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11話 参音高校アーチェリー部



 視聴覚室のホワイトボードに書かれたのは、南折恩という名前。読めそうで読めない。けれどそれを書いた本人に聞く勇気は俺になかった。


 だってこの南折先生の見た目は怖い。アゴに蓄えたヒゲと、室内でもかぶるハット。振り向きざまに腰から銃を抜いても不思議じゃない。


 「ジゲンっぽくね」


 どこからかそう聞こえたけど、俺もそう思う。

 きっと髭がなければもっと若く見れるんだろうな。にしてもこんな恐ろしい人が──


 「アーチェリー部顧問の南折恩(みなみおりおん)です。長いから南でも恩でも良いです」


 顧問の挨拶から全部員の自己紹介が始まった。

 まず3年生は男女合わせて4人。部長の緒田先輩。副部長の森長先輩。クールな黒髪の水本先輩。そして芝田先輩。


 で、なぜか2年生はいなくていっきに1年の俺たちの番。

 男子は俺を含めて4人。女子は3人。合わせて7人。


 あんなにたくさんいた体験入部の人数からは予想外の入部者数。だが芝田先輩いわくこれが普通らしい。とりあえずみんな面白そうだから弓を引きにくるんだとか。


 「じゃあまずは奏から」

 「はい」


 緒田先輩の指示でホワイトボードの前に立ったのは、見覚えのある1年。白花に素引きを教えてくれたクールなやつだ。

 

 1年なのにあの射場で先輩たちと一緒に準備にまわっていた。俺たちよりも先輩たちと親しそうな彼。


 「1年の水本奏(みずもとそう)です。中学の終わりから参音で練習してたので、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。分からなかったら俺にも聞いてください」


 それは嫌味ではなく親切さだった。でも、闘志も感じた。汗なんてかかないような雰囲気なのに、内面はあれで結構、燃えそうなやつ。


 「ちなみに()()()です」

 「です」

 「あ~。だから苗字が一緒なんですね!」


 水本奏は水本先輩の弟だった。なるほど、クールな感じが確かに姉弟だ。だから中学の終わりから練習に来て、アーチェリーもわかるのか。


 「じゃあ次は、そこのでっかい子!」

 

 この場で一番大きいのは芝田先輩。でも今指名された彼は2番目に大きい。そして森長先輩にも劣らないごつい体格。ラグビーとかアメフトの方が良かったんじゃないか。


 「阪東和沙(ばんどうかずさ)。天下を取る男。よろしくっす」

 「ビッグマウスいいねー!」


 芝田先輩がそう言うと、ホワイトボード横に座っていたジゲン・・・南折先生がニヤりと笑った。


 「阪東は中学のとき空手で全国ベスト8だ。ビッグマウスでもない──かもしれないぞ芝田」

 「ま、マジすか・・・」

 「まじっすよ先輩」


 先生の補足に、俺を含めた全員が息をのんだ。水本奏と言い、なんなんだ。なんか俺よりすごいやつばかりいないか!?


 あ、でも────白花は違うか。


 「し、白花弦士です。早く遠くの的を狙いたいと思います」


 奏、阪東と続いたけどようやく普通の──


 「彼、射型綺麗だったな」

 「へー。森さんが後輩を褒めるなんて珍しい」


 先輩同士の会話が聞こえてしまった。ただ、それだけ。聞こえただけだ。


 「じゃあ次は・・・青野!」


 席を立ち、視線を集めホワイトボードへ向かって行く。クラスでやった自己紹介に比べれば人数は少ない。けど、注目度がすごいな。的の気持ちってこんな感じだろうか。


 「青野平華です。俺は誰よりもたくさん、矢を射ちたいです!」


 全員の前に立って初めて理解した。アーチェリー部では部員みんなが仲間で、対戦相手なんだ。だから先輩たちですらこんなに、俺を見る目が鋭いのか。


 まるで獣に囲まれて、狙われているような感覚。

 ターゲットになったらダメだ。俺もアーチャーとしてみんなを狙うくらい強い気持ちで臨まないと。

当時の僕には顧問(南折先生)が次元に見えていました。ちなみに先生の名前の由来は、先生が好きな偉人です。物語のどこかでそんなエピソードもでるかもしれません。

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