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追及2

ルーは、叩きつけるように言った。

「……答えろ、ドゥダメル。貴様の背後にいるのは誰だ」


 薄暗い聖堂奥に、風が流れ込む。窓辺に立つドゥダメルの銀髪が淡く光を帯びた。奴の目には、嘲笑とも哀惜ともつかぬ色が浮かんでいる。


「知りたいか、ルシファー・ノクス。お前の探している“その方”は、とうにお前の傍らにあった」


 ルーの眉がわずかに動く。リアンとミュリエルが構えたまま、息を呑む音が聞こえた。

「……どういう意味だ」


「言葉の通りだ。お前の“よく知るもの”——だが、今はまだ語る時ではない」


 その瞬間、ドゥダメルの背から黒い羽が咲いた。窓の外、夜の闇が大きくうねる。

「待てッ!」

 リアンが叫ぶが、すでに遅い。ドゥダメルは微笑を残して飛び去っていった。


 しばし、三人は言葉を失っていた。月光が差し込む。


 ミュリエルが息を吐き、「逃げられた……」と呟く。


 リアンが苦々しく拳を握る。「“よく知るもの”って……?」


 ルーは黙ったまま窓辺に歩み寄り、冷たい風に髪をなびかせた。


 ルーは目を閉じ、静かに首を振る。

「すべては、まだ闇の中だ。証拠も痕跡も、きれいに消されている」


 その声音には、いつもの冷徹さではなく、どこか疲労と苦悩がにじんでいた。リアンはその背を見つめながら、何か言おうとして言葉を飲み込む。


 外では、鐘が鳴っていた。遠くで夜警の灯が揺れ、聖都の静寂が戻ってくる。


 ミュリエルが肩を落とし、「お前の言う通り……全部闇に葬られたってわけか…」と呟く。

 ルーは振り返り、わずかに笑った。


「いや——しかし、すべてではない。奴を使役する者の名だけは、覚えがある」


 その目に宿る光は、かすかに紅を帯びる。

「“アザゼル”——冥王軍の裏切り者だ」


  ドゥダメルが残した闇の余韻だけが、なお三人の胸を締めつけていた。

 そしてルーは、低く呟いた。


「次に会うときは、容赦しない——ドゥダメル」

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