37 予測不能
大地が居なくなった。
二人がちょっと目を離した隙に消え失せ、寒奈の耳でも声が捉えられない所に移動してしまっていた。
意味が分からない二人は顔を見合わせる。クロだけがポツンと取り残されていることからなんらかの事件に巻き込まれた可能性だけが浮上する。
「あの、えっ?」
「また、ですか……」
理摩は慣れたように天を仰ぐ。
それが、初めてのことでないことを示していた。
「前にも、あったのですか?」
「直近では、家に帰ってこない事態がありました」
寒奈は無言で視線を逸らした。
なにせ、その張本人なのだ。余計なことは言わないほうが良いと口を噤む。
「にゃあ〜」
クロが起き上がり、グッと伸びをしてからキョロキョロと周りを見渡した。
「にゃあ。にゃあ。にゃあ」
誰かを……と言うよりは、大地を探すように何度も鳴きながらトコトコと歩き出す。
「あの、クロさん」
「にゃあ!!」
ピョンと飛んで寒奈の胸へと直行。グイグイと胸に前足を押しつけながら必死の訴え。
「あーえっと……」
「大丈夫です。分かっています。大地さんを早く探せと言っているのですよね……」
人間形態になれないということは大地が寝ていないことの証左になる。
もしも人間形態になれば即座に飛んで行ったことだろう。それだけの力をクロは持っているのだ。
「問題は、わたくしの耳でも捉えられないことですかね。理摩さまはどうですか?」
「無理。何かに邪魔されてる感じがする」
目を閉じて集中した二人だが、効果が無いことに落胆の色を見せる。
「どうしたんだよ」
「俊先輩。大先輩が行方不明になりました」
「また、か」
先程の理摩みたく天を仰ぐ。
後ろには怯えながら辺りを見回す杏も居る。
様子がおかしいことを心配してやってきたのだ。
「誘拐の線は?」
「それも分かりません。クロだけが残されていて……」
「まったくあいつは!!」
大地の笑顔が浮かぶたびに頭痛がする俊樹。大抵がその後に面倒事を引き起こすからである。
「ほっとけばよい。ほっとくべきぞ!!」
「力強く主張するのはやめてくれ。色々助けられてるんだよ」
表に出ないところで、俊樹は大地に助けられている。恩義を感じ友情を育んでいたが故にこんな事態でも放っておけなかった。
「仕方ない。それぞれの方法で探すぞ。杏さまも付き合ってもらう」
「いやじゃ!! ぜったいにいやじゃ!!」
涙目になり、ブンブン首を横に振る。全力で屋根へと駆け上がりどこかへ消えてしまった。
それを見送ってから、三人はそれぞれ思う所へと移動する。
大地が楽しいと思うことは、総じて面倒事なのだから……




