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6. しののめシティ

内容上の二話がここからだったりします


おもな登場人物

カコ  現代のJK、主人公

ナトコ 未来の少女、味覚が死んでる

  しののめシティの町は、森を切り開いて作った空間の、オレンジに光る透明なドームの中にあった。


「ね、ナトコ、あれ何? あの町を覆ってるの」


「あー……エネルギードームっつったっけ? バリアで雨弾いてんの」


「へえ!」


 車はドームすんなり入っていく。

水に潜るときに似てる。


 その先に町の入り口がある。

ドームに入ってすぐから大きな道がまっすぐあって、その先に吊り橋と……金属の柵かな? 柵の手前は有刺鉄線がぐちゃぐちゃに巻いて置いてある。

入り口って言っても門です! っていう門は無くて、柵に入り口が作ってあるくらい。


 街の中はやっぱりまっすぐで高速道路より太いかなって広さの道路があって、その両脇に三角の瓦屋根で壁は木製の建物が並んでる。

建物と建物の切れ目にはたいていアーケードのアーチが立ってる。

なんだろう……とっても見慣れた光景というか、懐かしい光景というか。

町の昭和感が、ヤバい。


 大通りの突き当たりには、柵で囲われた建物群が建っていた。

この建物達はみんな明治風で、妙に煤けて古びた白っぽい色がやっぱり昭和っぽい。

この町、全体的におばあちゃんちのある町みたいな雰囲気がすごくある。

未来人なに考えてこんな街にしたんだろう……。

 

「ここがしののめ市役所」


「市役所かあ」


 ものすごく馴染みある名前だなあ……。

あっ看板は合同庁舎って書いてある。

馴染みが深い……。


 マザー・ブレインが運転する車は、市役所の敷地の倉庫近くに止まった。

どこからかドローンが飛んできて、トラックの荷台の荷物を持ち上げようとしてる。


「こいつらが荷物全部処理して金額計算してくれっから、先にカコの住民登録な」


「うん、わかった」


 車はそのままでいいみたいで、ナトコはたまに何もない空中とか地面を見ながら、私を連れてどこかへ歩いて行く。

多分何かがそこにあるはずなんだけど……何も見えないんだよね。

スマホのカメラ使うとゲームキャラが部屋に居るみたいになるあれ……名前は忘れたけど、そういうやつなのかな?

そうで合って欲しいなあ!


  市役所の建物は煉瓦造りで、四階建て。この辺りでは一番大きい建物だ。

その周りに倉庫がいくつも立ち並んでいる。


 中は床がぼんやり発光してて、壁の古めかしい煉瓦と合わさるとすごく違和感がある。

置かれてるソファとかは壁に雰囲気が合わさってるから余計そう思うのかな?

大正浪漫の壁と、宇宙船の床って感じ。


 私達を目指して、丸くて頭にプロペラがついたドローンが飛んできた。

だんだん今後の展開が分かってきた気がする。

未来では機械が話すんだ。


〈しののめ市役所へようこそ。しののめシティ指揮AI、アカツキ17が担当いたします。本日はどのようなご用件でしょうか〉


ほら! 話した!


「俺の遺跡取得物の会計と車代の精算と、あとカコの住民登録してえんだ。まず住民登録から頼む」


〈かしこまりました。それでは当機がご案内いたします〉


 ……ナトコって、めっちゃしっかりしてる。


 プロペラで飛ぶアカツキ17に案内されたのは、モニターとガラスでできた手形と大きな扉の付いた機械の前だ。

言われるままに手形に手を置くと、何度か光が行き来する。

……結構長い。


〈マザー・ブレインへの照会が終了しました。21世紀よりのお目覚めを歓迎いたします。電脳処理が確認できませんが、こちらで処理をなさいますか?〉


「……電脳処理ってなに?」


〈脊椎付近へ情報処理装置を埋め込み脳と接続し、思考と記憶の補作及び各種機器への接続ハブといたします。21世紀前半の言葉ですと、『パソコンを体内へ埋め込む』です〉


「絶対やらない!」


 それ、家に戻ってから病院に行ったら怪しまれるやつだし!

私はまだまだ先が長いんだから、絶対なし!


〈それでは義体化はいかがですか? 人体のパーツの一つを機械製にします。そのパーツの処理能力の劇的な向上が見込まれます〉


「しないってば! 私は体弄ったりとかしないの!」


〈かしこまりました〉


 実家に帰った時に怪しまれるようなものは、絶対ダメ!


〈それでは専用タブレットを発行いたします。タブレットへは代金が発生いたします〉


「えっ……お金、どうしよう」


 タブレットってそれは間違いなくお金がかかるものだ。

でも私、お金どころか服すら持ってない。

まさに無一文ってやつなんだけど。

そもそもお金ってどうやって稼ぐの? 

バイトとか? 

こんなにたくさんロボットがいるのに、バイトなんてここにあるの?


「んー、俺もこのあと金がいるし……アカツキ17、カコの今月の生活費っていくら入んだ?」


〈40000円となります。またペディアへの補償金として月に70000円が支給されます〉


「んじゃタブレット買っても問題ねえな。買っちまえよカコ」


「えっ」


 待って欲しい。

ほんとに待って欲しい。

今の話を信じると、私はなにもしてないのにお金が貰えるっぽい……?

確かにそりゃあお小遣い生活だったけど、それはお母さんがくれてたわけで。

じゃあこのお小遣いは誰がくれるの……?


 ていうか

「お金もらえるってこと? 今? それで買っても大丈夫ってこと?」


「そう。まあヤバかったら俺がなんとかしてやるって、乗り掛かった船ってやつだろ? こういうのは」


「ううう……ナトコ大明神頼りにしてるぅー!」


 私ナトコが居ないと何にもできないかもー!!


「アカツキ……さん? タブレットでください」


〈かしこまりました。それでは発行いたします〉



ガタガタ……


   カコンッ!



タブレットは、目の前の機械から吐き出されてきた。

タブレットって言っても、サイズはスマホくらいだしとても薄い。

しっかり持つと電源が入った。

七万いくらになってるのが、多分今の私のお金で……今日は5月10日、かあ。

アプリはほとんどないな、インスタとかやりたいんだけど、もうないのかな?


〈今浜華子のパーソナルデータは全て、そちらのタブレットへ保存されています。そのため、便宜上タブレットが今浜華子として扱われます。財布でありキャッシュカードであり身分証となります、紛失にご注意ください。また義体もしくは電脳への早期のデータ移行をお勧めいたします〉


 多分落とさないように言ってくれてるんだろうけど、それは絶対嫌です。


〈また、貸与します部屋への地図と生活支援AIをインストールしてあります。部屋の変更希望はタブレットよりお受けします〉


「部屋? そっか、家借りないといけないじゃん。家賃どうしよ」


〈現在の賃料は無料です。部屋のアップグレードをなさいますと発生いたしますのでご了承ください〉


「部屋はただで借りれるってこと?」


〈その通りです〉


「つまり家なき子卒業?」


〈その通りです〉


「やったー!!」


 一人暮らしだー!!


〈ナトコ、貴方にマザー・ブレインから伝言があります。「華子の部屋はナトコと同じ建物にしましたから、初めは面倒を見てあげてくださいね」とのことです〉


「へいへい、マザー心配症すぎんだろ。カコー? 終わったら俺武器屋行きてえんだけどぉ?」


「あっごめん! じゃあアカツキさん、あの、ありがとうございました」


〈今後の生活の充実を願っています、華子〉


飛行ドローンはそれだけ言って、くるんと反転して去っていった。

次回から投稿間隔が週一になります。

投稿日は金曜です。(5/10加筆)



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