3話 アーチェリーの装備
「1番だね」
「はい!?」
部室を出た瞬間、知らない先輩?に話しかけられた。まず目線に入って来たのはパイナップルの黄色いTシャツ。ハワイを感じる。
そうか、アーチェリーは制服でも出来るんだもんな。こんなTシャツでも別に良いんだ。にしてもこの人、見上げないと顔が見えないくらいデカい。いや、俺も小さいけどさ。
茶髪だし、すげえ陽そう。バレーとかバスケの方が似合いそうだけど、アーチェリー部の人なんだ。
「ここに1番に来たっしょ?」
「そ、そうでしたか?」
「いいね、他の有象無象と違う気がする」
「しょ、初心者ですよ俺!」
「俺、そういう子に教えるのが好きだな」
なんだろうこの人、あんまり関わりたくないな。嫌いじゃないけど、めんどくさそう。
「あ、ありがとうございございます?」
「じゃあ、射ちに行こうか」
半ば強引に拉致て来られたのはプレハブからすぐの射場。
射場と言ったけど例えるならコンクリートの洞窟。足元も天井も壁も、すべて灰色。日陰だから気温差すらある。真冬なら冷凍庫になるんじゃないか。
「そういえば名前は?」
「青野です」
「俺は芝田」
「芝田先輩、お願いしま──」
「俺の名前は覚えなくても良いけど、今日使う道具のどれか1つは覚えて帰ってね~」
先輩はどんどん俺に装備を足していく。着せ替え人形になった気分だ。
まず付けられたのは左胸だけのベスト、これはチェストガードっていうらしい。次に左腕の内側に定規みたいな細い盾。名前はそのまんまアームガード。そういえばサッカーのすね当てに似てる。
「念のため聞くけど右利きだよね?」
「はい。左だと何か違うんですか?」
「今つけたやつが全部右になる」
そう言いながら次は腰に矢筒のカバン。さっき緒田先輩がつけてたやつだ。芝田先輩にもついてる。名前はクィーバーって言うらしい。
ど、どんどんアーチャーになっていくぞ俺。後はクィーバーに矢を入れて、弓を持てば完璧。
「はいこれ」
「これは?」
「タブ。矢を引く方の手につける」
「右利きだから、右ですか?」
「そーそー、サイズも良い感じだね」
タブは中指にだけ輪を通して、握るようにつける。野球のグローブみたいな感じだ。素手を守る的な。
「はい、弓はこれ」
どんなかっこいい弓だろう。期待していたけど、出てきたのはフローリングの床で作られたような弓。しかもちょっと古いフローリング。
形はちゃんと弓だけど、ずいぶん地味なんだな。反りの部分にはYAMAHAって書いてあるけど、これはメーカー? アディダス的な?
「矢は俺の方で選んどいた」
「ありがとうございます」
先輩から3本の矢を受け取った。銀色で軽い。アルミで出来ているようだ。さっき見た緒田先輩の矢はもっと細くて黒かったけど、人によって違うのか?
それにしても、矢ってかっこいいな。ちゃんと先も鋭──
「それで人、殺せるからね」
「──は、はい」
芝田先輩のトーンは重かった。俺に覚悟を身につけろと、要求するような声。
でも、先輩が言ったことは大げさじゃない。事実だ。言われた通り俺は今、人を殺せる武器を身に着けている。
道具はたくさんあります。多いので本編では省く物もあります。覚えなくてもストーリー上問題ありません。気になる人は覚えてみてください。