっ。有り難きお言葉にございます、マヤリィ様」
既に主従関係が出来上がっている。
マヤリィはリッカの返事に頷くと、
「皆、喜んで頂戴。これからリッカは流転の國の仲間よ。…というわけで、改めて自己紹介を頼むわ」
ルーリに目配せする。
「はっ。畏まりました、マヤリィ様。では、僭越ながら私から始めさせて頂きます」
そう言ってルーリは挨拶する。
「改めまして、ルーリにございます。雷系統魔術の適性を持ち、与えられたマジックアイテムの名は『流転の閃光』。我が國で唯一、悪魔種に属し『魅惑』の特殊能力を持っております。これからもリッカ様と共に過ごせますこと、大変嬉しく思います」
そして、ジェイを見る。
「マヤリィ様の側近を務めるジェイです。『流転の指環』を授かりし風系統魔術師でございます。此度は我が主の願いをお聞き届け下さり、感謝申し上げます」
そして、シロマを見る。
「魔術訓練の場に同席させて頂きました、シロマ・ウィーグラーです。畏れ多くもご主人様より最上位と認められし白魔術師にございます。こののちも、回復魔法が必要な折にはいつでもお申し付け下さいませ」
そして、クラヴィスを見る。
「改めまして、クラヴィスと申します。マヤリィ様直々に『流転のリボルバー』という魔術具を賜りました。これからもよろしくお願い致します」
そして、タンザナイトを見る。
「僕は書物解析魔術の適性を与えられし魔術師タンザナイト。流転の國最年少にして皆様よりも格下の存在です。引き続き魔術訓練の際はご一緒させて下さい。よろしくお願いします」
そして、リッカに戻る。
「私は桜色の都出身の氷系統魔術師リッカ。マヤリィ様のお取り計らいにより、こののちも流転の國で過ごさせて頂くことになりました。よろしければ、皆様もリッカと呼んで下さい。敬語も不要です。どうぞよろしくお願い申し上げます」
配下達に対しては普段から敬語を使わないリッカだが、緊張した様子で頭を下げる。
そんなリッカを見て真っ先に応えたのは、やはり彼女だ。
「了解した。では、私のこともルーリと呼んでくれ。…いいよね、リッカ?」
「わ、分かった…。ルーリ、これからもよろしく頼む」
全ては、桜色の都を訪問したルーリがリッカと仲良くなったことから始まった。
「リッカ様、僕はこののちも敬語を使いますがよろしいですか?…僕のことは何とでもお呼び下さい」
「わ、分かった…。タンザナイト、これからもよろしく頼む」
リッカが流転の國に留まる決定打となったのは、ナイトが提示した交換条件だ。
「…では、最後に私の……」
マヤリィがそう言いかけた時、玉座の間の緩んだ空気は一変し、配下達は姿勢を正す。
「皆、そんなに緊張しないで頂戴。最後に私の自己紹介を、と思ったのだけれど、聞き飽きているでしょうから省略させてもらうわね。…って言いたかったの」
配下達は拍子抜けするが、可愛らしい微笑みを浮かべる女王様を前にして異を唱えられる者はいない。
(マヤリィ様…可愛い……)
内心そう思って見とれているのはクラヴィスである。
(後で『魅惑』をお許し下さるだろうか…?)
内心そう思って見とれているのはルーリである。
が、マヤリィは熱い視線に構うことなく、
「そういうわけだから、今日は解散よ。この後は自由時間にして頂戴」
「はっ!!」
斯くして、リッカは正式に流転の國に迎えられた。
マヤリィ様の『配下にしたい発言』から一ヶ月。
ルーリとタンザナイトの尽力もあり、リッカを流転の國の仲間にする計画は成功しました。
桜色の都出身者が配下に加わったのは『vol.1』以来のことです。




