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赤毛の伯爵令嬢  作者: もも野はち助
【本編】

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14/21

14.新しい名前

 オーデント家からセントウレア家が所有する別荘までは、馬車で大体一時間前後掛かる。その間、クレアは自分の今後について色々と考えた。


 これから養子となるセントウレア侯爵家だが、夫人がジェラルドの母親の妹である。

 つまり前王妃の妹である女性が、今後クレアの養母になるということだ。

 コリウスの話では、幼少期から容姿の所為で人前に出る事を避けていたジェラルドを何度も預かったりしていたのが、このセントウレア侯爵夫妻らしい。

 侯爵夫妻は、ジェラルドにとっては第二の両親といった感じなのだろう。


 今後、新たにクレアの父となるのがセントウレア侯爵でもあるフロックス卿。

 そして母となるのが、ジェラルドの叔母であるハリエンヌ侯爵夫人。二人共、実父であるセロシスよりも一回り近く年上だそうだ。

 養父母夫妻には成人した息子が二人おり、クレアどころかジェラルドよりも年上らしい。


 長男はフェリックスといって、すで妻帯者だそうだ。

 現状は父親のフロックス卿から次期領主になるための指導を受けているそうだ。

 その妻でクレアの義理の姉になるのが、アンジェリカという元伯爵令嬢。


 次男はノックスといい、現在は東の大陸に留学中で、あと二年は帰って来ないそうだ。

 しかも婚約者を伴っているらしく、この二人に関してはクレアがセントウレア家に滞在中に会うことはできないらしい。


 つまり養子縁組後のクレアには、新しい両親以外にも兄が二人、義理の姉が一人、そして未来の義理の姉が一人増えるという事になる。

 長女という立場で十七年間過ごして来たクレアは、急に末っ子という立場になることに戸惑いを感じていた。


 そしてそれ以上に不安なのは、アストロメリア家でジェラルドの補佐役をこなさなくてはならない事だ。この時、自分はどうジェラルドと向き合えばいいか、クレアには不安しかなかった。


 自分はジェラルドに対して間違いなく好意を抱いている。

 だがそれはイアルがティアラに抱いていたような静かで情熱的な感情ではない。

 身分や自分の置かれている立場上、その気持ちを隠し続ける事は、簡単ではないがやろうと思えばクレアには出来るはずだ。


 だが、もし夜伽の相手を求められたら。

 その後、ジェラルドが正式に妻を得る日がやってきたら。

 恐らくクレアはジェラルドの傍にいることが苦痛になるだろう。


 それよりも、まずジェラルドの意志で養子縁組を頼まれたセントウレア家の人々が、中堅クラスの伯爵令嬢だった自分をすんなり受け入れられるかが心配である。

 コリウスの話では、クレアは三ヶ月ほどセントウレア家で侯爵令嬢としての振る舞いと、ジェラルドの補佐役として必要な知識を学ばされるらしい。


 正直、礼儀作法に関してはティアラの当て馬役をしていた為、あまり問題はないかと思われる。

 だが、補佐役に関しては父の領内の仕事を手伝うくらいしかしてこなかった。

 その状況で、最低でも三カ月以内に公爵の補佐役としての知識を身につけなくてはならない。


 一時間も一人でいる時間を得てしまったクレアは、この先の未来に対して、悪い方向にしか考えられなくなっていた。

 そしてそれらの考えは、どんどん不安を交えて広がっていく。

 そんな負のループに囚われていたクレアにとって一時間はあっという間で、気づけば目的地に到着していた。


「クレア様、お手をどうぞ」


 手を差し出してくれたコリウスにエスコートされながら、クレアが恐る恐る馬車を降りる。

 すると初老の執事らしき男性と侍女長らしき女性が、その後ろに若い侍女二人と共に彼女を出迎えてくれた。


「クレア様、ようこそお越しくださいました。こちらでは、セントウレア家のお屋敷に行かれる前にお召し替えをしていただきます」

「それではハリエンヌ侯爵夫人は……」

「奥様はこちらではなく、領内のお屋敷にてクレア様をお待ちしております」


 そう言って執事らしき男性に促され、クレアは屋敷の中へと案内された。

 屋敷内の装飾は華美ではないが、どれも品の良い物で飾られている。

 別荘でこれ程なのだから、本宅は一体どれほど豪華なのだろうかと、再びクレアの不安が募る。

 するとある部屋の前まで来たところで、執事らしき男性の説明が入る。


「恐れ入りますが、クレア様には侯爵夫妻がご用意されたこちらのお召し物に着替えいただきます。なお現在着られているドレスや装飾品類、そしてお手荷物は我々が責任を持ってアストロメリア家のお屋敷にお届けしておきますので、ご安心ください」


 その言葉にクレアが焦り出す。


「あの! 身に着けている装飾品も全て預けなくてはなりませんか!?」

「はい。閣下よりそのように指示をいただいてますので」

「そう、ですか……」


 実はこの日、クレアは母から貰ったガーネットのブローチをしていた。

 身に着けていれば、そのまま所持品として扱われないと思ったからだ。

 だが現実はそんなに甘くはなく、部屋の中に入ったクレアは侍女三人掛りで予め用意されていた淡いグリーンのドレスに着替えさせられる。

 その際、ため息をつきながら、そのガーネットのブローチを丁寧に専用の小箱に入れ、預ける鞄の中にしまった。


「あの、そのブローチはもしや何か思い入れの深いお品物ですか?」

「実母から貰ったブローチなの……」

「さようでございましたか……」


 質問にクレアが淋しそうに答えると、侍女は申し訳なさそうに口を閉ざす。

 その気まずい空気の中で用意されていたドレスにクレアが袖を通す。

 すると、事前に見繕ったかのように赤毛と相性の良い色合いのドレスだったため、クレアは驚きの表情を浮かべる。

 どうやらセントウレア家の人々は、養子となるクレアを煙たがっていない様子だ。


 それらの待遇で、少なくともこれから三カ月間過ごすセントウレア家での暮らしは、そこまで心配する必要がないかもしれない。

 出来るだけ前向きに考えたクレアは、少し休憩をさせて貰った後、更に一時間掛けて、本当の目的地であるセントウレア家の本宅へと向った。


 この一時間でクレアはなんとか気持ちを切り替え、今後セントウレア家で自身がどのように振る舞うべきかに考えを集中させた。

 この着替えさせられたドレスから考察すると、恐らくジェラルドが相当クレアの人間性等を過大評価して、侯爵家の人々に伝えた可能性がある。

 となれば、クレアはあまりボロを出す事が出来ないという事だ。


 そんな対策を考えつつも気合を入れて挑もうとしていたクレアだったが、目的地に着き、ジェラルドの叔母ハリエンヌの部屋に通された際、クレアが挨拶をした瞬間、その気合は一瞬で彼方へと吹き飛ぶ。

 ハリエンヌが、挨拶後のクレアにいきなり抱きついてきたのだ。

 とても二十代半ばの息子がいるとは思えない若々しさと、気品あふれた美しい女性に抱きつかれたクレアは、一瞬目を白黒させた。


「ああ! やっと会えたわ! ジェラルドから聞いていたけれど、本当に素敵なお嬢さんね! まだ若いのにしっかしていらして……。わたくし、ジェラルドから養子縁組を頼まれてから、ずっとあなたの事を待っていたのよ?」

「お、恐れ入ります!」


 あまりの予想外の歓迎ぶりに驚き、若干引きつった笑みでクレアが答える。

 しかし次の瞬間、ノックも無いまま急にクレアの背後の扉が大きく開かれた。


「お義母様! オーデント家のご令嬢は、お見えになったの!?」


 そう叫びながら入室してきたのは、アッシュブロンドに目力のある青い瞳の二十代半ばくらいの女性だ。見るからに気が強そうである。

 そしてクレアを見るなり一言、こう叫ぶ。


「まぁ! なんて見事な赤毛なの!?」


 その瞬間、クレアは一気に凍りついた。

 赤毛は世間的には賛否両論の髪色である。

 好きな人は本当に好きだが、嫌いな人だと陰口を叩く人間もいるのだ。

 そしてこの女性は、恐らく長男であるフェリックスの妻アンジェリカだ。

 早くも上手くやっていく自信を失いかけたクレアだが、なぜかアンジェリカはカツカツと靴音を立てながら、勢いよくクレアのもとへやって来た。

 そして目の前までくると、彼女の赤毛を両側から優しく両手で掬い上げる。


「ああ……なんて綺麗な色なのかしら! 赤毛ってこう凛とした印象がとても素敵よね。あなたの髪色がとても羨ましいわ!」

「アンジェ! クレアが驚いてしまっているでしょ!? 全くあなたは!」

「あら、ごめんなさい。あまりにも見事で素晴らしい赤毛だったから……。クレア嬢、私はこれからあなたの兄となるフェリックスの妻アンジェリカよ。これから三カ月間、よろしくお願いするわね?」

「クレア・オーデントと申します。こちらこそどうぞよろしくお願い――」


 すると、クレアが言い終わらぬうちにハリエンヌが場を取り繕うように咳をした。


「クレア? もうあなたの家名はオーデントではないのよ? 今後名乗るときは『クレア・セントウレア』と名乗りなさいね?」


 その言葉にクレアの中で嬉しさと悲しみが同時になだれ込んでくる。

 嬉しいのは、新しい家族が自分をすぐに受け入れてくれている今の状況。

 悲しいのは、今まで一緒に暮らしてきた家族と縁がなくなってしまったことを痛感してしまった心境。

 一瞬だけ嬉しさと悲しさで複雑な心境に陥ってしまったクレアだったが、すぐにハリエンヌに笑みを浮かべながら返答する。


「はい! お母様(・・・)


 この瞬間からクレアは、新しい家族との生活を受け入れようと決意した。



 その後、夕食まで三人でお茶を楽しんだクレア。

 話題の殆どはクレアの事についてで、二時間もの間、クレアは二人に好物や好きな色、好みの音楽など、質問責めにされてしまった。


 そして夕食の時間になると、セントウレア侯爵ことフロックスとその息子の長男フェリックスも食堂に集まり、ここでもう一度自己紹介が行われた。


「初めまして。私の可愛い娘のクレア。今後は私が君の父親として君の将来を見守らせて貰うよ?」


 そう声を掛けてきたのは、この屋敷の主であるフロックスだ。

 妻であるハリエンヌに負けないくらいの品ある雰囲気をまとい、容姿も素敵なロマンス・グレーな侯爵だ。

 恐らく若い頃は、ハリエンヌとセットで美男美女と噂されていたに違いない。


「父上はまたそういうご婦人受けしそうな言い回しを……。クレア、初めまして。君の兄になるフェリックスだよ? あの人間不信の塊みたいなジェラルドが絶賛していたご令嬢だから、どんな子なのか会うのを凄く楽しみにしていたんだ! でも確かに君なら従弟も気に入ってしまうのも納得だね!」


 次に話しかけてきたのが長男フェリックスだ。

 年齢は確かジェラルドの兄である現国王の一つ下だと聞いている。

 ジェラルドと国王は六歳差なので、フェリックスは今年で二十七歳になるはずだ。

 堅物の従兄弟とは違い、明るく社交性のある雰囲気をまとっている。


 そんな夫の茶化すような内容に妻のアンジェリカが反応する。


「ジェラルド閣下って、そんなに人嫌いなの?」

「凄いよー? 十歳くらいまでは、人と目が合うと射殺さんばかりに睨みつけた挙句、そのまま脱兎のごとく逃げ出していたからね。それから三年間は、知らない人が来る度に部屋に閉じこもって鍵かけちゃうし。でも途中から急に人と会う事から逃げなくなったんだ。まぁ、しばらくは威嚇するような態度だったけれど」


 面白おかしく話すフェリックスのジェラルド像は、クレアが知っている彼とは同一人物とは思えないほど別人に聞こえた。

 そのあまりにも落差のあるギャップに唖然としていると、フロックスが更に話をつけ加える。


「そういえばジェラルド閣下は、今の容姿になられたばかりの頃、人間不信だけでなく女性不信も患っていたね」

「父上! それは女性不信ではなく、女性恐怖症ですよ! ジェラルドは今の美青年容姿になってから、初参加した夜会で物凄い数の令嬢達に囲まれ、以来若い女性の多い夜会には、一切参加しなくなりましたから!」


 そう言ってゲラゲラ笑うフェリックスをハリエンヌが窘める。


「フェリックス! 食事中にゲラゲラ笑うなんてはしたないわよ! 見なさい! クレアの中のジェラルドのイメージが、すっかり崩壊してしまったわ!」

「い、いえ、そんなことは――――」

「母上、女性は完璧な男性よりも欠点のある男性の方が、愛嬌があって魅力的に見える物ですよ? アンジェだってそう思うよね?」

「ええ! だからあなたを好きになったのよ?」

「アンジェ……それは、褒め言葉かい?」


 そんな楽しい会話展開にクレアは、思わず笑ってしまう。

 お互いがお互いの言葉に上手い返しをするテンポのよいやり取りに。

 それはオーデント家では、あまりなかった状況だ。

 オーデント家では家族間は仲が良かったのだが、家族全員が集まっている時は互いに気の利いた冗談をやりとりすることはなかった。


 それは食事の時の会話が、いつもティアラの独壇場と化していたからだ。

 人と話すのが大好きだったティアラだが、いつの間にか相手を怒らせてしまう為、同性の友人が殆どいなかった。

 その淋しさからなのか、家族が集まる場では矢継ぎ早に自分の好きな事や興味のある事をツラツラと延々と語ってしまう。


 たとえその時、話題になっていた内容が、ティアラが興味のない話だったとしてもティアラは、その話題を無理矢理自分の好きな内容に変えて語り出す。

 家族内ではもうお馴染みなので、全員が幼子をあやすように相槌を入れて、ティアラの話を聞いていたのだ。

だが今思うと、あまり親密度が高くない相手がやられたら、非常にストレスを受ける振る舞いだ。


 そういう部分でも自分は妹をダメにしていたのかもしれない。

 そう思ったクレアは、一瞬だけ暗い表情を浮かべてしまう。

 それに気がついたフロックスが、クレアに優しく声を掛けた。


「クレア。実はジェラルド閣下より、君の以前いた領内で育てられたカモミールをいただいたので食後に皆で味わおうと思っているのだが、良かったら美味しい飲み方を教えてくれないかい?」


 そう言って給仕に目配せをすると、給仕がトレイの上に乗せたマウロ農園のマークが入った袋をクレアに見せる。

 その瞬間、クレアの目がパァーッと輝く。


「はい! 是非」


 そして食後に皆でクレアの勧めた飲み方で、カモミールティーを味わった。

 そんな初日の顔合わせで、クレアはすっかりセントウレア家の雰囲気に心惹かれていってしまった。

 同時に自分の本当の家族に対しては、罪悪感も生まれてしまう。


 新しい家族であるセントウレア家の人々は、全員の社交スキルが高く、会話のやり取りが非常に魅力的だ。

 それはお互い相手の雰囲気を読み取り、それに合わせてお互いが言葉を発している事から生まれるハーモニーのような会話のやり取りだ。


 だが本当の家族であるオーデント家では、いつもティアラ一人が一方的に語っている事が殆どだった。たまにその事で父セロシスがうんざりし、席を立とうとすると、ティアラは必死になってそれを引き留め、更に自分だけが面白いと思っている話を一方的に続けようとする。

 その状況をいつも上手く収め、調整役を買って出ていたのがクレアだった。


 自分が居なくなってしまってから、オーデント家はどうなっているのだろうか。

 心配してももう自分には、どうする事も出来ない事を考えてしまい、初めて迎えたセントウレア家の夜は、クレアにとって眠れない夜となった。



◆◆◆



 翌日、クレアの侯爵令嬢としての教育とジェラルドの補佐役としての修行が始まる。


 初日は侯爵家の用意した教育係によって、まずクレアの礼儀作法や会話術などが確認された。

 だが、この件に関しては「もう教えることはなにもない」と言われ、笑顔で合格判定をもらう。


 次に着目されたのが、クレアがジェラルドの補佐役としてやっていけるかどうかの部分だ。

 だが、この部分は実践を交えながら指導者のもとで学ぶしかない。

 

 そこで、アストロメリア家に行くまでの三カ月間、クレアには養父と義兄の手伝いをしながら補佐役の仕事を少しずつ学ぶことになった。


 しかし二週間もしない内に父フロックスと兄フェリックスは驚くことになる。

 幼い頃から実父であるセロシスの仕事に同行し手伝いも行っていたクレアは、すぐにコツを掴み、早々に即戦力となる成長を見せたのだ。

 これには義父フロックスは大いに喜びをみせる。


 これならばいつアストロメリア公爵家にいっても問題はないだろうと判断した養父は、義兄夫妻の領地視察にクレアも同行させるように提案する。

 その提案にフィリックスの妻アンジェリカが喜びを見せる。

 すっかりクレアを気に入ったアンジェリカは、視察中は終始笑顔を浮かべていた。 


 すると、今までは領民からキツイ性格だと思われていたアンジェリカの印象がガラリと変わる。

 クレアに対して無意識で優しい表情になってしまうアンジェリカの様子は、領民たちの誤解を一瞬で解いてしまったのだ。

 この件で妻のイメージアップを図れた義兄フェリックスは大層喜んでいた。


 そんな数々の成果を見せるクレアを新しい家族たちは、ここぞとばかりに可愛がった。

 中でも一番親身になってくれたのは、ジェラルドの叔母であるハリエンヌである。

 クレアが実の家族のことを思い出して淋しいきもちになっていたり、ジェラルドのもとへ行くことに不安を感じたりしていると、その暗い表情に誰よりも早く気づき声をかけてくれる。

 長女気質で甘え下手なクレアでも、この優しい養母にはすぐに心を開くことができた。


 そんな楽しくもあり目まぐるしい日々を満喫していたら、あっという間に一カ月が過ぎた。

 その間、週に二回ほどのペースでジェラルドから頻繁に手紙が送られてきた。

 内容はクレアの体調や新生活を気遣うようなことが殆どで、一番知りたかったオーデント家やイアルのその後については一切触れることはなかった。


 その為、クレアのほうも何となくその話題に触れられないでいた。

 なによりも今回なぜジェラルドが養子縁組までして自分を補佐役に希望したのか、その真意が分からない。

 そのせいでクレアの返事は、いつも業務報告のような内容となっていた。



 そんな手紙のやりとりを続けていると、クレアがセントウレア家に来てから二カ月が過ぎる。

 その日は珍しくコリウス自らが、二通の手紙を持ってクレアのもとにやってきた。

 一通はクレア宛の手紙、もう一通は叔母であるハリエンヌ宛の手紙である。


 どちらの手紙にも書かれていた内容は今後のクレアの扱いについてだったのだが、それはセントウレア家の人々を憂鬱にさせた。

 なんと手紙には、近々クレアをアストロメリア家に寄越してほしいと書かれていたのだ。

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