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New Space Scrolls Ⅱ-名もなき者達の詩  作者: 乃木了一
第一章 帝国領侵攻
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2.再会

ラムズフェルトによる再軍備宣言に先立つ3日前の9月8日、第一機動部隊幕僚長ヴィクター・ウォラフソン大佐はネオ・ネプチューン防衛司令部軍港エリアに続く廊下で壁に寄りかかり、窓から外を見つめていた。20分程前に軍港の埠頭に連絡艇が接続するのを眺めていたところである。

(随分時間がかかってるな・・・・)

ポケットに手を突っ込んだままのウォラフソンが足を組み替えたその時、ウィィンと音がして外部と接続するドアが開いた。おっ、と姿勢を正したウォラフソンは、ドアをくぐってきた男2人にぎょっとして少し後ずさりした。2人とも黒尽くめのコンバット・スーツ姿で、特に先頭の男はフルフェイスのヘルメットのバイザーを下ろしたままやぁ、というように手を挙げる。ウォラフソンの反応に気付いた後ろの男がバイザー男の背中をつつく。バイザー男はちょっと振り向いてあぁ、というように頷くとヘルメットを脱いだ。

「バルツァー、脅かすなよ。ヤバい奴が来たかと思ったぞ!」

ウォラフソンの苦情にマンフリート・フォン・バルツァー陸軍大佐はにやにや笑う。

「いや、ちょっと驚かせてやろうと思ってさ」

そういうと、二人はがっちりと握手した。「久しぶりだな」

「これは・・・・、新しい戦闘服か?」

物珍しそうにスーツを触るウォラフソンにバルツァーは自慢げだ。

「ああ、陸軍歩兵仕様のアーマードスーツだ。警察のSAT(特殊急襲部隊)が使ってたものを借りて、技術本部の連中に改造してもらったんだ」

「随分重そうだな」

「なぁに、そんなことはないさ」と言って、バルツァーは腰や足首の辺りにある小さなバッテリー様のものを指す。

「このパワー・アシスト装置のおかげで、これを着ると50㎏ぐらいの装備を背負ったまま時速15㎞で走れるんだぜ。それに、」と言ってヘルメットを叩いた。

「このヘルメットのバイザーを下ろすと、なんと相手の戦闘力が測れるんだ。お前は確か・・・・2000ぐらいだったな。なんだ、大したことないな・・・」

ウォラフソンは鼻で笑った。

「大昔にそんなアニメがあったな」

カカカ、と笑ったバルツァーは後ろの男を紹介する。

「こいつはヴォルフ・マイアー少佐、うちの連隊の第一大隊長だ」生真面目そうな顔をしたマイアーはカチッと踵を合わせると陸軍式の敬礼をした。「マイアーです。初めてお目にかかります、ウォラフソン大佐」

マイアーに宇宙軍式の敬礼を返しながらウォラフソンは言う。

「さあ、行こう。ウチの連中はもう揃ってる」

今回のアブロリモーゼ侵攻作戦に参加する陸軍の第442遠征連隊戦闘団の指揮官が大佐に昇進したバルツァーだと知ったのは数日前だった。それでウォラフソンは埠頭まで迎えに来たのである。



ネオ・ネプチューン防衛司令部の会議室には3日後に迫ったアブロリモーゼ作戦の最終打ち合わせのため侵攻部隊首脳陣が集まっている。第一“独立”機動部隊から改称された第一機動部隊司令官ノーラン・B・マックスウェル少将、旧独立機動部隊所属の幕僚達、作戦第三課別室から異動してきたブラッドリー・ホフマン中佐とリューク・アキノ大尉、新たに編成された宇宙艦隊陸戦隊指揮官らである。さらにラセンナに発注していた新型巡洋艦“XBS-RA01”50隻の受領・回航団の士官達がアブロリモーゼで合流することになっている。

将校達はスクリーンに映し出された通信文を眺めながら私語を交わしていた。つい先程宇宙軍司令部から届いたものである。通信文の右上には赤文字で「公開前秘」とあり、「軍報への掲載日時:4261年9月11日フリートランド時間午前10時30分」とある。通信文の内容は軍艦の区分変更及び新装備の公式名称に関するものだった。


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発:宇宙軍司令長官

宛:宇宙軍各部局並びに宇宙艦隊


宇宙艦隊が保持する主力艦の区分名称を以下の通り、変更する。

【主力艦(ワープ可能で攻撃用兵器を装備する戦闘艦)】

5,000トン未満…駆逐艦

5,000トン以上1万トン未満…軽巡洋艦

1万トン以上3万トン未満…重巡洋艦

3万トン以上でかつ「主砲」を有するもの…戦艦

艦載機搭載機能を持つもの…空母

強襲揚陸機能を持つもの…強襲揚陸艦


また、地球暦4261年9月11日付で、以下を宇宙艦隊の兵器として制式化する。

【新装備正式名称及び愛称】

輸送艦NGTR-011“MANTA”…“ドライグ級”軽空母

XBS-RA01巡洋艦…“ユングフラウ級”重巡洋艦

哨戒艇NGPT-008“SAKURA”(攻撃機型)…SA-61“スティングレー”

哨戒艇NGPT-008“SAKURA”(無人機型)…SA-61U

哨戒艇NGPT-008“SAKURA”(偵察機型)…SR-61“ワグテイル”

----------------------------------------------------------------------------


ウォラフソンらが会議室に入っていくと、バルツァーらへの挨拶もそこそこに、マックスウェル司令官はせかせかとした口調で言った。

「さて、みんな揃ったようだし、作戦会議を始めようか」

スクリーンの画面がアブロリモーゼ宙域図に切り替わった。


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