第三話 〜アリルとバリー〜
「待って!アオイさん!」
バリーに俺が攻撃を仕掛けようとした時、後ろから声がした。あの時助けた少女の声だ。
「む……君は?確か名前はアリルだったか?悪いが決闘の途中だ。途中で第三者の介入は……」
その時だった。
「降参!降参だ!だからアリルの話を聞いてやってくれ!」
バリーが大きな声で降参を宣言した。
それならばということで、俺とバリーは近くの小屋で少女の話を聞くことに。最初はバリーが同席するのは遠慮してもらおうと思ってたが、アリルが必要だと言うので仕方なくつれてきた。
「すみません、わざわざありがとうございます。それで、肝心の内容なのですが……」
隣を見ると、バリー少し元気がないような気がする。だが……アリルが気にする様子はない。なんか……声をかけた方がいいか?
「実は、バリーは私の弟なのです。」
「ふぁっ!?」
思わず変な声が出てしまった。だって、どう見てもアリルは小柄な美少女、バリーはいかつい大柄な青年、この二人が姉弟で、しかもアリルのほうが年上だと言うのだ。
まあバリーも首肯してるし、嘘ではないのだろうけど……何度でも嘘だと思ってしまいそうだ。
「アオイさんが驚かれるのも無理はないと思います。血は繋がっていない義理の兄弟ですので。」
「ああ、そういうことだ。それと……俺からもアオイに一ついいか?」
俺が首を傾げてると、バリーが勢いよく頭を下げて、
「すまなかった!俺が、俺が悪かった!前衛だとお前をみくびっていたことをここに謝罪させて欲しい!!」
そう謝罪してきた。
絡まれた時はイラッとしたが、ちゃんと謝れるということは、悪いやつではないのだろう。前衛職に対する偏見も酷い世の中だしな。ってかもう怒ってないし、ここは許す以外の選択肢はないよな。
こうして俺はバリーと和解した。その後、俺はギルドに戻り、依頼を探すことに。アリルとバリーは病院に向かった。
ちなみに、アリルにどうやってここまできたのか尋ねたら、病院の医師に転移陣を使わせてもらったという。転移陣は一人を対象に、その人を近くの指定した場所に転移させることができる。とても貴重なもので、転移できる回数にも制限がある高級品だ。それをこんなことに使ったのだからアリルは今頃病院の医師と一緒に叱られている頃だろう。
さて、俺はというと……
「おい、あの冒険者……」
「ああ、バリーに決闘で勝ったんだってな……」
「剣士があのバリーに勝てるのか?イカサマでもしたんじゃね?」
バリーに決闘で勝ったという噂が広がっていた。全く……でも聴衆が大勢いたから仕方ないか。
そんな中、俺は依頼を探す。
「もうお昼だし、そんなに長くならなそうな依頼にしよう。どれがいいかな……これがいいな。」
俺が選んだのは、薬草採集のクエストだ。誰でも受けれて定期的にギルドにも依頼が舞い込む、いわゆる「ありふれた」クエストだ。
「このクエストをお願いします。」
「はい、薬草採集ですね。少々お待ちください……はい、受付が終わりました。気をつけて行ってらっしゃいませ。」
クエストの受注を済ませた俺は、採集地であるエイニア平原へ向かう。
エイニア平原に着いた頃、俺は何者かに尾行されていることに気づいた。二人組のようだが……人間ではないな。この気配は……魔族か。
かつてこの世界にも魔王と魔族がいて、人類の脅威となり、一時は絶滅の危機に追い込まれた。人類が皆絶滅を覚悟した時、勇者が現れた。勇者は瞬く間に大半の魔族を倒し、魔王をも凌駕してみせた。そして、激しい攻防の後、魔王は封印されたという。
魔族は魔王の配下だ。故に、魔王の復活を目指して行動している。そんな魔族がなぜ、俺をつけているんだ?
「おい、あれが危険因子候補か?」
「ああ、そうだ。剣士ながら、その力は凄まじいと聞く。」
「でもよー、前衛職だろ……?こんなやつ放っておいていいんじゃねえか?」
「だから様子見をしているんだろう?このまま危険因子に登録するか否かを判断するために。それとも、何か異論でも?」
「いや、文句はねーけどよ……なんか気が乗らねえな……」
ヒソヒソと魔族たちはそんな話をしながらアオイを尾行する……
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