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5.テーベ会戦-2日目

会戦2日目、帝国軍の布陣は前日と同じ、中央本隊に戦列艦900隻とフリゲート300隻、左右両翼にフリゲート300隻、コルベット350隻である。他方、テーベ側は昨日の戦闘で大きな損害を蒙った左翼を補強するため、予備のフリゲートのうち200隻を左翼に回している。すなわち、中央本隊が戦列艦1,500隻とフリゲート200隻、左翼はフリゲート380隻に小型艦540隻の配置である。右翼はフリゲート300隻、小型艦750隻で前日と変わりはない。

しかし会戦が始まる前に、アイスナーは中央本隊と両翼との距離を30光秒まで広げている。帝国の狙いが外側からの包囲にあるとみたのであろう、テーベ軍もそれに対応して部隊間の距離を広げる。しかしこの30光秒という距離は、帝国軍戦闘マニュアルが定めている部隊間の距離(10光秒以内)の3倍に相当する。通常の戦闘時標準速度(秒速3,000㎞)なら50分、増加速度(秒速5,000㎞)でも30分かかる距離である。陣形中央に位置する旗艦のレーダーからも両翼の詳細な状況が把握しづらくなり、それだけ本隊と両翼の連携が難しくなることで、両翼の部隊指揮官には独立した判断が求められる場面が増えることになる。アイスナーの狙いもまさにそこにあった。


戦闘は前日と同じく、帝国側からの先制で始まった。但し、今回は左右両翼が同時に攻撃を開始している。戦術も昨日と同じ、帝国軍戦闘マニュアルが“カルッセル(メリーゴーラウンド)戦術”と呼ぶもので、3隊に分かれたフリゲート部隊が順に攻撃→後退→休息・補給→前進→攻撃を繰り返すものである。これを支えるため、補給艦や工作艦からなる支援部隊を左右両翼のすぐ後ろに配置している。

一方のテーベ艦隊といえば、昨日とは異なり、小型艦群をフリゲートの前面に配置するのではなく、フリゲート部隊を上下左右から取り囲むように配置している。これによってフリゲート部隊の防空任務を肩代わりさせ、フリゲート部隊には前面の敵に集中させるつもりなのであろう。またフリゲート部隊の方は2隊に分け、帝国軍と同じく交互に戦闘と補給を行わせている。しばらく双方に目立った損害もなく、戦闘は膠着状態のまま時間が過ぎていく。


戦闘開始から2時間が経った頃、睨み合いを続けてきた中央で動きがあった。帝国軍の中央本隊が前進を始め、敵中央本隊と3光秒の位置までくると戦列艦が主砲による砲撃を開始した。テーベ部隊も同様に、シールドを展開しながら反撃する。

と同時に、左右両翼でも動きがあった。これまで後方に控えていた帝国側のコルベット艦350隻が敵両翼の更に外側から敵部隊を急襲したのである。このコルベット部隊は敵の外側を守るテーベ小型艦群に1光秒の距離まで肉薄すると、レーザー主砲とミサイルを使って攻撃を始めた。テーベ側も必死に応戦するが、部隊を4つ(上下左右)に分けているため、局地的には帝国側に数で劣ることになり急速に損害が拡大する。テーベの他の小型艦部隊が慌てて救援に駆けつけた時には、既に帝国側は部隊をまとめて引き揚げていくところで、攻撃を受けたテーベ部隊はほぼ全滅に等しい損害を受けていた。

1時間後、帝国軍のコルベット部隊は先程とは逆の側面、つまりテーベ両翼の内側に入り込み、同じようにその側面を守っていた小型艦群を集中攻撃する。仕方なく上下のテーベ小型艦部隊が先程と同じく救援に動いた瞬間、今度は後方で待機していた帝国のフリゲート部隊100隻が両翼の外側からテーベ部隊を急襲した。前面の敵部隊への対応に集中していたテーベのフリゲート部隊は外側から横撃を受ける形になり、大混乱に陥った。それをみて、正面攻撃を行っていた帝国軍のフリゲート部隊が突撃を始める。やはりテーベは個々の前線部隊の動きが鈍く、帝国軍にいいように翻弄されている。


今やテーベ軍は左右両翼で劣勢に立たされている。このまま放置すれば、両翼を突破した帝国部隊に中央本隊まで包囲されてしまうだろう。側面・後方から攻撃を受ければ、いくら戦列艦といえど耐えきれない。そう判断したらしいテーベの総司令官は中央本隊から戦列艦を抽出し、左右両翼にそれぞれ200隻を増援として送った。

余裕の表情でそれを見送ったアイスナーは、左右両翼の指揮官に命令する。

「後30分で可能な限り敵を殲滅せよ」



3時間後、会戦を終え再び補給地点まで後退したアイスナー司令官は戦闘結果の報告を受けている。2日目、テーベ側が更にフリゲート約400隻、小型艦約500隻を失ったのに対して、帝国側の損害はフリゲート18隻、コルベット32隻が撃沈されたのみである。

「明日で決着をつけるぞ」アイスナーは幕僚らと乾杯しながら上機嫌に笑った。





その頃・・・・。巨大なガスの嵐が渦巻く惑星のすぐ側を通過しようとしていた船のブリッジに突如警報が鳴り響いた。

「正体不明船20、後方に出現! うわあああ、ミサイル多数接近中!」

「なに!?」

艦長がスクリーンを見上げると同時に、激しい衝撃が艦を揺さぶった。

「何が!? 何があったんだ!」

窓の外を見ると、先程まで見事な船列を組んでいた多数の僚艦が炎と煙を噴き出しており、その一部は惑星の引力に引かれて墜落していくのがみえる。

「第2波、来ます!」

艦長は絶望的な瞳で虚空を仰いだ。次の瞬間、ブリッジは轟音と共に白い光に包まれた。


「攻撃終了。針路1-8-0。プラズマ・ステルス装置起動」

攻撃艦の艦長がそう命じると、のっぺりとした表面に巨大な楕円形をしたその艦は僚艦と共にゆっくりと向きを変え、再び宇宙の闇に消えて行った。


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