1.わたし
初投稿です、よろしくお願いします
ある朝目を覚ますと、今浜華子は薄緑の液体の中にいた。
足元からコポコポと泡が登って来ては頭上へと消えていく。
水中だというのに、何故か息苦しくはない。
思わず漏れた疑問の声は、水に溶けて鼓膜を震わせる事はなかった。
そう、私は何故か息のできる水中に、たったままぷかぷか浮かんでいた。
ええ、何これ……。
意味わかんないんだけど。
ここ何処よマジで。
ぼんやり光る水で歪んで見えるけれど、私は白いような銀色のような狭い部屋にいるみたいだ。
部屋には私の水槽と、たくさんコードが伸びた機械がだけが置いてある。
機械のコードは壁と水槽に繋がっていてる。
モニターに見える平たいところは真っ黒で、電源が入ってないようだ。
昨日寝たはずの柔らかいベッドも、目覚まし代わりに枕元においたはずのスマホも、シワにならないようにハンガーにかけたブレザーも、この部屋にはない。
当然朝ごはんの匂いはしないし、お母さんの足音もしない。
友達に連絡だってとれない。
私、なんでこんなとこに一人でぷかぷか浮いてんのよ。
何これ、夢?
昨日映画とか見たっけ?
いや昨日は火曜なんだからそんなはずないし。
イヤイヤ、そんなこと言ったってこんなの夢でしょ。
こんな意味不明なの。
ビー!ビー!ビー!
「何この音!?」
突然壊れかけのイヤホンで聞いた地震速報みたいな音がした。
音がどこから聞こえるのかはわからない。
不安の塊みたいな音が、すごく怖い。
〈電源の喪失を確認。全館、緊急モードへ移行します〉
機械の女の人の声だ。
駅とかで流れる案内放送みたいな、無機質な声。
とても聞き取りにくいザラザラした声だけど、私はどうしてもこの声を聞いて理解しなくちゃいけないと思う。
だって、絶対危ないやつだもん、これ。
部屋の明かりが白から赤に変わって、どう考えてもヤバそう!!
〈全ペディアへのナノマシン投与の完了、覚醒を確認。外界適応シーケンスに入ります〉
「何それ、何なのそれ!」
まったく、意味がわかんない!!
ペディアって、ナノマシンってなんなのよ、かくせー何たらって何!
勝手に納得して進めないでよ、このポンコツナレーション!
〈隔壁を解放します〉
ごぽ……
ごぽごぽ……
ごぽり
ず
ず
ず
ず
ず
・
・
・
ばしゃあーーーーーーー!!
泡がたくさん入って来たと思ったら水槽のガラスが持ち上がっていて、私ごと一気に中の水が床に溢れた。
「う、ぉ、わ、あ、あぁぁあぁぁあ!!」
〈最終シーケンス完了。全ペディアへ通達。
"未来へようこそ。あなた方の生存をミュージアム06は期待します"〉
ぶつんと切れた音がして、アナウンスはそれっきり沈黙した。
埃っぽい水浸しの床に真っ裸で座り込んで、華のJKなはずの私は、未来に放り出されたみたいです。
……泣いていい?
真っ裸のまま、私は部屋を歩き回る。
服が欲しい。
可愛くなくても、いっそ男物でもいいから服が欲しい。
いくらなんでも、裸は嫌だ!!
壁や機械の開けられそうな場所は全部開けてみる。
これはよくわかんない機械、これもわからないやつ、ここはなんかの工具、これは多分文房具、これもわかんない……
あった、布だ!!
壁についてた引き出しの中から見つけた布を思いっきり引き出す。
服かな? 服だといいな!
「おりゃ、あ……あっ……」
力いっぱい引き抜いた布は、そのままボロボロ崩れてただの布ゴミになった。
色あせた布ゴミは、博物館にあったら違和感ないのかなって感じ。
きっと長年放置されてたんだと思う。
でもでも、そんな
「こんな事ってある!? 私もしかして真っ裸のままァ!? ウッソでしょマジありえないんだけど!!
これじゃ露出狂じゃん!!」
神様仏様服屋様!
私露出狂は嫌です!!
でもこの分だと、もし別の服がこの部屋にあってもボロボロで着れなそう。
裸のままだけど、部屋の外に出て探してみるしかないかな……うう、やだなあ。
埃っぽいし、薄暗いし、明かりは赤いし、最悪!
そーっと、そーっと部屋のドアを開けてみる。
廊下も部屋と同じ赤い明かりが灯ってて、埃が積もってる。
ゲームだと別の部屋からゾンビとかが出てくるやつだ。
どうかな、出てくるかな……裸でゾンビとかとかち合わせたくないんだけど!!
ええい、女は度胸!
裸卒業のために!
今浜華子高校二年生、出撃するんだからぁ!
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次回投稿は明日3日です