塵塚怪王(ちりづかかいおう)
「おーい、こっちの荷物先に梱包してくれー」
「はーい!」
ガタイのいいお兄さん達がせっせと荷物を運んで行く。
「ジョージさん今までありがとうございました。」
パンク系の格好をした青年達がおじいさんに頭を下げて礼を言った。
「このライブ会場とも今日でお別れなんて、寂しすぎます。」
「君たちも今日までうちに通ってくれてありがとうね」
「ジョージさん続けてくれないんですか?」
「わしはもう歳だからな、体力の限界を感じていたんだ。一つ心残りなのはこの楽器達を処分しないといけないことかのぅ」
その時だった
「おっちゃん!うちにこの楽器達ぜーんぶ売ってくれへんか?」
いきなり関西弁の女性が現れた。
「売るも何も、もう処分する予定だったからね、引き取って貰えるならただで渡そう。」
「無料ー?おおきにーっ!」
そう言うと女性は楽器と一緒に姿を消した。
「きっ消えたーっ!おばけーっ!」
青年達が騒ぎだす。
「いや、きっと楽器の神様だよ!神様に貰われるならあの子達も幸せだろうて。」
ジョージさんは遠くを見つめながら語った。
「ここを閉めようと決めた日のこと、あの日もこんな晴れた日だった。」
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ジョージは楽器達の手入れをしていた。
「お前達とももうお別れか…今までありがとうな…」
そのときである。
『…奏でたい』
「え?」
ジョージは驚いた。楽器の声が聞こえた気がしたのだ。
「そうか、そうか、お前達には悪いことをしたな…今日のラストライブはうんと盛り上がるといいなっ!」
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「ジョージさん楽器の声を聞いたんですか?」
「あくまでも、そんな気がしただけさ。でも大事にされたモノには魂が宿ると言う。あの子達も大事に演奏されるうちに魂が宿ったのかもな。」
所、変わって小春日家。
「今日はいい天気ですねーっ!洗濯日和ですっ!」
日の光の元、真昼が背伸びをしてた時だった。
「よっ!真昼ーっ!元気してたかー?」
関西弁の女性が現れた。
「あら、塵塚怪王じゃない久しぶりね」
「真昼さんの知り合いですか?」
「この人は塵塚怪王って言って付喪神の妖怪なの」
「付喪神?」
「昔から大切にされたモノには魂が宿るっていわれてるの。そのモノに宿った魂を付喪神と言います。塵塚怪王はその付喪神のいわば王様かな?」
「へーっ、すごい人なんですねー。」
「真昼ーこの子は?」
「この子は悠河くん!わたしの婚約者ですっ」
ぽっとしながら紹介する真昼に、口をあんぐりさせながら塵塚怪王は驚いた
「こ、婚約者ー?!真昼に婚約者が出来たんか!?よー見たらイケメンの坊ちゃんやなーっ!宜しくな」
「宜しくお願いします。」
「ところで今日は何のよう?」
真昼が塵塚怪王に問いかける。
「商売の話をもってきたんや!ウチは音楽でトップオブトップをめざすっ!真昼にはその手伝いをして欲しいんや!」
「またいきなりね…あなたが商売の話を持ってくるのはいつもの事だけど」
呆れ気味に言う。
「いいでしょう。今回も縁ではなく円にて契約しましょうか」
「真昼ーっ乗ってきたな?さすがウチの認める女や!」
「ところで貴方が演奏するんですか?」
「ちゃうちゃう!この楽器達や」
そう言うと庭に楽器達を出してきた。
「この子らにメジャーを目指して貰う!このお面にちょちょいっーと筆で器を作ってーっと…」
5枚のお面に漢字を書くと、ひょいっと楽器に投げる。すると楽器に触れるやいなや、お面は人型の姿になり変わった。
「おおーっ」
あまりの出来事に驚く僕。
「身体が…」
「また、音を奏でることができる…」
「イヤッホーっ!」
楽器達は体を手に入れて歓喜した。
「真昼さん音楽関係も何かツテがあるんですか?」
「当たり前じゃないですか!音楽関係にもきちんと縁を持っています。」
そう言うと何処からだしたのか敏腕マネージャーメガネを取り出してキラリと輝かせる。
「さあ、メジャーを目指しますよ!」