2話 体験入部
体験入部初日。誘った白花には〝生け花部に行くからごめんね〟と、断られてしまった。
生け花部、言われてみれば納得。あいつの名前、白花だし。見た目も弓より花の方が似合うかも。
しっかし意外と体験部員は多い。たいていみんな中学の時の友人と来てるな。ぼっちは俺だけ・・・こうなるのが嫌で、白花に声かけたんだけどな。
でも気にするな。どうせアーチェリーは──
「集合!」
体が勝手に反応する一声。恐怖や威圧感とは違う。生き物ならそれに従う。
背後から刺してきた先輩の声は、どんな教師よりも迫力のある声だった。言われなくても背筋と指先が伸びる。
どんなおっかない先輩だろう。見るとその先輩はショートヘアーが良く似合う、かわいい人だった。
先輩は全員が集まったのを確認すると、ニコッと微笑む。その笑顔、素直に受け取れば万バズしそうなくらいかわいい。深読みすれば、これからものすごいハードなトレーニングをやらされるのかもしれない。
「部長の緒田です」
先輩は軽い自己紹介と体験でやることを説明してくれた。どうやらいきなり弓を射てるらしい。きんしゃ?って言ってたけど距離は分からない。
そういえば先輩のランニングをするような服装の腰には、矢筒がついたカバン?が巻かれている。ぱっと見は斬新なカバンで、原宿なら違和感はないだろう。でもその中には当然、矢が入っている。ファッションアイテムでないことは、それが証明している。
矢は想像よりもずっと細い。俺の指より細いかもしれない。音もなく的に刺さりそう。
「じゃ、何か質問ある人」
こういうのって、ないのがお決まりだけど1つの手が挙がった。
「着替えはどこで・・・」
「あー。大丈夫、制服のままで出来るよ」
ま、まじか!サッカー、テニスを経験してきた俺からすると衝撃だ。制服のままできるスポーツがあるのか!もちろん制服より、先輩のようにスポーツウェアの方が快適なんだろうけど。
「着替えたい子は男女の部室で着替えていいよ」
せっかくだしと、新品の参音高校の体操着とジャージに着替える。みんな同じ参音の青色のジャージ。胸元の名前も1年生の色を表す深緑で刺繍されている。
全員が同じ・・・なんか気味が悪いな。
アーチェリーは好きなTシャツを着て出来るので、練習の服は個性が出ます。