もう少し、生きてみよう。
十六歳、生きることが辛い。学校の雰囲気はまがまがしく、私は虐められている。
家は家で、父が不倫をし、母は自殺を試みる。薬をたくさん飲んで、死のうと試みる。
不幸、だと自分で思っている。不幸なのに、生きている意味なんてない。そう思う。数ヶ月前、道徳の授業で、自殺はいけない。という趣旨の授業があった。だが、幾多の人が自殺をし、更に、一番身近で尊敬している人が、自殺を試みたのだ。説得力に欠ける。
私は今、十三階の、フェンスに足をかけている。中学校の時、つまり引っ越す前に住んでいた地区で一番大きなマンションの最上階の一つ下。そこのフェンスに、足をかけている。
ただ、いまひとつ、踏ん切りがつかない。ただいっそのこと、誰かが押してくれればいいのに。
そんなことを思っているうちに、私の故郷。つまりこの地区の懐かしい薫りと共に、十三歳のとき、尊敬していた先生の言葉を思い出した。
『辛くたってな、必死で生きていれば、絶対にいいことがあるんだ。というよりな、生きてるだけで、最強なんだよ』
そしてまた、最近見た本の一文を思い出した。
『死に物狂いで生きるのは、権利じゃなくて義務だ』『自殺しちゃいけない理由なんて知らねえよ。ばーか』(終末のフールより)
そして最後に、私の悩みを聞いてくれていた、唯一の男友達から届いた、一通のメールを思い出した。
『死にたいけどさ、怖くて死ねないんだ。でもさ、こないだメールしたと思うけどさ、人間って、物凄い上手くできてると思うんだ。身が壊れそうになったら、痛みを感じるし、異物が入ったら、痒みを感じる。死ぬのが怖いってことは、死んでもいいことないってことだと思う。だから俺は、生きてみるよ』
懐かしい薫りと共に、私は一つ、決意した。
――もう少し、生きてみよう。もう少しだけ、そしたらまたイイコトがあるかもしれない。
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