13話 目指せグリーンバッジ
白花視点と青野視点で物語は展開されます(今更)。
アーチェリー部に入部して2週間。学校にも部活にも慣れて来た。そんな頃。
「白花、一緒に弁当食おうぜ」
お昼休憩に入ると同時に青野くんに誘われた。
「良いけど、どうして廊下に行くの?」
「他の部員とも一緒に食べたらどうかなって」
あの時もそうだった。青野くんは誰とでも仲良くなれる。いや、誰にでも話しかけられるんだな。僕は2週間経った今でも部員の名前を覚えるので精一杯。クラスの人は・・・もう少し時間がかかりそう。
連れて来られたのは4組の教室。確かここには阪東君、村山さんと末吉さんの3人がいる。だから4組で集まって食べるらしい。ちなみに水本君と飛田さんは1組と2組。2人はまだ来ていない。
「おせえよ青坊。わびに午後の紅茶買ってこい」
「じゃー私はミルクティーで」
「ば、阪東のは冗談に聞こえないんだよね~」
「てか、あの子来てなくない?」
「飛田さん?」
「水本の野郎もいねえじゃねえか」
「ああ、2人は見つからなかった」
「優等生はいそがしいのかなー」
射場ではこうして何気ない会話もできない。別に少しくらいの雑談は良いけど、先輩たちやあの顧問の先生がまるで見張っているようで、遠慮してしまう。
怒られるっていうよりかみんな集中してアーチェリーをするから、自然と静かになる。それに頭になんども詰め込まれた教えがある。それは──
アーチェリーは人が死ぬ可能性がある競技だってこと。
僕たちが使っている道具はアルミ缶も容易く射抜く。重ねた畳も貫通する。だから射場の雰囲気は体験入部のときと違って、ぴりついている。
着替えるときとか、帰りくらいしか気を抜いて話せないから、お昼にこうして食べるのも意外と悪くな──
「白ちゃんは自信ある?」
し、しろちゃん!?
「自信って、な、なにがですか?」
「グリーンバッジだよ」
「あ、ああ」
「30mなんて俺ら射ったことねえし、わかんねえよな白坊」
「白花ってニックネームいっぱいあるんだな!」
「訂正をお願いするのもめんどくさいよ」
青野くんと常にいる僕は、こうしてみんなとも打ち解けることができた。彼には言っていないけど、とても感謝している。
「グリーンバッジって、30mで何射だっけ?」
「36射で200点以上でグリーンバッジって、芝田先輩が言ってたよ」
「てことは・・・1射あたり──」
「6点。内側の青色以上で取れるよ」
「詳しいんだねしらぼー」
「む、村山さんまで・・・」
僕たちはまだ近射しか射っていない。ただ1人、水本君を除いて。
「み、水本君なら余裕だろうね」
「でも6点以上なら俺たちでもいけそうじゃね?」
「青野くん射ったことないでしょ?」
「だって満点とらなくて良いんだろ?」
「あー。テストで平均点を目指す的な?」
「そうそう」
「言われてみりゃそうだな」
満点を取らなくても良い。確かにそうだね。なんか僕でも出来そうな気がしてきた。
でも──僕はどうせなら真ん中を射ちたい。それに30mじゃなくて、もっと遠くの距離も。