小鳥遊悠河(たかなしゆうが)
「この子気持ち悪いんです。お金はいくらでも払いますので引き取ってください」
僕には両親がいない。
叔母さんの家に去年からお世話になっているが、ぼくのとある能力のせいで気味悪がられ今日から施設に送られるみたいだ。
ぼくは小さな頃から人には見えない物が見えた。
子供の頃は一緒に遊んだりしてたので、害はないものとばかり思っていた…あの日が来るまでは。
あれは10年前の夏、父さんと母さんと一緒に家族3人でドライブしていた時だった。
それ、は現れた。
オイデ、 オイデ、
声が聞こえた。
「お母さん、誰か呼んでるよ?」
「この子は何を言ってるの、もう気味の悪い事言うのはやめてちょうだい」
本当に聞こえたのに、
オイデ、オイデ、 コッチガワニオイデ!
ソレはいきなり本性を現した
「なんだ、ハンドルが効かない!ブレーキも!」
プップップー
クラクションを鳴らしながら山道を爆走する車。
「あなたっ!前!前!」
「うわーっ!」
僕たちは対向車に正面衝突した。
相手のドライバーも父も母も死んだ。
僕だけはなぜか軽傷で済み、親戚の家に引き取られることになった。
それから10年いろいろな家を転々とし、今日に至る。
ヒステリック気味な叔母さんの声は襖越しにとなりの僕に丸聞こえだった。
すすーっ
襖が開くとそこにはちょっと年上のお姉さんがいた。
「初めまして、わたくし小春日真昼と申します。君が、小鳥遊悠河くんね?宜しくお願いします。」
「宜しく…」
「いきなりだけど、今日から私の家で暮して貰うことになったのだけど、大丈夫?」
いつものことだ、今更引っ越しなんて別に気にならない。
「大丈夫です。用意しますので、しばらくお待ち下さい。」
「はいっ」
なぜかお姉さんは嬉しそうな笑顔を見せた。
用意も終わりお姉さんの車に乗って何処かに出発する。
最後なのに叔母さんは見送ってもくれなかった。
「僕は、施設に入るのですか?」
僕は聞いた。多分そうだと思ったから。
「ちがうよ?」
ん?と疑問そうな顔をするお姉さん。
「じゃあ何処に向かっているのですか?」
「今は私の家に向かっていますよ?これからは私とあなたの2人暮しですね」
「え?!2人暮らし?」
「君はいろいろ呼んじゃうからぁ〜普通の場所では周りに危険を及ぼしてしまうの。何か経験あるんじゃない?」
コクリと、うなずく僕。
「でも、僕もいい年の男です。不純ですよ」
何言ってるんだ僕は
くくくくと笑ってお姉さんは提案してきた。
「なら私の婚約者になってくれる?婚約者なら不純じゃないでしょ?」
僕をからかってるのだろうか?
冗談だと分かってはいたが僕は顔を真っ赤にしていた。
「こ、婚約者って。僕たち出会ったばかりだし、お互いのことまだ知らないし」
「あら?恋愛に時間って必要かしら?わたしはそう思わないわ」
「それに、僕は呪われた子だし」
「ならその呪いごと全部引き受けます」
なんなんだこの人は?
「本気ですか?」
「本気ですよ?」
今日僕は婚約者が出来ました。