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19話 アーチェリーという競技


 僕たちはスタンド。先輩たちはグラウンド。グラウンド横幅いっぱいに引かれたシューティングライン。知らない装備をつけたアーチャーたちが一列に並ぶ。


 沈黙の中ブザーが鳴り、3分のカウントダウンが始まった。第1セットの始まりだ。弓を持った者のみが、シューティングラインに立つこと、的を狙うことが許される。

 

 誰かが最初の一射を放った瞬間、百を超える矢がそれを追いかける。彼らは3分で6本を射ち切る。短いのか、長いのか。それはアーチャーによる。アーチェリーは人によって矢を手に持ってからリリース、すなわち矢を射るまでの時間が全く違う。1射を10秒で終えるなら、理論上は1分で十分である。


 「先輩たち当たってるか分からなくない?」

 「70mだから俺たちには見えねえよ」

 「水本は望遠鏡覗いてるけどね・・・」

 「これか?これはスコープだよ。お前らも見ていいぞ」


 僕たちが観戦しているスタンドに、いつの間にかセッティングされた望遠鏡。末吉さんがこれをそう呼んだけど、どう見ても星を見るそれだ。スコープって響きは聞き慣れない。どちらにせよ高そうだ。


 そういえばこのスコープは先輩たちも、いや、他校の選手たちもグラウンドに持って行っていた。選手ですら流石に70m先は見えないんだな。


 「じゃあ青野見てみろ」

 「俺?まずは白花でいいよ」

 「・・・え、僕?」


 三脚で固定されているスコープを、星を見る様に覗き込んだ。そこには花火のように的が咲いて──


 「刺さった!!」


 たまたま見ていた的の真ん中に矢が刺さってつい、声が出てしまった。


 「矢が刺さる瞬間は気持ちいいよな」

 「う! うん! なんか、すっきりした!」

 「へえ? 俺にも見せろよ!」

 「次女子でしょ!」

 「お前らうるさい」


 注意したのが水本君で良かった。彼はそういう時に怒鳴らない。この場は今、まさに静寂だ。誰も歓声を上げないし、拍手もしない。黙々と矢が放たれる。弦が響いて矢が的紙を貫いて、畳に刺さる競技の音しか聞こえない。

 

 アーチェリーはなんて異質なスポーツだろう。まるで映画や演奏会を見ている気分。

 アーチェリーの選手たちは孤独だ。戦っている時になんの声援も受けられない。ど真ん中を射抜いてもそれがなかったかのように、制限時間に追われてまた矢を放つ。


 「水本、ぶっちゃけていい?」

 「なんだ?」

 「めっちゃ地味じゃね?」

 「地味だよ。アーチェリーはロボットみたいにひたすら矢を射つ競技だからな」

 「で、でも僕は! 射ってるときは楽しいよ!」

 「白花はほんと好きなんだな」

 「・・・うん?」


 ブザーが三回、強弱をつけて鳴らされた。最後の一射の後、シューティングラインから選手が散る。弓を置いた選手たちは小走りで70m先の的へと向かった。

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