オープニング 白線上のアーチャー
タイトルの「意射入魂」は「いっしゃにゅうこん」と読みます。よろしくお願いします。
この競技に豪快なホームランはない。
この競技に繊細なスルーパスはない。
この競技に華麗なダンクシュートはない。
この競技にあるのは──矢を射つこと。それだけ。
その競技は1本の線の上で行われる。
大地に引かれた、1本の線。その白線の上ではすべてが平等。プロもアマチュアも同じ。引退間際のベテランも、昨日始めた初心者も同じ。自分の足で立つ人も、車椅子に座る人も全員がその線の上に立つ。
シューティングラインに乗れば、全選手が同じ瞬間、同じ舞台に立って、同じ方向を見つめる。
30m。50m。60m。70m。男子は最長で90m先の的を狙う。男女に分かれた選手たちはそれぞれ4つの距離に挑む。
1つの距離に放つ矢は36射。1試合に放つ矢の合計は36×4────144射。
その144射で選手が目指すのは何か。アーチェリーの頂、その究極は──144射すべてで、満点の10点を射抜くこと。
1本の矢を放つ。それを144回繰り返す単純な世界。その144回で誰よりも多く10点を射抜けば、白線上で唯一の勝者となる。
9点以下は0点と同じ。アーチェリーとは──究極に挑む競技である。
アーチェリーの面白さはもちろんですが、部活動、高校生、青春といった要素の方がメインの作品です。道中辛いこともありますが、彼と彼らを最後まで見送っていただければと思います。