表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/25

15話 猿腕



 全員が近射に立てないから、ラインの後ろからみんなを見ている時間もある。正直アーチェリーはそんなに疲れ──


 「げんじー」

 「な、なに?」


 陽気な末吉さんが真面目なトーンで僕を呼ぶ。こちらもそれに合わせて応じるが、彼女は急に腕の内側を見せてきた。


 「腕、こうして?」


 肘の部分をくっつけようとしてる?


 「こ、こう?」

 「あー。げんじはつかないかー」

 「末吉さんは肘が付いてるね」

 「付くと()()なんだってー」


 彼女は明るい声で笑顔を見せる。その直後のため息が僕は気になった。


 「さるうで?」

 「そう、さっき芝田先輩が教えてくれた」

 「さるって、あの猿?」

 「そうなんよ。なんか嫌だよね」

 「でも、それがアーチェリーに関係あるの?」


 二人で話していると肩に手が置かれた。芝田先輩の軽い手ではなく、重い手。


 「猿腕だと、弦が腕に当たりやすくなるな」

 「も、森長先輩」

 

 少し話過ぎたかな。注意されると思ったが、副部長の先輩はそのまま猿腕について話す。


 「猿腕は女子に多いらしいぞ。男子でもたまにいるけど」

 「あんまり良くないってことですか?」

 「射ったあとの弦が腕に当たると、矢がずれる」


 猿腕は肘が横に広い。弓を押す側の腕が出っ張っているようなイメージか。放たれた弦がその肘に当たると・・・確かに飛んでいく矢に影響がありそうだ。


 「先輩私、アーチェリーむいてないですか?」

 「そんなことない。猿腕は射型次第で克服できる」

 「射型ってそんなに種類が?」 

 「ああ、立ち方だけでも3つはある。そこからそれぞれの射型になるからな~」

 「人の数だけある的な!?」

 「そうだな。でもまずは基本の型でやれよ」

 「はい!」

 「末吉は今、腕に当たるのか?」

 「さっき芝田先輩に教えてもらったので、これから近射で見てみます」

 「白花は?」

 「僕は、大丈夫です」

 「そうか。じゃあ二人とも頑張れよ!」


 森長先輩はそのまま50mのシューティングラインへ向かう。 

 アーチェリーの話をこんなにしたのは初めてかもしれない。先輩や誰かと話すのも楽しいけど、アーチェリーのことを話せるようになるのも楽しいな。

 そうだ、青野くんが見張り方帰ってきたら猿腕のこと教えてあげよう。


 「次! 見張り誰だ!!」


 緒田先輩が怒鳴る。もちろん部長は怒っていないし、怒鳴っているつもりもないんだろう。けど、あの人の声は背中が伸び・・・


 「すいませーん! 僕です!」


 忘れてた! 青野くんの次は僕じゃないか!


 「白花見張り行ってきまーす!」

 「行ってらっしゃーい」


 良いな、長距離のシューティングライン。僕も早くここに立ってみたい。

 30mの的を過ぎた時、青野くんとすれ違った。


 「お前また見張り忘れたろ」

 「あ、青野くん!猿腕のこと聞いた?」

 「あー。これだろ?」

 

 青野くんの肘はついていた。猿腕は女の子が多いって言ってたけど、彼も猿腕だったのか。


 「言われて気が付いたんだけど、俺の肘も弦に当たってるらしいわ」

 「す、末吉さんもそうらしいから聞いてみたらいいかも」

 「でもあいつ猿よりうるさいじゃん」

 「お、怒られるよ」

 「ははは、ありがとな白花」


 男子では珍しい猿腕がこんなにあっさり見つかるなんて。しかも青野くんだった。

猿腕だけでアーチェリーのすべてが決まるわけではないです

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ