16話 関東大会予選記録会
「すごーい! あれってサッカースタジアム!?」
「地元のチームのやつらしいね」
「さっきはテニスコートもあったよ?」
「オリンピック公園って名前は伊達じゃねえってことか」
「ゲンジにピッタリの場所だね」
「え!?」
4月末、俺は初めてアーチェリーの大会に参加する。もちろん1年は準備係で射ちはしない。それでもこんな広いところで競技ができる──そう思うだけで、興奮する!
「お前ら、アーチェリーの競技場はこっちだぞ」
「水本は来た事あるの?」
「姉貴の応援でな」
「さっすが~!」
俺たちは水本に連れられて会場で南折先生と合流した。
「無事これたか」
「末吉と村山が電車を間違えましたが、それくらいです」
「そうかそうか。いつも通りか」
南折先生は笑ったが、次に口を開いた時は僕たちの気を引き締めさせた。
「今日は他校さんもいらっしゃる。準備とはいえ、負けないように」
「はいっ!!」
「じゃあ先輩たち来るまでトイレくらい確認しておけよ」
というわけでトイレを確認しに・・・って、それは競技場入り口のすぐそばにあった。見つけられない方が問題だが、まあうちの部員ではそれも危ういか。
「てかさ、アーチェリーっていきなり関東予選からなんだね」
「確かに普通は区とか市だよね」
「それくらいアーチェリー部自体が少ないんだ」
阪東や末吉たちの会話にすかさず水本が入って解説する。ここでもいつも通りの光景だ。
「みずもと~。さっきからキャリケースみたいなの持った人多いけど、ここって観光名所?」
「あれは、弓具ケースだな」
「ってことは選手?」
「ああ。しかもあの黄色のジャージは國武大付属高校」
「うわ~私立か~」
「つえーの?」
「男子の絶対王者」
水本は冗談なんて言わない。けど、絶対王者ってまじ? だって俺たち参音だって全国目指せるレベルなんでしょ? あんまりぴんとこない。
「そっかー。男子は大変ねー」
「女子には欧園大付属女子高校がいる」
「どっちも私立かい!」
「んだお前ら。スポーツは金でやるもんじゃねえぞ」
実力者の阪東がそう言うが「でもアーチェリーは、空手よりはお金がかかる」と、飛田さんが冷静に現実をぶつける。「後は学校としても、場所の管理は簡単じゃない」水本もそう続けた。
「てことは参音って結構すげえんだな」
「うちは都から強化指定校になってる」
「後は、廃校を使わせてもらってるよねー」
「そして南折先生の存在も大きい」
「南折先生って、すごいの?」
「あの人は──」
その時背後から近づく複数の足音、そして大人の声。
「南折先生、お久しぶりです」
「ご無沙汰してます。能院先生」
南折先生が腰を曲げて、頭を下げた。その相手は熊のように大きかった。がっちりとしてて、ずっしりとしている。
「あの人、能院先生は元日本代表のコーチ」
「え!?」
「そして南折先生にアーチェリーを教えた人」
「ええ!?」
どこまで実話がベースで、どこからがフィクションか。読みながらそれを考えてもらっても面白いのかなと、思います。