19 盛りバナ
そしてそれからも、私なりの異世界乙女暮らし。
乙女の敵を成敗しちゃったり、
乙女のお悩みを解決しちゃったり、
乙女なデートを満喫しちゃったり。
不肖秘崎萌乃果、割とイケてる乙女しちゃっております。
ただひとつだけ気がかりなこと。
みんなが頑張っているセミナー講師としてのお仕事が、
なぜか私には来ないのです。
「そんなの当然ですって、モノカ」
なんでなのさ、ネルコ。
「『武神』で『特使勇者』で、それに今は『特攻勇者』なんですよ」
「そんな盛り過ぎ乙女なんて、気軽に講師として呼べませんって」
街で会った人たちは、結構気軽に話しかけてきてくれるんだけどな。
「噂や評判じゃなくて直接モノカと向き合えば、全然盛ってないって一目瞭然なんですよ」
そうだよねって、どこ見て言ってるのさ、ネルコッ。
「いつでもいつまでも、安心と信頼のモノカクオリティな乙女プレイス、ですよっ」
なんだよぅ、私だってまだ成長をあきらめたわけじゃないんだぜっ。
きっといつかは揺れっぷりだけで周囲のまなざし独り占めな盛りガールしちゃうんだからなっ。
「お互い虚しくなっちゃうので、話題を逸らしちゃっていいですかっ」
逸らしたって問題は解決しないけど、
『イケてる感じで前を向いて進んでさえいれば、問題を置き去りにして少しでも先に行けてるんです』
って、イヴさんも言ってたっけ。
「その通り!」
「って言うか、早いとこイヴさんを採寸したいんですけどっ」
えーと、外交問題になっちゃうから、くれぐれも慎重にね。
「なんか私たちの周りってやたらとやんごとなき御身分の方々が多くて、快適な採寸活動に支障が生じちゃってるんですよね」
それはどうでもいいけど、シナギさんの平穏な生活に支障が生じちゃってるのが心配だよ。
「ひどいですよモノカ、あのファッションモデル体型とグラビアアイドル体型のいいとこ取りしちゃってるイヴさんのナイスバディ、採寸したいとは思いませんかっ」
なんだよぅそれ、イヴさんの方がよっぽど盛り過ぎ乙女じゃん。
「とりあえず、フィアンセのいるリア充乙女は愚痴もおのろけも禁止、ですからねっ」
そんなこと言ってると、アランさんの目の前でその眼鏡外しちゃうからな。
「人を生け贄扱いしないでくださいよぅ」
生け贄扱いはいけねえ、なんちゃって。
てな感じの呑気乙女しちゃうほどの平穏な毎日。
まさに『異世界とっても良いところ』なのです。
乙女暮らしを覗いてみれば
華も嵐もてんこ盛り
あっちを見れば名峰双丘
こっちを見れば大平野
それがどうした成長期
ひがみは禁物そねみはお荷物
どうせだったら前を見て
陰気蹴散らし槍乙女
不肖秘崎萌乃果
たまにはこっそり
ぴかり変身特攻勇者
「お母さんっ、大変だよっ」
どしたマクラッ、
さては『召喚魔王アライヤン』復活のお知らせ!
「えーとお母さん、これ見てっ」
なにかな、そのチラシ。
『速報! あの舞台版特攻勇者ノノカ エルサニア文化会館で公演決定!』
なにそれっ、聞いてないよっ!
あとがき
リヴァイスという世界は、ひとりの少年がプレイしている仮想現実ゲームです。
彼は長い時間この世界を旅するうちに『鏡の賢者』と呼ばれる存在になりました。
お供のメイドさんは『伝説のメイド』と呼ばれております。
ここで暮らしている人々はいわゆるAIですが、それなりに大変なこの世界を楽しく生きているみたいです。
リヴァイスの物語は、そういう人々のあれやこれやを短編として紹介するものとなりそうです。
iPadのメモ帳につらつら溜め込んでいたショートストーリーや小ネタをひとつの世界にまとめようとしたら、こういう設定になりました。
整合性や何やらいろいろアレですが、お話しがまとまり次第投稿したいと思っております。
楽しんでいただけたら幸いです。




