又助さん
どうしよう…間がもたない
急な婚約から約30分。
鼻歌まじりで運転するお姉さんの隣で、僕は何を話せばいいかわからずモヤモヤしていた
「北九州からだいぶ運転していますけど、どこまで行くんですか?」
「長崎よっ!あと1時間くらいかかるけど辛抱してねっ」
「長崎ってカステラとかチャンポンの?」
「そうそう笑。他にもいろいろと楽しい場所も美味しいものもあるいいところよ」
長崎か、僕にとっては初めての長崎。
長崎で真昼さんと2人暮らし…
2人暮らしっ!
いっきに恥ずかしくなって顔が真っ赤になる。
「とりあえず、パーキングで休憩しよっか!」
「はいっ」
金立サービスエリアで一休み。
おばあちゃんと一緒にドライブしにきたプードルに癒されながら2人で昼食を食べ、また車に乗り込む。
ぼくは、ふと気づいた
「今日は何も見えない」
「やっと気づいたみたいね!」
「これはお姉さんの力なんですか?」
「そうだよっ!えっへん」
「えっへんて…お姉さん一体何者ですか?」
「まだ、秘密かなぁ」
そう言うとニコっと微笑んで、運転に集中する。
可愛い。
じゃなかった…一体何者なんだろ?
謎は深まるばかり。
2人でたわいもない話をしてるうちにあっという間に1時間が経っていた。
「はいっ!長崎に入りましたよー!」
「長崎、すごく緑が多いんですね。」
「福岡と比べると田舎だからね〜さてさて目的地に到着しましたよー」
大村インターを降りて少し走ったとこで、目的地へ到着した。
「でかい…」
ものすごく大きな平屋建ての一軒家。こんな場所にお姉さんは一人で暮らしてるのか。
「ここが私の家、そして今日から私達の家になるところよ。」
ぼくは荷物を抱えて家に入った。
なんかいい匂いがする。
「あなたの部屋はコッチよ」
そう言って連れてかれた場所はとても広い部屋だった。
「家具とかも新調しなくちゃね」
「大丈夫です!お構いなく!…と言うかお姉さん一体なんのお仕事されてるんですか?」
「それもまだ秘密かな笑。そのうちわかると思うよっ」
そう言うとお姉さんは奥の部屋に入って行った。
三時間近く車に乗っていたので、身体の節々が痛い。とりあえずぼくは畳に横になった。
「ぼうず、見える子かい?」
「えっ」
声のする方を見ると三毛猫がいた。
「えっ、猫が喋った!?」
「猫だものそりゃ喋りもするさ」
そのねこは少し変わった尻尾をしていて、根本から2つに割れた尻尾をピンと立てながら、僕に近づいてくる。
「蛇…黒蛇。それがお前に悪い物が寄ってくる原因だ。見えるのはまた別の理由みたいだけどにゃ」
「黒蛇?」
「そう、黒蛇。お腹を空かせた黒蛇がお前を餌にして、悪霊を寄せて食ってる。持ちつ持たれつなんだな、蛇はお前に危害が加わらないように守護しているから悪い守護霊と言うわけでもないにゃ」
「又助さん喋りすぎっ」
「又助さん?」
又助と呼ばれた猫は、真昼に抱かれゴロゴロと鳴いていた。
「この子はノラの猫又、まあ猫の妖怪ね。名前は又助さんこう見えて江戸時代から生きてる長生きさんなんだよ」
「江戸!?」
この猫200年近く生きてるのか。
「真昼、新しいお客さんかい?」
僕を見つめ又助さんが問うた。
「このこは悠河くん。今日から私と一緒にすむ家族…あっ…婚約者です」
「こ…こここ…婚約者ーっ!?」
又助さんは口をあんぐりさせて驚いた。
「今度は何を考えてるんだい?」
「うふふ、秘密ーっ」
200年近く生きてる又助さんでも真昼の行動は読めないみたいだった。
「そうだ悠河くん、今日の夕方お客さんが来るから、ちょうどいいし私の仕事見てみる?」
「いいんですか?」
「いいよ!それまではのんびりしててねっ」
僕は時間まで一眠りすることにした。




