第2話『開拓者たちの幕開け』
これは、ゲームで築いた“城”と“仲間”をそのまま引き連れて、異世界に降り立った一人の男の物語――。
五感同期型VRMMORPG『エクリプス・オンライン』の最終夜。
玉座に座していたギルドマスターは、世界の終わりと共に新たな現実を迎える。
「ようこそお戻りになられました、我が主よ」
異世界で目覚めた彼の名は、“マグナス”。
深淵を呼ぶ魔王として、そしてかつて人間であった者として、
支配と守護、二つの選択肢の狭間で揺れる覇道が今、幕を開ける――。
城の演習場には、冷たい朝の空気が張り詰めていた。高い城壁に囲まれた広大な石畳の空間で、マグナスは静かに深呼吸する。
かつてゲームの中で慣れ親しんだこの場も、今や現実の一部として目の前に広がっている。微かな風が黒の魔導士ローブの裾を揺らし、魔王の象徴たる漆黒の霧がその背にたなびいた。
その赤く輝く双眸が、演習場の片隅に設置された厚い石板の標的へと鋭く据えられる。己の力が現実となった今、その威力を確かめる時が来たのだ。
「〈暗黒火球〉(ダークフレイム)!」
低く抑えた声で単語を詠唱すると同時に、マグナスの右手に握られた深淵の杖が妖しく赤黒い光を帯びた。瞬間、杖の先から漆黒の火球が迸り、唸りを上げて石板へと放たれる。
轟音――炸裂した闇の炎が石板を直撃し、爆発の衝撃波が周囲に砂塵を巻き起こした。煙が晴れると、標的であったはずの石板は中央に大穴を穿たれ、周囲には無数の亀裂が走っている。
マグナスは瞠目した。ゲーム内で幾度となく放ってきた下級攻撃魔法だというのに、その威力は想像以上だ。石の破片がぱらぱらと地に落ちる音さえ鮮明に聞こえる。
手に残る魔力の反動――僅かな腕への痺れさえ現実そのものだ。焦げた石の臭いが鼻をつき、熱風が頬を撫でていく。この世界では魔法の余波すらも五感で味わえるのだ。
「ほう…」
傍らで見守っていたゼルガドが、空洞の眼窩に紫の鬼火を揺らしながら感嘆の声を漏らす。「さすがは我が主。かつての偉大なる力、その片鱗を以てしてこの程度とは…」
マグナスは内心でたじろいだ。(い、今のは片鱗も何も、ただのテストなんだが……)
ゼルガドの言葉に困惑しつつも、確かな手応えにマグナスの胸中には高揚が芽生えていた。確かに、ただの下級魔法でこれほどの威力。ゲーム時代以上の現実感と破壊力に、己が深淵の魔術師として君臨する実感がいや増す。 続いてマグナスは静かに目を閉じ、内なる魔力の流れを全身に巡らせた。
「〈強化〉(マイト)〉」
短く唱えると同時に、全身に漆黒のオーラが纏わりつく。瞬間、血液が沸き立つような力の奔流が四肢に漲った。試すように地面を強く蹴ると、その身体は音もなく宙へと跳躍する。
高さ五メートルはあろうかという演習場の見張り台にまで、一息で届いた。マグナス自身が最も驚いていた。強化魔法の効果により、身体能力が格段に向上している。
石造りの見張り台の縁に片手で掴まり、軽々と身を翻してその上に着地する。着地点からわずかに砂埃が舞った。
見下ろせば、ゼルガドが下方で静かに頷いているのが見える。ゲーム内ステータスで培った膂力と敏捷、それが現実に発揮されているのだ。
「ふむ、さしもの俊敏さよ。陛下のお力は健在のようですね」
ゼルガドの静かな称賛に、マグナスは胸中で安堵した。この世界で自身の肉体がデータ上の数値通りに動作する――それは絶大な強みとなる。 マグナスは見張り台からゆっくりと身を降ろし、再び演習場の中央へと歩み出た。次は浮遊魔法のテストだ。彼は杖を握り直すと、意識を集中させる。
「〈飛行〉(フライ)」
ふわり、と身体が地面から離れる。重力から解き放たれた感覚に一瞬、内臓がふわつくような違和感を覚
えたが、すぐに安定した飛行へと移行した。
マグナスはゆっくりと数メートルの高さまで上昇すると、足元に何もないまま宙に浮かんでいるという異様な状況を冷静に観察する。
周囲の景色がわずかに見下ろす形となり、いつもとは異なる視界が広がった。彼は慎重に身体を前へと傾け、意のままに空中を滑るように移動する。ぎこちなさはあるものの、確かな浮遊感と自由。
「これが…現実の空を飛ぶということか」
思わず零れた独白に、ゼルガドが誇らしげに頷いて見せた。マグナスはゆっくりと地上へ降り立つ。
地に足がつくと同時に、じわりと身体に疲労が滲むのを感じた。魔力の消費によるものか、それとも緊張からか。いずれにせよ、これほど多彩な力が現実となった以上、その使用感や負荷も真剣に把握せねばならないだろう。
「では…次は召喚魔法を試してみるか」
マグナスは独りごちるように呟くと、深淵の杖を両手で握りしめた。召喚――それは彼の真骨頂たる深淵召喚士としての究極の技。異形の存在をこの世に顕現させる禁忌の魔術だ。
ゲームでは幾度も操ってきた力だが、この現実で解き放つことには一瞬の逡巡があった。制御できなくなれば被害は計り知れない。しかし、己の力を把握するためには避けて通れぬ試練でもある。
マグナスは決意し、静かに眼を閉じた。周囲の空気が急激にひりつき、温度が下がっていくのを感じる。
「応えよ…我が呼びかけに」
低く重々しい声が演習場に響く。マグナスの口から紡がれる言葉はもはやこの世界の言語ではない。漆黒の霧が杖の先を中心に渦を巻き始め、魔法陣の紋様が足元に浮かび上がった。
「闇の最深に眠りし嗤う獣よ――契約の名の下に今ここに来たれ」
長大な詠唱が重厚に紡がれていく度に、空気はますます震え、闇が濃さを増す。どこからか呻き声とも風鳴りともつかぬ音が響き渡り、演習場の陰影が歪んだ。
「血に飢えし影の従者よ、我が名に従いその爪牙を示せ…〈深淵召喚〉(アビス・サモン)!」
最後に高らかに命じるや、魔法陣が赤黒い光を放ち爆ぜた。暗闇のゲートが裂けるように開き、そこから轟音と共に巨躯な影が這い出てくる。
現れたのは、漆黒の狼に酷似した魔獣だった。だがその眼は複数に割れ、尾は有刺鉄線のような棘で覆われている。涎のように闇の瘴気を滴らせながら、その獣は低く喉を鳴らした。
マグナスは冷や汗が伝うのを感じつつも、毅然と杖を構える。契約により召喚された魔獣は召喚主たる彼の支配下にあるはずだ。
「伏せよ」
短く命じる。すると、魔獣はぴたりと動きを止め、巨体を畏縮させるようにその場に伏した。獰猛な眷属でさえも、主の命に絶対服従する。
ゼルガドが歓喜に身を震わせる。「おお…深淵より異形を呼び出すとは! 御方の威光、まことに無尽蔵!」
マグナスは額の汗を拭った。今しがたの長大な詠唱は精神力を大きく消耗させる。胸の内で安堵が広がった。現実世界でも、自らの召喚術は有効だ。
彼は杖を一振りし、召喚した魔獣を元の異界へと送り返した。魔獣の巨体が闇に融け消えていく。
静寂――張り詰めていた空気が解け、朝の冷気が戻ってきた。
「ふぅ…」
マグナスは大きく息を吐き、ゼルガドと顔を見合わせる。「これで……ひと通り、試せたようだな」
ゼルガドが深々と一礼する。「まことに。陛下のお力、いずれも健在。それどころか、この現世において更なる実体を伴い増幅されているようにお見受けしました」
「ああ、実際に肌で感じる感覚はゲームの時とは段違いだ」
マグナスは自身の鼓動が高鳴っているのを感じていた。畏怖と興奮。虚構のデータだった力が、今や現実の全てを塗り替え得る現実の力となったのだ。
その責任と危険もまた、比類なきものとなったと言えよう。魔王として君臨する力を手にした以上、使い方を誤れば破滅を招く。だが同時に、守るべき者たちを守り抜く砦ともなり得るのだ。
マグナスは拳を握りしめた。胸には未知の世界への不安と、それを乗り越える使命感がせめぎ合っている。
「行こう、ゼルガド。皆が待っている」
彼はゼルガドに声を掛けると、演習場の出口へと歩み出した。己の力を確かめた今、いよいよ行動を開始すべき時が来たのだ。 玉座の間には、すでに四人の深淵の誓約者たちが静かに控えていた。マグナスは漆黒の玉座へと歩み寄り、ゆっくりと腰を下ろす。
天井高くそびえる広間には荘厳な静寂が漂い、燭台の炎が長い影を床に揺らめかせている。広間に跪く四つの人影――ルシエラ、ゼルガド、ドラガン、ヴィクター。それぞれが主たるマグナスの言葉を待ち望んでいた。
マグナスは一人ひとりに視線を巡らせる。彼らは皆、かつてゲーム内で自身が育て上げた忠実なNPCであり、今は自我と魂を持って目の前に跪く生ける僕だ。
現実となったこの世界で、彼らと共に歩む以上、次なる一手を示さねばならない。マグナスは玉座の背もたれに身を預け、深く息を吸った。
「皆の者…顔を上げよ」
静まり返った空間に、低くよく通る声が響く。四人は一斉に顔を上げ、恭順の眼差しをマグナスに向けた。
ルシエラの紫紺の瞳には揺るぎない忠誠が宿り、ゼルガドの骸骨の面には崇敬の笑みが浮かんでいる。ドラガンは鋭い竜の黄金瞳を輝かせ、ヴィクターは穏やかな微笑みを浮かべながら主を見つめていた。
「我らが新たに立つこの地で、生き残りを図り、そして力を蓄えねばならない」
マグナスはゆっくりと言葉を紡いだ。その声音には、玉座の主としての威厳が自然と宿っている。内心の緊張を押し殺し、王者然と振る舞わねばという決意が彼を支えていた。
「ルシエラ」
名を呼ばれ、副官が一歩前に膝行で進み出る。「ここに」
「汝はギルド副官として、まず城の守りをより一層磐石なものとせよ。周辺の魔物や侵入経路を洗い出し、領地の防衛線を構築するのだ。必要とあらば、周囲の開拓も進めよ」
「はっ! 御命令のままに、我が主よ」
ルシエラは頭を垂れ、応じた。その声には凜とした決意が漲っている。
「ゼルガド」
マグナスが次に名を呼ぶと、古びた法衣を纏った骸骨の大賢者が進み出た。「御前に」
「汝の知恵と魔導の技をもって、城の守護を強化せよ。古代図書館に蓄えた知識を総動員し、この異世界の理をも解析するのだ。魔法障壁の展開や、新たな術式の考案も任せたい」
「ははっ、朧月の闇に誓って」ゼルガドは胸に手を当て恭しく礼を取った。「大いなる御方の御期待、必ずや叶えてご覧にいれましょう」
彼の声音には自信と智略が溢れている。
「ドラガン」
名を呼ばれたドラゴン族の武人は、巨体を揺らして進み出た。「此処に」恭しく頭を垂れる。
「お前には城の外へ出て、上空から周囲の偵察を命じる。遠く見渡し、地形を把握せよ。近隣に人間の集落や未知の脅威がないか探るのだ。遭遇した敵対者は無理に交戦するな。ただし城を脅かす存在であればその限りではない」
「承知した!」
ドラガンはその場で拳を胸甲に打ち付け、力強く応じた。「このドラガン、生涯を賭して陛下の盾と刃となりましょう!」
その目には武人としての誇りと歓喜が浮かんでいる。
「ヴィクター」
最後に呼ばれたのは、執事服に身を包んだ青年の姿をした吸血鬼だった。静かに頭を垂れ、優美な所作で一礼する。
「ここに、陛下」
「ヴィクター、お前には人間社会への潜入調査を命じる。正体を悟られぬよう注意しつつ、この城の周辺国家――たとえばヴァルトリア王国やその隣接国の内情を探れ。文化、宗教、政治、軍事…ありとあらゆる情報を収集せよ。民衆が何を感じ、何を語っているかも知りたい」
「御意にございます」
ヴィクターは落ち着いた声音で即答した。「この命、必ずや遂行し、真実を持ち帰りましょう」
微笑を浮かべてはいるものの、その紅玉の瞳には鋭い光が宿っている。
マグナスは満足げに頷き、改めて四人へと宣言した。「よいな。我が命は絶対だ。各々、使命を全うせよ」
「ははっ!」
四人は声を揃えて恭順の意を示すと、深々と頭を垂れた。
玉座の間に忠誠の響きが木霊する。マグナスは胸の内で熱いものが込み上げるのを感じていた。自分の言葉一つで、彼らは命すら投げ出す覚悟を示している。その信頼と期待の重みに、改めて身が引き締まる思いだった。
(俺はもう、単なる一プレイヤーじゃない。この者たちの主であり、この城の支配者なのだ…)
そう心に言い聞かせるように呟く。現実となったこの異世界で、背負うべき責任と使命は計り知れない。
「行動開始は速やかに。各々、余裕があれば互いに連絡を取り合い、情報と成果を共有せよ」
最後の指示を下すと、マグナスは片手を軽く挙げて四人を下がらせた。
「はっ!」
ルシエラを先頭に、誓約者たちは恭敬の礼を保ったまま後ずさるようにして玉座の間から退出していく。重厚な双扉が閉じられると、広間には再び静寂が訪れた。 ルシエラは玉座の間を出ると同時に、音もなく身を翻し城壁の上へと飛翔した。
大広間の高窓から射し込む朝日に煌めき、彼女のシルエットを城砦の上空へと浮かび上がらせる。副官として、まず城の防備状況を自らの目で確かめるつもりなのだ。
「警備隊、配置につけ。周囲の警戒を怠るな」
ルシエラは城壁に降り立つと、すでに見張りに立っていた魔族の兵士たちに的確な指示を飛ばした。黒甲冑に身を包んだ悪魔の戦士たちが一斉に敬礼し、持ち場へと散っていく。
ギルド拠点には、四人の深淵の誓約者以外にも多数の戦力が存在していた。彼らはゲーム時代にはモブNPCや召喚モンスターに過ぎなかったが、今や現実の眷属として自律的に行動し始めている。
ルシエラは城壁の上を歩きながら、周囲を見渡した。眼下には広大な原野と深い森が広がり、その中に人工の建造物は見当たらない。城を中心に半径数キロは未開の地のようだ。
片膝をついて地表を注視する。魔族の哨戒部隊が森の周囲を巡回しているのが小さな影となって確認できた。どうやら先程の命令を受け、部下たちは素早く動き始めているようだ。
「この城に近づく愚か者はいないか…」
ルシエラは鋭い眼差しで遠方を睥睨した。副官としての責務――それは主であるマグナスの安寧を守り抜くことに他ならない。彼女の脳裏には、かつて仮想世界であった頃からのマグナスとの記憶が浮かんでいた。
孤高にして強大なギルドマスター。その背に仕え、その理想を実現することこそ、自分に課せられた使命。その思いは現実となった今、より一層強固な信念となって胸に宿っている。
(この地に安住の地を築く――そしていずれ世界を我が主の御手に)
ルシエラの唇に微かな微笑が浮かぶ。彼女には疑念など微塵もない。マグナスこそが世界を治めるに相応しい王であると信じきっているのだ。
その忠誠ゆえに、ルシエラは冷徹にもなれる。主のためならば、この城に迫るいかなる脅威も容赦なく排除するつもりでいる。
「ルシエラ様!」
声に振り向けば、一人の部下が駆け寄ってきた。かつてゲームでは下級悪魔だった魔族兵で、今は明確な意志を宿した瞳で副官を仰いでいる。「近隣の森にて、小型の魔獣が数匹出没しております。今のところ城への直接の害はありませんが、警戒すべきかと」
「そうか。引き続き監視を続け、必要とあらば排除せよ。領域内に未知の脅威を一匹たりとも入れるわけにはいかない」
ルシエラは的確に指示を返した。報告した兵士は恭しく頭を下げ、再び持ち場へ駆け戻っていく。
彼女は再度天空へと舞い上がった。城郭を大きく一周する。上空から見渡す限り、敵対者の姿は見られない。もっとも、異世界とはいえこの未開地に早々人間が踏み込んでくるとは考えにくいが、念には念を入れなくてはならない。
「ゼルガドの方はどうかしら」
ルシエラはぽつりと呟き、城の中枢部――古代図書館がある尖塔の方角に目を凝らした。大賢者もまた、任務に取り掛かっている頃だろう。内外から城を盤石に固め、この地を足掛かりとして勢力を築く。それが深淵の誓約者長たる彼女に与えられた使命である。
ルシエラは朝日を浴びて輝く大空を仰いだ。あの空の果てに、まだ見ぬ人間たちの国があるのだろう。その瞳には確かな闘志が燃えている。「必ずや、マグナス様に栄光を…」
心に誓い、彼女は城壁の上に再び降り立ったのだった。 城の一角に聳える尖塔。その内部は、天井まで書架が埋め尽くす広大な図書館となっている。
無数の魔導書と古写本の匂いが立ち込める中、ゼルガドは長椅子に腰掛け、一冊の重厚な書物を繙いていた。蝋燭の灯りに照らされた骸骨の顔が、不気味な影を壁に落としている。
「ふむ…やはり世界法則に微細な差異が見受けられるな」
ゼルガドはページに目を走らせながら小声で呟いた。手元の書物は、かつてゲーム内で集めた多元世界理論に関する秘術書である。異世界に飛ばされた今、それが現実の理にどこまで通用するかを検証していたのだ。
先程マグナスから受けた命、「この異世界の理を解析せよ」という言葉が脳裏に蘇る。大いなる御方の期待に応えるべく、早速できる限りの知識を動員しているところだった。
「こちらの魔力粒子は…なるほど、僅かに濃度が高い」
ゼルガドは指先に魔力を集め、小さな光球を生み出した。それは静かに宙に浮かび、周囲の魔力場を可視化する役割を果たす。
「やはり…世界のマナ濃度が高い分、魔術の効力も増大しているのか」
ゼルガドは先程演習場で見たマグナスの魔法の威力を思い返した。下級魔法ですらあれほどの結果を生む背景には、この世界の魔力環境が深く関与しているに違いない。
「となれば、結界魔法も然り。この城の守りも強固にせねばな」
彼は立ち上がり、図書館の中央に据えられた石造りの祭壇へと歩み寄った。そこには古代文字が刻まれた巨大な水晶球が鎮座している。ギルド拠点全体の魔力循環を制御する中枢だ。
ゼルガドは杖を掲げ、静かに詠唱を始めた。「……影よ、霧よ、我が城を包み守れ。結界『常闇の帳』」
低く響く声と共に、水晶球が淡く紫光を放つ。瞬間、城全体に見えざる波動が広がっていった。闇のベールが城を覆い隠すように展開され、外部からの探知を阻害する結界が強化されたのだ。
「うむ、ひとまず及第か」
ゼルガドは自ら施した魔法障壁の手応えを感じ取り、満足げに頷いた。これで人間の精霊術師や聖職者が遠方から索敵の魔法を放ったとしても、容易にはこの城の所在を突き止められまい。
もちろん完全ではないが、時間を稼ぐことはできるだろう。彼は祭壇に手を当て、さらに幾重もの防護術式を展開するべく魔力を注ぎ込んだ。
結界術に集中するゼルガドの脳裏に、マグナスの姿が浮かぶ。あの御方は、どこまでこの状況を見通しておられるのだろうか。
「フ…まさか予見されていたとでも? さすがは御方」
ゼルガドは一人くくと笑みを漏らした。彼の中で、主人への敬意と信頼は揺るぎない。どんな些細な事柄にも深遠な意図が込められているに違いないと、彼は確信しているのだ。
(この異世界に転移したのも、きっと何か大いなる運命の導き…)
自らの思索に耽りつつも、手は休めず魔術を紡ぎ続ける。蒼白い指先が虚空に魔法陣を描き、さらなる結界層が城を包み込んでいった。
やがて、ひと段落ついたところでゼルガドは大きく頷く。城の防御力はかつてなく高まった。次に彼がすべきは、未知の世界に関する知見の収集だ。
彼は再び書架に戻り、今度はこの世界の言語や地理に関する書物を探し始めた。もっとも、ギルド拠点にある蔵書はゲーム内の想定で揃えたものゆえ、この現実世界固有の情報は含まれていない。そこでゼルガドはある決断をした。
「後ほど、私自らが周辺の遺跡や集落を探索する必要がありそうですね」
古びた指先で一冊の地図帳を撫でながら、ゼルガドは静かに呟く。ドラガンやヴィクターからの報告が上がり次第、それらを元にさらなる情報を集めるつもりであった。
「ふふ、楽しみですな…未知の知識が我が手に落ちる時が」
不気味な笑い声が図書館に響く。リッチである彼の眼窩の奥で紫の光が怪しく瞬いた。 城門の前庭では、白銀の鱗に覆われた巨躯のドラガンが、一際目立つ存在感を放っていた。
すでに全身甲冑と長大な斬撃剣で武装を整え、偵察飛行の準備を整えている。周囲には十数名の魔族兵士たちが緊張した面持ちで見守っていた。
「では行って参る。城の留守は任せたぞ」
ドラガンが部下たちに声をかける。その声は重厚で、響き渡るような低音だった。
「お任せください、ドラガン隊長!」と兵士たちが口々に答える。
ドラガンは満足げに頷くと、一息に跳躍した。驚異的な脚力で数メートルの高さまで跳び上がった彼の背に、一対の翼が現れる。
それは魔力により顕現したドラゴンの翼。半透明の黒い鱗膜が朝日に照らされて妖しく輝いた。
翼が一度大きくはためくと、竜人の巨体が容易く宙に浮かび上がる。巻き起こる突風に、下にいた兵士たちが思わず目を細めた。
ドラガンはさらにもう一度翼を翻し、高度を上げる。城郭を見下ろす高さまで上昇すると、雄々しく吼えた。「グォォォオオッ!」
竜の血を引く彼の咆哮が周囲の空気を震わせ、辺りの小鳥たちが一斉に飛び立っていく。
ドラガンは鋭い黄金の瞳で一瞬、玉座の間の方角を見遣った。主であるマグナスはもう見えないが、その存在を胸に刻み込むように一礼する。
「必ずや有益な情報を持ち帰りましょう、陛下…」
その誓いと共に、ドラガンは空の彼方へと飛翔した。
白銀の巨体が蒼穹を切り裂き、みるみる高度と速度を上げていく。下方に広がる城と大地が急速に小さくなり、風が轟音となって耳元を吹き抜けた。
しばらく上昇した後、ドラガンは翼を巧みに制御して風に乗った。上空の気流を捕まえ、滑るように水平飛行へと移る。
彼の眼下には、先程まで城から見えていた森と原野が広がっている。高高度から見る世界は、これまで彼が知っていた景色とは似て非なるものだった。
「ここが…新たな世界か」
ドラガンは低く唸った。眼下には点在する湖沼の光、遠くには連なる山脈の稜線が見える。その向こう、はるか地平線の彼方には、かすかに人工の構造物らしき影も認められた。
(村か町か…?)
竜人の優れた視力が、大地の微かな異変を捉える。森を切り開いたような跡地、そしてその先に小さな煙が立ち上っているのが見えた。人間の集落である可能性が高い。
ドラガンはその方向を記憶しつつ、無闇に接近はしないよう軌道を取った。任務は偵察であり、挑発ではない。自らの存在を軽率に晒して騒ぎを起こすことは本意ではなかった。
しばらく周囲を旋回し、目に入る限りの地形を脳裏に刻みつけていく。広大な森は城の北から西にかけて広がり、南東方向には草原が延び、その先に街道らしき一本道が走っているのが見えた。
その街道上を小さな馬車隊が進んでいるのも視認できた。交易か旅か、いずれにせよ人間の活動圏がそう遠くない場所にある証拠である。
ドラガンはそこで一旦高度を下げ、森の上空すれすれにまで降りた。直接視認できる情報だけでなく、匂いや気配も探るためだ。
竜人の嗅覚が風に乗って様々な臭いを運んでくるのを捉えた。草木の瑞々しい香りの中に、わずかに人の営みの気配――炊煙の煙、家畜のにおいが混じっている。
やはり、そう遠くない場所に人間社会が存在する。ドラガンは緊張と興奮を覚えた。未知の者たちと対峙する日も近いかもしれない。
「人間どもめ…こちらの存在に気付けばどう動く?」
ドラガンは己に問いかけた。正義感に燃える人間の騎士団が襲来するのか、それとも恐れをなして近づかぬか。いずれにせよ、脅威と定めるならば武力をもって退けるまで。
彼は一度深呼吸し、頭を冷やした。感情に流されるな――今はあくまで偵察だ。
ゆっくりと旋回を続けながら、ドラガンは可能な限り地勢を把握した。森の東端に川が流れ、街道は橋を渡って南へと延びている。北方の山麓には、古びた遺跡のようなものも見えた。
ひと通り周囲を調べ終えた頃、太陽は天頂に差し掛かっていた。ドラガンは最後に城の方向を振り返る。黒々と聳える魔城が小さく点のように見える。
(異常なし、か。今のところはな)
彼は満足げに頷くと、ゆるゆると旋回を切り上げ帰路についた。再び翼に力を込め、大空を真っ直ぐ城へ向かって飛翔する。
ドラガンの胸には、確かな誇りが息づいていた。陛下の命に応え、領地の安寧を守ること。それが己の存在意義。例え如何なる困難が待ち受けようとも、この命尽きるまで主に忠誠を尽くすのみ。
「陛下…必ずやこの空の下、平穏を勝ち取りましょうぞ」
風にかき消されそうな声で呟き、ドラガンは力強く羽ばたき続けた。 その日の夕刻、ひとりの旅人風の男がヴァルトリア王国の辺境の町へと足を踏み入れた。
黒いフード付きマントに身を包み、顔の下半分を布で覆ったその姿はどこか陰鬱だが、旅の疲れを癒しに来たようにも見える。
男の正体はヴィクター。城を出立した彼は、驚異的な脚力と影に溶け込む秘術を駆使して、人里まで半日足らずで移動してきたのだった。
陽が傾き、町の門が閉じられる直前のこと。門番の兵士に身分と所用を問われたヴィクターは、穏やかな笑みで「旅の薬商人でございます。しばしの宿をお借りできれば」と答え、難なく通行を許可された。
町の名は「ブレッサ」。木造の城壁に囲まれた小規模な交易町で、人口は千にも満たない。夕闇に照らされた街路には、行き交う人々が家路を急ぐ姿があった。
「ふむ…」
ヴィクターはゆったりと町を歩きながら、周囲の様子を観察する。軒先には乾燥ハーブの束が吊るされ、パン屋から香ばしい匂いが漂ってくる。人々の会話はこの世界の共通語だが、幸いにもギルドの知識として言語は理解できた。
通りを進むにつれ、中央広場が見えてきた。そこには小さな噴水と礼拝堂があり、人々が立ち話をしている。
ヴィクターはふと立ち止まり、耳を澄ませた。どうやら人々の話題はもっぱら「黒い城」のことらしい。
「…やはり魔王の仕業に違いないわ。あんな不気味な城、突然森に現れるなんて」「しっ、誰に聞かれるか分からないよ。下手な噂を広めるものじゃない」
「でも、このままじゃ村にも危険が及ぶかもしれないって神父様が…」
耳朶をくすぐる生々しい恐怖と不安の声。ヴィクターは目立たぬよう広場の縁に腰掛け、続く会話に注意を払った。
「教会では『闇の再来』だって大騒ぎさ。王都から聖騎士団が派遣されるって話よ」「そうとも。かの光の勇者の再来と謳われるレオンハルト様が、近く調査に来られるとか」
「おお…勇者様が? それなら心強い」「だが本当に魔王なんているのかねぇ。伝説の話じゃあるまいし…」「いや、近頃魔物の出没も増えておる。噂によれば、城の周囲では闇の眷属が蠢いているとか…」
広場の人々は口々に不安を語り合っている。どうやら、マグナ・ドミニオン(黒城)の出現はすでに周辺に知れ渡り、大きな騒ぎとなりつつあるようだ。
(フフ、さすが人間。見えぬものには想像を膨らませるものですな)
ヴィクターは内心で皮肉げに微笑んだ。彼らが語る「魔王」とは自分の主のことだが、実際にはまだ何もしていないというのに、すでに悪しき存在として恐れられている。
それも無理はないだろう、と彼は思う。突然未知の闇の城が出現すれば、人々が怯えるのも当然だ。加えて、この世界には古くから魔王伝説が存在するらしい。
実際、彼らの口ぶりから察するに、過去に「光の勇者」が魔王を討伐した神話が伝わっているようだった。それゆえ人々は闇の城を「魔王の再来」と結びつけているのだ。
(歴史と宗教…その絡繰り、興味深いですね)
ヴィクターはそっと広場を離れ、礼拝堂の脇道へと歩を進めた。礼拝堂からは賛美歌のような声が微かに漏れ聞こえてくる。
扉越しに中を窺うと、数人の町人がひざまずき祈りを捧げていた。祭壇には太陽の紋章が掲げられ、司祭が恭しく十字を切っている。
「どうか聖光の神よ、この地を魔の手からお守りください…」
年老いた司祭の祈りの言葉が聞こえ、ヴィクターは静かに目を閉じた。宗教的な恐怖心が人心を支配しつつある。闇の脅威に対抗する救世主への期待と、迫りくる破滅への怯え――その両方がここに渦巻いていた。
「これでは民衆が浮き足立つのも無理はない」
ヴィクターは呟き、礼拝堂から離れた。 次に彼は人気の少ない路地裏へと入り込んだ。鼻を突く酒の匂いに誘われ、小さな酒場の裏口が開いているのを見つける。
中では数人の壮年男性が卓を囲んで酒を酌み交わしていた。どうやら労働帰りの職人か農夫らしい。ヴィクターは静かに耳を澄ます。
「まったく、たまったもんじゃねぇ。黒城のせいでこの町にも王都から検問が来るとかで、商売あがったりだ」「本当か?」「ああ、役人が近く派遣されてくるそうだ。新しい税を取られやしないかってみんなビクビクしてるよ」
「教会の奴らも毎日祈りを強制しやがって、かなわんぜ。ただでさえ不作続きで腹も減ってるってのに」「……魔王だか何だか知らねえが、俺たち庶民には迷惑な話だ」
荒んだ声で不満を漏らす男たち。それに対し、隣の席の老人が酒杯を傾けながら静かに語り始めた。
「わしの若い頃にも、似たようなことがあったよ…大昔、魔物どもがはびこり、世が闇に覆われた時代がな。もっとも、最後には勇者様がその魔王を討ち果たしてくださったが」
「へぇ、じいさんは魔王伝説を信じてるのかい?」
「もちろんとも。レグナードの大神殿には今も勇者の聖剣が祀られておる。光の神が勇者と共に世界を救った証じゃよ」
老人の瞳が信仰心で輝くのを、ヴィクターは物陰からそっと観察した。
(レグナード…聖光王国の名ですか)
王国ヴァルトリアとは別に、宗教的中心地とも言える国があることを示唆する名だ。どうやらこの世界の勢力図は、一筋縄ではいかなそうである。
「だがな」老人は声を落とした。「その勇者様が活躍されたのももう百年以上昔の話…今も本当に我らを見守ってくださっておるのかのう…?」
ぽつりと漏らしたその言葉に、若者たちは答えなかった。不安げな沈黙がその場に満ちる。
ヴィクターは人知れず嘆息した。なるほど、宗教への信仰は篤くとも、人々の心には少なからず不安と疑念が芽生えているらしい。
魔王の再来か、それともただの噂か――いずれにせよ、人間社会は静かに揺れ動いている。
(十分な成果だろう)
ヴィクターは裏路地を離れ、夕闇の帳が下りた通りへと戻った。街角に設置された街灯に火が入り、橙色の光が石畳を照らし始めている。
「おや、旅のお方」
不意に穏やかな声がかけられた。振り向くと、先程広場で祈っていた司祭が立っている。初老の男性で、痩せた体に白い聖職者の法衣を纏っていた。
「何かお困りですかな? どこかご案内しましょうか」司祭は柔和な笑みを浮かべている。
「いえ、ただ少し町の様子を見て回っていただけです。お気遣い痛み入ります」
ヴィクターは丁寧に辞退した。が、司祭は去ろうとせず、静かに問いかけてきた。
「この町には初めておいでかな? よければ聖堂に立ち寄って行かれては。今宵は皆で魔王の脅威が去るよう祈りを捧げるのです」
「それは結構なことですね」ヴィクターは内心の嘲笑を隠し、礼儀正しく答えた。「ぜひ後ほど伺わせていただきます」
司祭は満足げに頷くと、「では後ほど」と礼拝堂へ戻っていった。
その背が見えなくなるや否や、ヴィクターはフードの下で静かに嗤った。「…お優しいことで」
彼は夜陰に紛れるように路地へと身を滑り込ませた。半月の冴え冴えとした月光が瓦屋根を照らしている。
ヴィクターはそっと自身のマントを翻し、その姿を闇に溶かした。影渡りの能力で人体を黒い靄に変え、存在感を消す技である。
誰の目にも留まらぬ軽やかさで石畳を進みながら、彼は心中で今日得た情報を整理した。
周辺国家ヴァルトリアの民衆は、現れた黒城に強い恐怖と疑念を抱いていること。その背後には、古くからの魔王伝説と宗教的信仰が影響していること。
王都からは聖騎士団が派遣され、光の勇者の名を継ぐ者が調査に乗り出すらしいこと。そして、庶民の間には怯えだけでなく苛立ちや生活への不安も渦巻いていること。
(上々だ)
ヴィクターは満足げに口元を緩めた。僅かな時間でこれだけの情報を得られれば上出来だ。
残るはもう少し、この国の統治者層の動向を探ることと、他国の様子も見ておきたいところだ。
しかしながら、日が落ちたとはいえ長居は無用だろう。人間の町に吸血鬼が留まりすぎれば、自身の血の渇きが顔を出しかねない。
ヴィクターは喉元に疼きを感じる前に踵を返した。「そろそろ引き上げ時のようですね…」
闇に滲むように姿を消し、彼は町の外へと音もなく移動を開始した。来た時と同様、影を縫うように森へと戻っていく。 ***
深夜、マグナ・ドミニオンの城壁上。
マグナスは冷たい夜気に身を晒しながら、遠く森の方角に視線を巡らせていた。満天の星々が瞬き、半月が薄く大地を照らしている。
配下たちは今まさにそれぞれの任務に従事している頃だ。城内ではルシエラが不寝番を買って出て見回りを続けている。ゼルガドは図書館に籠もり、未だ魔法障壁の増強に余念がない。
ドラガンは先程、ひとまずの偵察結果を持ち帰り、現在は城門にて兵士たちに周辺地図を描きながら報告をしている。
そしてヴィクターは…未だ戻らず、人間社会で情報収集の真最中だろう。
「皆、頼もしい限りだな」
マグナスは独りごちた。見上げる夜空には、現実世界では見ることもなかった無数の星。新たな世界での試練と可能性が、あの星々の数ほどに存在するのかもしれない。
(俺もいつまでも城に籠もっているわけにはいかない)
彼の手元には、すでに魔王の鎧を脱ぎ捨てて平凡な黒ローブを纏う準備が整えられていた。正体を隠し、この目で世界を知るために自ら外へ赴く決意である。
彼は手すりを握りしめ、静かに息を吐いた。配下たちに任務を課した以上、今度は自分が動く番だと感じている。
ゲームの中ではなく現実となったこの異世界で、彼自身の目で何が起きているのか確かめる必要があるだろう。
「陛下」
背後から声がかかった。振り向くと、黒のローブをまとったルシエラが控えていた。「夜風は冷えます。どうかご自室へ…」
「ああ、すまない。少し考え事をしていただけだ」
マグナスは微笑み、ルシエラに歩み寄った。彼女は主の肩にそっと外套を掛け直す。
「ご安心ください。我らが必ずや陛下を支えてみせます」
ルシエラの瞳が真っ直ぐにマグナスを捉えている。マグナスはその忠誠心に満ちた眼差しを受け止め、静かに頷いた。
「分かっている。君たちがいてくれる限り、私は孤独ではないな」
「はい。我ら生涯、陛下にお仕えいたします」
ルシエラの言葉は揺るぎなく、マグナスの胸に沁み入った。彼は再び夜空に目を向ける。
(守るべき仲間、与えられた力、背負うべき運命…)
かつては日々会社に勤め、仮想の世界に逃避していた自分が、今や魔王として現実の世界に君臨している。この途方もない運命に、震えぬ者はいないだろう。
だがマグナスは、自らの拳を握りしめた。震えは次第に収まり、代わりに揺るぎない決意が心に満ちていく。
「行こう、ルシエラ」
「はい」
彼女を伴い、マグナスはゆっくりと歩き出す。玉座の間への戻り道、その足取りには迷いがない。
遠く森の彼方では、小さな狼煙のような光が瞬いた。人間の町の灯火だろうか。
マグナスはそれに一瞥をくれると、前だけを見据えて進んでいった。
自らの選択が、この世界の未来を左右するとも知らずに――。
最後までお読みいただきありがとうございます!
「ゲーム×異世界×魔王」という構図の中で、
主人公・マグナスがどのように“王としての答え”を出していくかを描いていきます。
本作は重厚でダークな展開が中心となりますが、配下NPCとのやり取りや、
魔王であることの“光と影”にも焦点を当てながら進めてまいります。
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