須藤美花(すどうみか)
「どうしよう…ここどこだろう…おうち帰りたいよ…」
小学生くらいの女の子が泣きそうな顔をして森を彷徨っていた。
いくら歩いても見たことのある景色にたどり着く。
少女はとうとうその場にしゃがみ込み泣き出してしまった。
そのときである。
「こんな所で泣いてどうしたの?」
真っ白な少女が現れた。
髪も肌も白く白い着物を着て、目だけは赤いルビーのように輝いている。
「おうちに帰りたいのに、道に迷っちゃったの…あなたはだあれ?」
少女は問いかける。
「わたしはセセラギ…山の出口まで案内してあげる…ついて来て」
そう言うとセセラギと言う名の少女は手を差し出した。
その手を掴み、立ち上がる少女。
「あたしは美花、須藤美花って言います。」
「コッチ…」
そう言うと2人は宙に浮き真っ直ぐに飛び出した。
「飛んでる…」
木々は少女達を避けあっと言う間に森を抜け、山の入り口へとたどり着いた。
「出れた…出れたよっ!セセラギちゃんありがとーっ!」
さっきまで泣いていた女の子の顔は笑顔に満ち溢れていた。
「セセラギちゃん、お礼にこれあげる。大切な物だけどセセラギちゃんに持ってて欲しい。」
そう言うと美花は自分の髪留めを取り、セセラギに付けてあげた。
「…ありがとう」
「こちらこそありがとう!セセラギちゃんっまた逢いに来てもいい?」
「…うん」
セセラギはにこっと微笑むと美花の姿が見えなくなるまで手を振った。
所変わって
小春日家。
「日曜日ですねーっ!なんか今日も忙しくなる予感がします。」
真昼さんの何気ない予感は的中する。
「真昼さんの予感は的中しますからね!気を引き締めておきます。」
悠河は真昼のそんなとこもお見通しだ。
そんな時だった。
バサッバサッ
大きな羽音を立てて、カラスの妖怪が空から降りてくる。
「カラスの化け物ーっ」
「誰がカラスの化け物じゃ!」
このやりとりのデジャブ感
「あら、烏天狗じゃない?どうしたの急に?」
烏天狗だった。
「それがだな…最近セセラギ様の様子が変なのだ…まあいつも変なんだが、最近は特に変でな、何かを待つように一点を見つめてポケーっとしとるのだ。」
「ポケーですか?」
「うむ、ポケーじゃ…それもある日突然、きれいな髪留めを付けて帰ってきてからなのだ。真昼殿ちと様子を見に来てくれんかの?」
「セセラギ様の件以来、裏山には行ってませんでしたからね、アフターサポートも相談屋の大切なお仕事です!」
そう言うと真昼は奥の部屋に着替えに行った。
「烏天狗さん、その後白蛇…セセラギ様はちゃんとヌシできてますか?」
僕はずっと気にしてたことを問いかけた。
「うむ、セセラギ様はの、よーやってくださっておる。あの太郎坊も頭が上がらないほどにの、正直ここまで立派にヌシをやってくださるとは思っていなかった。」
「そうですか、それはよかった。」
僕は心のモヤが少し晴れた。
「おっまたせー!さあて、行きますか!」
真昼さんの準備も終わり、一同裏山に出発した。
裏山の山頂に着くころには、僕も真昼さんもへとへとだった。
「相変わらずこの山の傾斜は急ねーっ、車で登ってこられたら楽なのに…」
「まあまあ、そう言わず。行きましょう真昼さん。」
僕は真昼さんの手を取ると、森の奥へと歩いて行った。
森の奥に着くと、真っ白な少女が木の上に座っていた。
どこか一点を見つめポケーとしている。
「この子があのセセラギ様?」
大蛇の頃から会っていなかったので、容姿の変貌ぶりに驚いた。
「あ…真昼…」
「お久しぶりです、セセラギ様。」
「うむ…久しぶり…」
「物思いにふけっていたみたいですがどうされたんですか?」
そう言うとセセラギは髪留めを外し真昼に見せた。
「これ…すごく綺麗。美花に貰ったの…またくるって言ってたからずっと待ってる…」
「セセラギ様に、お友達が出来たんですね」
「お友達?」
「大切な人の事ですよ!」
「真昼と悠河もお友達?」
「私たちはその…その」
真昼さんはいきなりもじもじし出した。
「まあその話は置いといて。その美花ちゃんをずっと待ってるんですね。」
僕が話を続ける。
「…うむ」
「その子の特徴を教えてくれませんか?」
「背丈はわたしよりちょっとおおきいくらいで…女の子…」
「…それだけですか?」
「…それだけ」
これは大変な仕事になりそうだと僕は確信した。