17 懇談
大盛況だった舞台も終わって、今は懇談会の真っ最中。
広いエルシニア野外劇場を目いっぱい使ってのバーベキュー大会です。
出演者やスタッフだけじゃなく、私の仲間たちみんなも来てくれて、子供たちや保護者の方々をお世話してくれております。
「さっきの必殺技、ちょっとやり過ぎでしたよ、モノカさん」
何をおっしゃるアランさん。
ってか『ゼファーブラック』ってなんなんですかっ。
「『ゼファール』とまともに打ち合える武器なんて無いでしょうって、アリシエラさんが貸してくれたんですよ」
「それに、アレで必殺技を防がなきゃ、マジで危なかったんですって」
いえいえ、最後の技はちゃんとセーフティーモードでぶっ放しましたんで、奥さま四人を未亡人なんかにさせませんって。
「さっき『ゼファーブラック』を調べてたアリシエラさんが青い顔してましたけど」
……
「えーと、俺も宴会、楽しんできますね」
お疲れさまでした、アランさん。
やっぱり『モンスター』へのお仕置きは、奥さまたちにお任せしたほうがよろしいようですね。
えっと、保護者のお母さまたちをガン見しちゃダメですよ。
「すまん、モノカ」
「先ほどは、どうにもやり過ぎてしまった」
いえいえ、シスカの気持ち、ちゃんと理解してましたよ。
お芝居とはいえ、えっちっち魔王の手下なんて守護騎士として屈辱ですよね。
「本当にすまない」
「エルミナを見るアランさんのまなざしに気付いたら、歯止めが効かなくなってな……」
大丈夫ですよ。
リリシアさんたちもあのシーンはばっちり見てくれていましたから。
ちゃんとがっつりお仕置きしてくれますって。
「では、リリシアさんたちに相談するとしよう」
お疲れさまでした、シスカ。
保護者のお父さまたちからガン見されちゃってますから、衣装の上にもう一枚羽織った方が良いですよ。
「お疲れさま、モノカ」
お疲れ、ノルシェ。
MCしたり舞台に立ったり、大変だったね。
「いいえ、子供たちの声援が何よりの力、ですよっ」
「それに、ノルノルに人気があった事が分かって、すっごく嬉しいですっ」
だって漫画版のノルノルってノルシェそのまんまでしょ。
人気があって当たり前だって。
「……」
「それじゃ、もっとファンサービス、頑張ってきますねっ」
無理せず楽しんできてね、ノルシェ。
保護者のお姉さまたちから狙われてるみたいだけど、大丈夫だよね。
「お疲れさまでした、モノカさん」
お疲れさまって、ツァイシャ女王様!(小声)
こんなところで私服でお供もつけずになにやってるんですかっ。(小声)
「だって、この公演って今回限りなのでしょう」
「見逃すわけにはまいりません」
「クリシアといっしょに、応援していたのですよ」
誰かお供できそうな人を急いで連れてきますから、ここから動かないでくださいねっ。(小声)
「平気です、こう見えて魔法の方はちょっとしたモノなんですよ」
ちょっとじゃいけないってこと、分かってるでしょ。(小声)
って、あれ?
もしかして後ろで笑ってるの、イヴラシュカさん!(小声)
「エルサニア城のメイドとして、ツァイシャ様の密着ガード中なのですよ」
今まで気配に気付けなかったなんて、もしかしてイヴラシュカさんてかなりの使い手……
「メネルカの気配隠蔽魔法とミナモ先輩の気配隠匿術の組み合わせ、結構凄いでしょ」
凄いなんてもんじゃ無いですよ、それ。(小声)
なんだかシナギさんの気持ちが理解できちゃったよ。
奥義流出、ダメ、絶対。
「それでは、もっと子供たちと触れあいましょう」
「あら、クリシアはどこかしら」
「失礼しますね、モノカさん」
「あと、ちゃんと私のこと、イヴって呼んでくださいね」
お気を付けて、ツァイシャ様、イヴさん。
えーと、なんだかどっと疲れが溢れてきちゃったよ。
なんか飲み物でも……
あー、なんだか居そうな気がしてたんだよな。
こんにちは、けんちゃん、アヤさん。
おっと、フィナさんとセシエリアさんもご一緒でしたか。
こりゃいかん、積もる話しの邪魔しちゃいかんよ。
「平気だよ、モノカさん」
「けんさんもアヤさんも、生きてさえいれば会えるけど、ここで味わえるご馳走は今だけだからねえ」
相変わらず美味しそうに召し上がりますね、フィナさん。
セシエリアさんもお疲れさまです。
って『うめしそ』持参ですか。
「そりゃそうだよ、みんな子供たちのお世話で大忙しなんだから、せめて僕の料理を用意する手間は減らさないとね」
お気遣い感謝です。
エルシニア料理も美味しいですよね。
「本当だねえ。 けんさんももっとたくさん食べて、もう少しお肉をつけた方が良いんじゃないかな」
「いえいえ、あまり食べ過ぎちゃうとアヤさんに叱られちゃうので」
なんですかね、このほんわか空間。
アヤさんもセシエリアさんもにこにこですね。
「人を幸せにする魔導具だったら、大歓迎なんですけどね」
それってロイさんと全くおんなじセリフですよ、けんちゃん。
みんなで、苦笑。




