45 邂逅
どれほど、長い時間が過ぎたのだろうか?
時代はいくつも移り変わり、多くの犠牲者が空間内に囚われることとなった。
そのせいで、取り戻そうと画策するものの襲撃が昼夜関係なく訪れた。
だが、取り込めば取り込むほどに、やってくる襲撃者の数が減っていった。数百年もすれば、それの存在を正しく知るものは居なくなり、時折現れては悪魔と罵られながら逃げ出す程度になっていた。
石を投げられた回数も両手では足りないほど。見た目は同じなのに、同じだからこそ迫害された。
そこで考えたのは動物になることだった。
手近な動物を取り込み、その姿になることで人の目から逃げ出した。その目論見は成功した。
成功しても、それの心に空いた穴を塞ぐことは出来なかった。
同じ見た目をしているのに、やはり輪の中に入ることは出来なかった。
常に襲われる。襲われる度に取り込むせいで余計な溝が生まれる。
幾度となく繰り返される日々に終わりが来たのは……
「野良猫だ〜」
一人の少年との出会いだった。
全てのことが面倒になって丸くなっていたそれを抱き上げる。
敵意を向けられれば即座に捕縛する予定ではあったが、その少年は薄汚れているにも関わらず平然と抱き上げて頬を擦り付けた。
「可愛いなぁ〜」
「にゃー」
返事をすれば、目を輝かせる。
「嬉しいなぁ〜猫ってみんな逃げちゃうからこうして抱き上げられないし撫でられないんだよなぁ〜こんなに人懐っこいのに、捨て猫かな?」
「にゃー」
鳴き声を上げる。
されるがままになっているが、ものすごく嬉しかった。
真っ黒な野良猫の姿をしているせいか、薄汚れているせいか、見る人見る人嫌悪感たっぷりな視線を送り、無視するだけだった。
縮こまり、震えていても反応はなく。むしろ蹴り飛ばそうとする人さえいた。
攻撃を受けても捕えなかったのは、その蹴りに殺意が無かったからだ。野良猫に対する殺意はなく。純粋な怒りだけで攻撃を仕掛ける。
怖いと、そう思ってしまう行動にどんどんと生活範囲を狭めていった。
そんな折に出会った少年大地。
服が、手が、汚れるのも厭わない彼は、それに優しさを与えていた。
「にゃー」
「よしよし〜家はあるの〜?」
「にゃー」
首を横に振る。
言葉は分かった。だけど、それを返すことが出来ない。にゃーにゃー反応しながらも、身振り手振りで事情を知らせようとする。
「なら、家においでよ。いい子そうだし、飼ってもらえるように相談するねー」
「にゃ!」
「名前は、クロ。どうかな?」
「にゃー」
クロと名付けられたそれは、大地によって飼い猫となる。
これが、大地の運命を決める結果になるとは……誰も、知る由もないことだった。




