元気確認ウーマン
噂には聞いていた。
そんな女子がいるよ、と。
でも正直、想像はできない。
その部活の先輩は。
ずっと、体調をくずしていた。
そして、今日復帰するらしい。
みんなは、疲れると言っていた。
その先輩に、ひとりひとり聞かれる。
そんな感じらしいから。
調子どう?とか聞かれて。
元気です!と返す。
それならいい。
だけど、先輩とのやりとりは特殊だ。
これは、聞いただけの知識だけなのだが。
聞こえてきた。
遠くから、だんだん近づいてくる。
3文字の単語しか、聞こえてこない。
3文字の、そのやりとりにもう。
『無駄』という2文字が、浮かび上がる。
「元気?」
「元気!」
「元気?」
「元気!」
「元気?」
「元気!」
なんで、決まってるんだ。
『元気です!』
そう言いたいのに。
『元気ではないかもです』
そう言いたいときも、あるはずなのに。
『元気!』って言わないといけない。
語尾を伸ばして、元気よく言わないといけない。
セリフの用意されたコミュニケーション。
それは、イマイチ理解不能だ。
先輩はまだ、体育館の入口付近だろう。
姿は見えない。
でも、きっとカッコいいのだろう。
今は元気ではない。
だけど、『元気!』と語尾を伸ばして言おうと思う。
『先輩には素直に。気持ちには反抗を』だ。
先輩はどうなんだ。
病み上がりだから。
一番元気ではないかもだ。
このやりとりは、元気でなくても。
元気になれる。
そんな魔法なのかもしれない。
想像でしかないが。