7話 悪い人じゃない
今日も射場は体験入部の青色ジャージの群れであふれていた。ぶっちゃけ白花1人いてもいなくても、変わらないなこりゃ。
「僕、ジャージないから帰るねごめ──」
「アーチェリーは制服でも出来るんだぜ?」
舌をまくし立てた勢いで帰ろうした白花の肩をがっちりつかむ。振り返ったこいつは残念そうな顔で「・・・そうなんだ」と、一言。
こいつ今本当に帰ろうとしたな?
「おー。あおのっち」
「芝田先輩、お疲れ様です」
今日もパイナップルの服か。しかも半袖って、この人だけ夏だな~。
「あおのっちの友達?」
「は、はじめまして。白花弦士って言います」
「しらばっちはアーチェリー興味あるの?」
「初日から青野君がしつこいので、来ただけです」
頬が膨らんだ白花はきっと怒っている。でも、そんなこいつを見て芝田先輩は手を叩いて笑った。白花の肩も叩いてどうやら気に入ったらしい。
「いいねしらばっち、意外と芯があるじゃん!」
「・・・そ、そんなつもりは」
「よろしくねしらば・・・げんじっちの方が良い?」
「白花でお願いします」
「おっけー。じゃあ早速近射いくぞしらばっち」
芝田先輩はスキップして射場へと向かっていく。誰もついていく者はいない。
「青野君?」
「言わなくても分かるよ白花」
「僕、あの人苦手かも」
「まあ......悪い人じゃないから」
「青野君と同じだね」
「え?」
「僕、着替えてくる」
「お、おう」
────は!? あいつ、ジャージ持ってたのかよ!
白花くんもちゃっかりしている子です