01 有名税
『リヴァイス 38 若先生の真っ直ぐな迷走』の続きで、
特使勇者モノカのお話しです。
お楽しみいただければ幸いです。
私は、モノカ。
特使勇者の秘崎 萌乃果 (ヒメサキ モノカ)です。
特攻勇者の雛巻 野々華 (ヒナマキ ノノカ)ではありません。
最近ちまたで大人気なあの本のおかげで、いろいろと困ったことになっちゃってます。
なぜかこの異世界で記録的なブームを巻き起こしてるというアレ。
『特攻勇者ノノカ』
これまで私がやらかしてきた冒険の数々は、特使勇者の活躍として世間様にそれなりに知られておりました。
ところが、例の『冒険者絵姿カード』ブームで子供たちの間で尾ひれふりふりで広まって、
今度は『特攻勇者ノノカ』の主人公としてめっちゃ大ブレイクしちゃいました。
いや、モノカとノノカは別人ですよなどという真面目な説明なんて、もはや誰も聞いてはくれません。
街を歩けば大人たちから本へのサインをお願いされて、
子供たちからは変身してとおねだりされる毎日。
有名税なんだから胸を張って受け止めろ、などと言ってる場合ではないのです。
そもそもこちとら張る胸なんざ持ち合わせちゃいねえんだよっ、てな感じの逆ギレ上等な気分。
もちろん慕ってくれる子供たちの前で、そんな醜態をさらすわけにもいかず、
良い子たちの憧れのヒロインとして品行方正に過ごすことを強いられる日々。
あかん。
今の私は、ストレスが満タン突破で爆発寸前のデンジャラス乙女。
人前で『ゼファー』ぶんぶん大暴れしちゃう前に、なんとかせねば。
やはりここは、問題の根っこからアレする必要があるかと。
著者の『しらたき』先生ことシクレさんに相談して、原作に手を加えてもらう方向で。
というわけで、急ぎアルセリア王都城下街在住のシクレさんのお宅へと向かう私。