着物と縁と神社の神様
「おい…おい…」
誰かが呼んでる?
「いつまで寝てるにゃ!はよ起きんか!」
又助さんの爪で顔を引っ掻かれ、あまりの痛さにパッちり目が覚めた。
どれだけの時間寝てたのだろう、気付けば空は夕焼け色に染まっていた。
「何するんですか又助さん」
「真昼の仕事を見るんじゃろ?もうお客人きとるぞ」
僕は又助さんに連れられ客間に向かった。
客間には真昼さんと神々しいなにかが居た。
真昼さんは着物姿で髪を結い昼とはまるで別人のようだった。
「わかりました。対価として縁を頂きます。」
「ほっほっほ、じゃあ頼んだぞよ」
そう言うとお客さんは光となって消えた。
「なんですか、今の神様みたいな人」
「え?神様ですよ?」
そんな知らないんですかみたいに返されても…
「お客さんって、神様相手にお仕事してるのですか?」
「まあ神様が相談に来ることもありますね、うちは相談所、人ならざる者からは縁を、人から円を対価に頂き、いろんな話を解決してます。」
そう言うと真昼さんは結った髪を解いて、奥の部屋に着替えに行った。
「又助さん」
「なんだにゃ?」
「真昼さんって一体何者なんですか?」
「わしにもわからん」
そうなのか!?
「あやつは賢い、そして読めん。でも一つだけ言えることがある。仕事は完璧にこなす奴じゃ」
そう言うと又助さんは縁側を降りて塀の向こうに飛び越えて行った。
それから10分程経って、真昼さんは可愛い洋服に着替えて戻ってきた。
「着物は好きだけど堅苦しいのよねー」
「そういえば、今回はどんな依頼だったのですか?」
「今回の依頼主は神社の神様なの。今の神主さんがね、ちょっとダメな人みたいで、私に神主になって欲しいんですって。」
「神主になるんですか?」
「さあて、どうしましょうかね」
真昼さんは不適な笑みを浮かべると
「さあ、夕ご飯にしましょ」
いっきに話を変えてしまった。本当に読めない人だ。
夕飯は肉じゃがとほうれん草のお浸し、卵焼きに食後には僕の為にケーキを用意してくれていた。
「石畳ショコラ」って名前のケーキでとても美味しかった。
その晩僕は久しぶりに良く寝れた。良くないものが何も見えないなんて初めてのことだったからだ。
暖かい布団に埋もれ僕はいつの間にか熟睡していた。