放課後相談室
蛇女事件から約一ヶ月が経とうとしたころ、僕が学校に行くと亮二の姿があった。
「亮二もう怪我は大丈夫なの?」
「ああ、まだちょっと痛むけど、医者からはもう登校していいって言われたから大丈夫だ。」
そう言うと亮二は自分の傷を叩いて見せた。
「いててて」
「無理すんなよ!」
「相変わらず本当馬鹿ねぇ」
真朝ちゃんだった。
「あんたまだ怪我完治してないんだから無理しないで!」
「ごめんごめん!あさこも悠河も心配してくれてありがとうな!」
「べ…別に心配なんてしてないけど」
「相変わらずツンデレだなあさこは」
「うるさいっ」
バシッと亮二の傷口を叩くと真朝ちゃんは自分の席に帰って行った。
昼休みになって3人でお弁当を食べてたら真朝ちゃんから相談があった。
「あのさ、二人とも私が部活作ったら入ってくれる?」
「なんだ?あさこいきなりだな?」
「実は先生に相談したら部活作るならメンバーは少なくても3人いないと許可が下りないって言われてさ…」
「ちなみにどんな部活をやるの?」
僕は帰宅部だったし少し興味があった。
「名前は放課後相談室って言って、放課後に生徒のいろんな相談相手になる部活なんだけど…」
「ボランティア部みたいな感じか?」
「まあ、そんな所ね。良かったら入ってくれない?」
「いいよ!」「いいぜ!」
「二人ともありがとう!」
「これで部活作れるのか?」
「あと一つ問題があって、顧問の先生がいないとダメなのよね。梓川先生はテニス部だし、他の先生とはあまり話した事ないからどうしようかと…」
「そういえば」
「悠河くんなんかあてあるの?」
「あてというか、真昼さんと田口教頭先生仲良かったみたいだから教頭先生にお願いできないかな?」
「お姉ちゃんと教頭先生仲良しなの?ちょっと無理は承知でお願いしてみましょうか!」
それから午後の授業も終わり放課後に田口教頭先生のもとを訪ねた。
「教頭先生どうかお願いできないでしょうか?」
「いいですよ!」
「本当ですか?」
なんと二つ返事でオッケーがでた。
「問題児の小春日真昼さんの妹とは思えないくらい、真朝さんはしっかりしてますからね。部活もボランティア部ならこちらからお願いしたいくらいです。」
「ありがとうございます!教頭先生!」
「これで部活申請できるな!」
「二人とも本当ありがとう。じゃ梓川先生のとこに申請書出してくるね。」
そう言うと真朝ちゃんは梓川先生のもとへと向かった。
放課後相談室は翌日から始まった。
まずはポスター作りから。
「放課後相談室。小会議室にてあなたの相談解決します。お悩みのある方は是非お越し下さい。」
「こんなところね。」
二人はこれを学校中の掲示板に貼ってきて!
「了解!」「おっけー!」
7枚近く貼っていたときだった。
後ろから女子生徒に声をかけられた。
「あの?放課後相談室はどんな悩みも聞いて貰えるんですか?」
女子生徒は雲った表情で語りかけてきた。
「大丈夫ですよ!小会議室に部長がいますから一緒に行きますか?」
「はいっ!」
なにか突っかかりがとれたように、表情が和らぐ。
二人で小会議室に向かうと満面の笑みで真朝ちゃんが待ち構えていた。
「あなたが初めての依頼者さんね。とりあえず席に座って」
「はい…」
この感じ、そうか…真朝ちゃんは相談屋の練習をしてるんだ!
「まずは、あなたのお名前は?」
「1年2組の鈴原あかねっていいます。」
指輪を外す真朝ちゃん。目を閉じて集中する。
「お友達関係のご相談ですね?」
「はい!?どうしてそれを?」
「相談屋ですからこれくらいわかりますよ!」
驚く鈴原さんは、そのまま語りはじめた。
「友人のゆうこの事で相談があってきました。ゆうこは今不登校なんです。でもいじめられてたわけでも、学校が嫌いだったわけでもなく、いきなり部屋に閉じ篭ってしまって…」
鈴原さんの目から涙が溢れる。
「わかりました。その相談お受けします。安心して待っててください。」
「ありがとうございます…」
鈴原さんは涙を拭いながら、小会議室を出て行った。
「受けると言ったものの、すこし厄介な気配がするわねぇ」
「そうなの?」
「うん、ちょっと寒気を感じたわ。悪霊の類かもしれないわね」
このときの真朝ちゃんの予感は的中することになる。
僕たちの初めての依頼は今後の僕たちの運命をも左右する出来事になるとはこの時はまだ思ってもいなかった。