10. さくせんかいぎ
人物紹介
マザー・ブレイン 惑星統括AI
ドリー カコの生活補助AI、改装済み
赤く暮れた空から、しとしと雨が降っている。軽トラにガタガタ揺れながら、私とナトコは目的地まで運ばれていく。運転は前と同じくマザー・ブレインと、私の補助AIのドリーだ。
私達は移動時間を使って、一度やることをおさらいすることにした。
「さーカコ、俺たちの目標は?」
「タイムマシン見つける!」
「ん。タイムマシンは、あるとしたらカコが生まれた遺跡のどっかが一番可能性高いと思う」
ナトコが正面のモニターに、最終目標はタイムマシン←遺跡のどこかと手を使わずに入力していく。どうやってんのそれ? 普通無理くない?
「タイムマシンなんつうもんがあるとしたら、そりゃ間違いなくとんでもねえ警備のとこにあるぜ。街で簡単に手に入る武器じゃあ勝てねえような、まじモンの戦闘ロボットもいるかもしんねえ小型ミサイルなら効くだろうけどな、当たれば」
「当たるの?」
「さあ?」
「ダメじゃん」
「そうだよ」
俺のミサイル運ゲーだから、実質壁破壊用だし、とナトコがぼやく。
えーっと、少なくとも今私が持ってるのはライフルと盾なわけで、これって多分簡単に手に入る武器の一つよね?
「ってことは、私ももっと強い武器が必要ってこと?」
「簡単に言っちまうとそうだ。遺跡とかから使えそうなもん拾ってきて、武器屋の親父に頼むのが良いだろうな」
「うー……手間かかんなあ」
「諦めろカコ、そもそもタイムマシン欲しいのはお前だろ」
「わかってるぅー」
モニターには武器回収開発と追加された。戒めかな?でもわかってることと面倒なことは両立するから仕方ないワケで。
考えるとお腹が空く、今日朝ごはんまだだし。作ってきたサンドイッチもどきをバックから取り出す。
「ナトコ食べる?」
「食う」
「ん」
薄い三角に切った基本食料に小麦風味粉を振って焼いてマヨネーズ風マーガリンを塗って、スライスした合成葉物野菜と肉風味タンパク塊を挟んだサンドイッチもどきは、簡単に口の中に消えていく。
「じゃーその遺跡あさりはどうするかっつうと、はじめに上から穴ァ開けて、その穴の周りを1階ずつ探索してくんだ。どの階でも上に歩いて登れる場所見つけながらな」
初耳! ナトコと初めて会った時の大穴は、そのための穴だったってことかな。
「2階層くれえなら俺が抱えてもいいが、カコの羽も用意しねえとな。カコ抱えたら荷物持てねえよ」
もっしゃもっしゃ
もぐもぐ……ごくり。
うん、これあり。
「てかそんなに重くないし……って、手が塞がんのね」
「そうそう」
「と言うことは私を助けてくれた時に延々徒歩で階段を登ったのは……?」
「あれはまた別だぜ、羽の燃料切れ」
「燃料切れかあ」
このサンドイッチもどき、手間をかけただけあって、あの虚無の塊から作ったとは思えない安物のホットサンド感。コンビニにたまにある値段考えたらこんなもんだし便利だけど美味しいかっていうと微妙な……。
「あの宇宙船って、大きさどのくらいなんだろ」
「カコがいた階層が一番下とは限らねえからな……宇宙船ってなぁデカいもんだし、わかんねえぞ。少なくとも5階建て以上だと思うぜ」
私が登ったのは確か、はじめに一階と、ナトコと一緒に4階分。確かに5階建て。
「カコ、これまだねえの?」
「あるよ、食べる?」
「食う。っつうと、穴開けのやつも新調しねえとなんねえかもな……手持ちのじゃ6階層までしか抜けなかったぞ確か」
及第点合成サンドイッチがナトコへ渡る。ナトコ的にはかなりありっぽいのが、普段の虚無食生活っぷりを感じさせるね……。
「あー、ともかくだ。カコの羽を手に入れるためのパーツを見つけんのが今回の目標な」
「そこで向かうのが廃工場ってワケ?」
「おう。ドリー、しののめ南東の廃工場の説明」
[承知いたしました ナトコ しののめ南東の廃工場は 個人用飛行モジュールの制御装置を製造しています 現在は管理AIの論理エラー発生により 制御装置の出荷の停止 管理ロボットによる人間への敵対行動 が確認されています]
「つまり、その管理ロボットを倒しながら制御装置を持ち出すってこと?」
「そう言うことになるな」
〈暴走した管理AIは充分な脅威です。まず生存を第一に考えて行動してくださいね〉
突然出てくるねマザー・ブレイン。
「わぁってるよマザー、やばくなったらちゃんと逃げるから心配ねえって」
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